【ぶんぶくちゃいな】朝鮮半島を巡る中米のかけひきは…

5月1日はメーデー。社会主義国の中国では4月29、30日の週末と合わせて3連休だった(昔は1日から7連休だったが、連休で観光客が集中しすぎるために、その後他の祭日に割り振って「分割」された)。それでもやっと暖かくなったこのシーズンに長期休暇だった長年の習慣を引きずり続けており、ホリデームードが漂う。

今週の「ニュースクリップ」でピックアップしたように、観光関連の話題がニュースに上がるのもそのためだ。個人消費が国の経済を大きく動かすようになって、観光旅行は中国にとって経済を占う大事な指標となった。

だが、メーデー観光関連の話題でびっくりしたのは、鴨緑江1本を隔てて北朝鮮を臨める遼寧省丹東市に観光客511万人が押しかけたというニュースだった。昨年と比べて2桁の伸びというのだから、昨今緊張が高まっている中朝関係が意外な引き金になったとみて間違いない。

だが、大変興味深いことに、もっと詳細を知ろうと検索して出てきた現地メディアの「嬉々とした」観光関連ニュースタイトルをクリックすると記事が削除されている。たかが観光ニュースだが、あまり派手に喧伝されてはバツがわるいという当局側の事情が透けて見える。それがまた、観光客の関心が昨今の中朝関係によって引き出されたと、当局も分析していることを裏付けている。

それにしても政府筋がはっきりと「北朝鮮の核実験で我が国の東北3省の安全が脅かされる」と言っているのに、物見遊山で押しかけるとは…。

その背景には核や放射能に対する知識が一般的にそれほど普及していないこと、そして国内メディアが今に至っても、あまり「北朝鮮の核」が中国国内に直接与える可能性がある影響について、シミュレーションや報道をしていないこともあるだろう。だが、2011年の福島第一原発事故の際に中国国内でも「放射能が…」とパニックが起こり、デマに踊らされて塩の買いだめが起こったことと比べると隔世の感がある。

あるいは、中国の人たちはつくづく刺激を求めている、と思わざるをえないと少々呆れた。

●北朝鮮の反撃

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