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夫になる人の両親に挨拶に行った日【うつ病2人#4】

コロナ禍にあっても、私と圭介の遠距離恋愛の関係は変わらなかった。
毎日連絡を取り合い、状況が変わってからは時々会うこともできた。デートは外出がはばかられたため、ほとんど家の中だったけれど。

そうして、私の25歳の誕生日に、圭介からプロポーズされた。
私は常々、「婚約指輪と結婚指輪、二つもしないから、婚約の時は腕時計がいい!」と言っていた。
「結婚してください。」
そう言ってはにかむ圭介の手には、ピンクゴールドの腕時計があった。
嬉しくて嬉しくて、私は喜んで結婚を承諾した。

仕事を辞めたのは、この日から約1か月半後のことだった。


結婚に向けて、両家の両親に挨拶をすることになった。

圭介のご両親からは、
「遠いところわざわざ来てもらわなくても、結婚には賛成だよ」
と言ってもらっていたし、圭介から私がうつ病持ちであるとも伝えてもらっていたのだが、今の自分の状況を自分の口で説明しないことには私が納得できない。
だから、少し無理を言って時間を作ってもらい、圭介のご両親に会いに行くことになった。

当時の私は仕事を辞めたてで無職。しかもうつ病持ち。
うつ病が世間からどう思われているか知らないわけではなかったから、どう説明しようかずっと考えていた。


「望美ちゃん、いらっしゃい」
前に一度訪問した時と同じように、圭介のご両親は温かく私を迎え入れてくれた。

ダイニングテーブルに私と圭介、そしてご両親がついたところで、私は思い切って口を開いた。

「私にはうつ病があって、それで9月末で仕事も辞めています。でも、圭介さんと一緒に頑張っていきたいと思っています。」

「あのな、」
私の目をじっと見据えて、圭介のお父さんが口を開いた。
「望美ちゃんはもう家族みたいなものだから、家族は助け合っていくものだから、お互いに協力し合ってやっていこうや」

ふっと、私の心が軽くなった。
有難くて、有難くて、胸に温かいものが広がった。
横を見ると、圭介のお母さんも笑顔でこちらを見ていた。


この日、私は一つの決意をした。
こんな私を温かく迎え入れてくれた圭介のご両親。彼らに何かあった時には今度は絶対に私が支えると。

こうして、私に家族が増えた。


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