見出し画像

ウイルスはどこから来たのか?

現在、コロナウイルスが大きな話題になっているがそもそもウイルスはどこからやってきたのだろうか?

実はウイルスの起源を説明する仮説は主に3つある。それが「ウイルスファースト説」・「脱出説」・「縮退説」だ。

「ウイルスファースト説」は比較的単純な有機化合物やエネルギーが入り混じった"原始のスープ"から細胞が生まれるよりも前にウイルスが生まれていたという説だ。「脱出説」では細胞からゲノムの断片が漏れ出し、タンパク質のカプセルに収まって、細胞に寄生するようになったという説だ。最後の「縮退説」は一部の細胞が縮小化し、他の細胞に寄生しないと生きていけないような最小限の構造になったという説だ。

 しかし2003年に発見された新たな証拠によって縮退説が最も有力な説となった。新たに見つかった証拠とは巨大ウイルスだ。

イギリス中部で見つかった「ミミウイルス」はこれまで見つかっていたウイルスよりもはるかに大きく、その直径は最小の細菌よりも大きかった。ちなみにサイズが大き過ぎて細胞を真似ているように見えたために、英語で模倣を意味する「mimic」から名前がつけられた。

このミミウイルスは基本的な性質はウイルスのそれだが、サイズがとんでもなく大きかったのだ。また、ミミウイルスからは本来必要ないはずの酵素の合成に関わる遺伝子も発見された。このことから、細胞が縮小化してウイルスになったという説が有力になっている。

その後も巨大ウイルスは次々と発見され、ミミウイルスよりも最大で2倍も大きい「パンドラウイルス」なんてウイルスも見つかった。

こうした発見からマルセイユの研究チームは縮退説に基づいた大胆な仮説を立てた。それはウイルスは太古の細胞が縮小してできた可能性があるが、そのような細胞はもはや地球上には存在しないという説だ。

こうした太古の細胞は今日知られている全ての細胞の共通祖先とは異なるタイプの細胞であり、その共通祖先とは競争関係にあったと考えられる。そして競争に敗れた太古の細胞は生物界のあらゆる場所から締め出されたが、他の細胞に寄生する形でなんとか生き延び、徐々にゲノムが縮小して、私たちが「ウイルス」と呼ぶものになったという可能性があるのだ。

参考文献 : 「National Geographic」,2021年2月号,(第27巻第2号).


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?