【ぶんぶくちゃいな】コロナ厳戒態勢から行政長官戦入りする香港

3月21日、林鄭月娥・香港行政長官は、わずか一カ月前に自ら宣言した3月中の「全市民を対象にした強制PCR検査」(以下、「強制検査」)の実施を暫時見送り、4月から現在実施されている新型コロナ対策を緩和すると発表した。

連日5万人台の新規感染者が報告されていた月初めから約3週間弱たって、19日にやっとその数は2万人を切り、それ以降ずっと1万台が続いている。750万人の人口で1日1万人台だからまだ「少ない」とは言えないものの、間違いなく一息ついた、と言えるだろう。

だが、「ニュースクリップ」でも取り上げたとおり、その直後には研究者の間から、「まだ安心できるレベルにはない。このまま施策を緩和すれば、第六波突入にもなりかねない」とする声も上がっている。それが、政府も頼りにしてきたはずの香港大学医学院から上がっているのは、これまでなら非常に大事な点だと思われるが、今回の政府はそれに応えようともせず、「どこ吹く風」である。

つまり、専門家の意見すら訊かずに政府はこの措置緩和を進めているということになる。逆にいえば、だからこそ、研究者は記者会見を開いて、別途その研究結果を公開し、社会に直接警告するしかなかったのだろう。

今回大感染を引き起こした第五波下での政府の決定には、「誰の、どんな意見からそうなったの?」というものが多かった。というのも、施策を発表するたびに、庶民のみならず議員や専門家から異論が飛び出してくるからだ。それを読んでいるだけで「いったい誰がどうやって、なにを参考にそれを決めたんだろう?」という疑問が湧いてくる。だが、毎日のように行われている政府の記者会見でメディアがそれを尋ねても、きちんと理論立てた回答が返ってくることはほとんどなく、「とにかく決めたんだからつべこべ言うな」みたいな立板に水状態だった。

今回の規制緩和もそうだった。「なぜ今突然に?」という質問に政府がきちんとした、合理的な根拠を説明しようとしなければ、社会は当然ながら疑問への答えを求めてさまざまな憶測を巡らす。たとえば…

●ブチギレた経済界


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