【読んでみましたアジア本】愛でもなく憎しみでもなく…体験して考えることの重要性/木村幹『韓国愛憎 - 激変する隣国と私の30年』(中公新書)

たった今読み終えたところ。面白かった。

1966年生まれの著者は世代的にわたしとかぶるところがあり、ある意味、同じ時代を見てきた。但し、本書は韓国政治の研究者の半生記だから、もちろんその過程で著者が目にした、わたしが知らない韓国の細々とした変化がたくさん綴られている。

我われの間には、堂々たる韓国現代政治の研究者と一介のライターという社会的地位、そして関心を向ける先も韓国と香港あるいは中国というように天と地ほどの差が横たわっているのだけれども、いつからかTwitterでそのご発言を目にするようになり、知らない韓国のこと、そしてフツーの社会情勢に対するつぶやきなど、とてもすっと納得できるツイートをなさる方だと思ってきた。

大学の先生のTwitter利用でよく見られる、他人を寄せ付けない「玄人向け」知識を披露しまくるわけではないのも読んでいてすっとくる。

とはいえ、最初のやりとりの印象はあまり良いものではなかったと記憶している。なにをきっかけにそうなったのか、そしてなにを実際にやりあったのかはまったく覚えていないのだけれども、わたし的に大変理不尽と思えるリプライをいただき、やりあったのが著者との最初の「絡み」の記憶だ。その最中に誰かが、「木村さんはちょっと精神的に大変な時期におられるので…」というプライベートメッセージ(PM)をくれ、「なんだかしらないが、だったら関係ないわたしに絡んでくるんじゃねーよ!」と思ったことだけ覚えている。さっきも書いたとおり、きっかけが一体何の話だったのかはまったく覚えていないのだが。

PMで教えてもらったそれは、ご本人も特に隠しておられるわけでもなく、本書でもそのあたりについてきちんと触れられている。それは現在も在籍する大学で起きたさまざまなあつれきが原因だったようだが、それをさらっと書いて公開してしまうところが、すごいというか、独特というか、著者らしいなぁ、と今では思えるのだが。

そしてTwitterブロック魔のわたしが、なぜ著者をそのときブロックしなかったのか、あるいは一旦ブロックしたけど解除したのか、その辺りもまったく記憶にない。気がついたらタイムラインに流れてくるそのつぶやきをしっかり読むようになっていた。

時代は変わる。そして、人も変わる。さらにはその視野も変わるんだなぁ。

●韓国という選択、中国という選択


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