【読んでみましたアジア本】生々しい「今」のインドがぎっしり詰まってる/近藤正規『インド−グローバル・サウスの超大国』(中公新書)

この「読んでみました〜」も今までいろんな本を読んできましたが、とうとう、というか、新書も1冊1000円を超える時代になったのか……というのが本書をポチったときの最大の感慨だった。

長らく新書は「1000円以内の知識普及版」的な存在のはず。その新書の価格が一線を超えたことに、日本の物価高もここまできたか、という思いだ。もちろん、物価の変動は無視できない現実なのだが、なんというか、ある種の定番商品の価格が一定レベルを超えると、土手が崩壊したような気分というか、抑えどころなくなっちゃったなという感じで、思わずため息が出る。

本が売れなくなった、みんなが本を読まなくなった、という時代に、新書は何かに対する理解を深めるには最適の手段だ。コスパもサイズ感もちょうどいい。でも、それも今後は1000円代時代に突入し、次の「抑え」はどこにあるのかなぁ、なんてことを考えた。

とはいえ、本書は、G20も終わり、そこで議長国インドを中心になにやらいろいろと動いたようだぞ、と気になった筆者にとってぴったりの一冊だった。なにせ、これを書いているわずか10日前に発売されたばかりのほやほやの超最新インド解説本だったからだ。

読み終わってみて感じたのは、価格1000円超えもさもありなん、だった。新書のお手軽さはどこへやら、インドにまつわる情報がぎっしりと詰まった、新書っぽくない1冊だったからだ。冗談ではなく、1ページごとどころか、1行ごとに情報が詰まっているというものすごい解説本だった。

というのも、本書では現在のインドを理解するための基礎知識がほぼすべてカバーされていた。アイデンディディ、政治、経済、財閥、産業、IT、教育、人材、差別と格差、ヨガ、宗教、社会構造、わいろ問題、公害、農業、電力エネルギー事情、外交、国境問題、軍備、貿易、そして日本との関係などなど。

著者が経済学者なので、経済面から語られる視点が多いのは当然だが、各テーマで触れられる具体例は経済だけにとどまらない。少なくとも1章から5章までは現在のインドを知るための基礎情報が四方八方の視点から詰め込まれている。

さらに6章の外交事情、7章の日本とインドの関係について、2023年の最新事情も書き込まれているのは非常にありがたい。本書は今後しばらくの間、「インドを知りたい」という人にとってはバイブルになっていくだろう。


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