マーダーミステリーに関する考察

この記事はマーダーミステリー(以降マダミス)を知っている人に向けて書いています。また具体的なマダミスに関するネタバレは一切ありません。

マーダーミステリーにおける面白さとは何か

マダミスは①犯人探し②対戦相手がいる③情報を使って推理 という側面から人狼やボードゲームのようなものとほぼ同じと考えられるときがあります。
しかし、マダミスの1番の醍醐味は客観的事実と主観的事実が混合したカオス的情報戦というところにあると思います。
ややこしい名前をつけましたが、要はプレイヤーがキャラを演じて情報を出したり出さなかったり、嘘をついたり誇張したりするということです。得た情報が正しいのか正しくないのか、情報が常に不安定であるという緊張感が面白いのだと思います。

マダミスは最終的に各プレイヤーの行動結果を点数化して競います。この点はありとあらゆるゲームと同じですが、点数化される行動の種類はプレイヤーごとに異なるもしくは異なるものも同じものもある、ということがあります。そして、その点数化される行動がプレイヤー間で共有されないというのが特徴でもあります。

桃鉄ではお金、マリカーでは速さ(タイム)、スマブラでは生き残ること、多くのゲームではプレイヤー全体で勝利の基準が明確かつ共通していると思います。
ここもまたマダミスの面白さだと思います。勝利条件の情報が不安定なのです。

プレイヤーの目標について

では点数化される行動はどのようなものがあるか。網羅することはできませんが、いくつか紹介して考察します。

・犯人を探す、当てる
・自分が物語の主要テーマである大きな罪の犯人であることを隠す
・犯人ではないが自分の過ちを隠す
・他者の隠し事を当てる

などです。マダミスは基本、物語の初めに大きな事件があり、その犯人を探すことからスタートします。なので犯人は無罪になろうと努めそれ以外は犯人探しをすることになります。
すると犯人役が圧倒的不利となる構図になり、話が面白くないですね。なので犯人以外にも隠し通したいことを持たせ、ときにはそれがバレることで犯人として疑われるような設定になっています。点数にはならないが、犯人以外も自分が犯人ではないと証明することも目標の一つになっているのですね。

それぞれがそれぞれの秘密を暴き、それぞれが自分のことを守るようにすることで、ゲームとして敵意のベクトルを均等にしているのだと思います。

目標の異質性による行動の差異

では、他者の秘密(犯人であることや後ろめたいこと)を当てる自分の秘密を隠すという二つの異なる目標によってゲームはどうなるかを考えます。

私はこの二つをタイプに分けます。
前者を積極的目標、後者を消極的目標と呼びます。

意味は簡単で、前者は情報を開示し合うことで達成される。後者は情報を開示しないことで達成されるものなのです。

この目標の異質性によって何が起こるか。

一つは、目標によって行動の姿勢が変わることです。
積極的目標の場合、相手から情報を聞くにはある程度自分の持つ情報を開示する必要があります。なので犯人や大きな秘密を持つ者にとってこの行動はなかなかリスキーなものになります。
消極的目標の場合は逆で、はぐらかしたり情報を持っていないと装うことで情報を出さないことが必要です。
この二つの違いから、犯人や大きな秘密を持つものは静かに、犯人を当てることに徹する秘密を持たない(もしくは当てられにくい)探偵役は活発な動きをすることがセオリーとして多くなります。
それを逆手に取って、犯人役はあえて活発な動きをする、情報を開示する(風を装う)ことで容疑を回避することもできます。嘘を織り交ぜつつ情報を開示するので、バレたときはかなりピンチになりますね。

犯人の戦略と探偵の苦悩

犯人が最も目指すべき行動は、前述の通り、自分のクリティカルな情報を開示しないまま活発に犯人当てをすることです。プレイヤーの議論をクリティカルな場所から移動させ、的外れな推理に持っていくことです。

方法としては、犯行の方法を実際とは別の”可能”な方法だと推理して(もちろん装う)議論中に提案する、というものがあります。
これによって議論を別の方向に持っていき時間を稼ぐことができます。

これは演技が上手く姿勢さえ疑われなければ強力です。後から出現する情報によってその推理が間違っていても、疑われることがありません。本物の探偵役は振り出しに戻り時間だけが過ぎてしまうだけです。

これが探偵役の苦悩になります。情報を誰がどれだけ持っているかがわからない状況において、決定的に特定の人を疑い犯人だと決めることができないので、議論が間違った方向に行ってもどうしようもできません。

探偵役の目標は、犯人を当てることではなく、犯人を当てそれを周りに証明し説得することなのです。

マダミスの理想形と提案

犯人役と探偵役でどちらかが有利になることは避けられないのか。
そうではないと思います。ストーリー設定の時点では、どちらが有利とかはなく、プレイング次第で結果が変わるものが当然ですがいいマダミスだと思います。

それにはある程度の運要素も必要だと思います。後から出てくる情報をプレイヤーが選択肢の中から選ぶ、ものだと面白い気がします。

全員に未解放の情報がありそれぞれが誰の情報を見るかを選べその中でランダムに情報が開示される みたいなものが理想です。

他にも人数が多いとプレイヤー間で情報の取引ができる、特定の人にだけ情報が開示される、などがあれば面白いですね。

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