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食堂のお兄さん

大学の食堂で働いているお兄さんがいる。お兄さんと言っても,多分30代後半くらいの方。

私と友達の加藤(仮名)は,なんとなくその人の名前をつけた。もうフィーリングでしかないのだけれど,その人に「櫻井」と言う名前をつけた。「桜井」ではなく,難しい方の「櫻井」だ。ここは,とても大事な部分です。

その食堂は,おそらくお兄さんが店長で,他数十名が働いている。洗い場には,おそらくアルバイトであろう2人の男の人もいる。その2人は,外見がそっくりでメガネも髪型もおんなじで,違うとすれば背丈の差くらいだった。私と加藤は,フィーリングで「タクト」と名付けた。背丈が高い方が「タクト兄」小さい方が「タクト弟」だ。思えば,戸愚呂兄弟を意識していたのかもしれない。

「今日は櫻井が坦々麺作ってくれたー」や,「あ,今日タクト兄いなかったね。」
と言うように食堂へ行くたびこの2人のことを話していた。

そんなこんなで櫻井モノマネや,あるあるを話したりして食堂へ通う日々が続いたある日,事件は起こった。

私と、加藤が食券機で食券を買った後,突然背後から櫻井がやってきた。
櫻井は「はーい。Eディッシュ終わりでーす。」と,いい、二つの食券機の裏側のドアを開けガチャガチャ操作していた。加藤はEディッシュの食券を購入していたので少し焦り,櫻井にEディッシュを購入したことを言った。
櫻井は,返金を申し上げてきて,加藤もそれに従った。すると突然,

櫻井が「すいません。そこ開けてもらっていいですか?」と,言ってきた。

私たち2人は,
ん??となりながらも「あ、はい!」と返事をした。

私と,加藤は食券機の裏側のドアを開けようとした。しかし,開かなかった。加藤は,しゃがんでドアをガチャガチャとさせていた。
私たちは,あれ?開かないね。といい合っていたがその数秒後,
櫻井が「いや,列…」的なことを言い,やっとその意味を理解した。後ろを見ると,食堂に並んでいる人でいっぱいだった。

櫻井は,食券機のドアを開けて欲しかったのではなく,食券機からどいてくれ。の意味で「そこ開けてもらっていいですか」と言っていたのだった…

私たちは,急いで食券機から離れ食券を渡し,お昼ご飯を食べた。食べてる間,ずっと食券機の事件の話をしていた。

よくよく考えれば食券機をお客さんが開けていいわけがない。
この出来事が2023年の11月くらいだったのかな。突然,バイト帰りに思い出して1人道端でにやついた。

今年度に入ってから何回か食堂へ行った。
櫻井はいるものの,近頃タクト兄を見なくなった。タクト兄の場所には,新しいバイトの子がいた。
タクト兄がいないのならば,タクト弟はもうただのタクトだ。
なんだかものがなしいような気もする。
タクト兄元気にしているといいな。




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