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【ぶんぶくちゃいな】若年化する留学ブーム

6月の中国は「高考」の月だ。「高考」とは、いわゆる中国のセンター試験。毎年6月7、8日に行われる試験で算出された点数で、大学進学を目指す人たちの「運命」が決まる。

だが、日本に比べて中国の「高考」は少々ややこしい。というのも、地域ごとの経済格差がその地の教育レベルの差を生む。経済レベルの高いところは自然に教学設備や条件も向上しやすいが、逆に経済レベルの低い地ではそれが難しい。その結果、当然のことながら地域ごとに教育レベルはかなりばらつきがある。

また、中国では出身地の戸籍を個人が自由に動かせないために、格差に気づいた個人がより良い教育環境を目指していわゆる越境入学を試みたとしても容易なことではない。

政府はそうした地域格差を理解しており、それを是正しようと、ある大学のある学部や学科の合格点を地域別に設定している場合もある。教育レベルの低い地域の受験生たちも大学に進学できるように、という「親心」だが、そんな何重もの合格ラインの存在によって、合格した地方出身の受験生の得点数よりも、不合格となった都会の受験生の得点数が高いという事態も起こっており、「逆差別」という声もある。

さらには卒業後の産業配置を考慮し、大学及び学部や学科ごとに戸籍地域別の入学枠が細かく決められている。それにより、A大学B学部では北京戸籍者は取るのに、そんな合格者よりも高い得点を取った浙江省出身の受験者は浙江省枠がないために入学できないという例もごろごろある。特に都会にある大学では現地出身者を多く取るために、地方から都会の大学へ進む学生たちにとっては厳しい戦いとなる。それはある種、個人がどんなに努力しても乗り越えられない「壁」なのだ。

地方戸籍出身者はそんな意味で不利――わたしもずっとそう思ってきた。しかし、北京時代の大家がぽつりともらした、「北京では今や普通高校の卒業者は大学に進学するのは当たり前。大学を出ていなければろくな職業にもつけない」という言葉にはっとした。確かに、経済発展が続く大都会でもしも取り残されればどうなるか…都会生まれの子どもたちも必死なのだ。

そうやって大学進学が過熱化するなか、特にここ数年、「海外留学」が広く人々の口に上るようになった。

●エリートから一般化する海外留学

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