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PCR検査の仕組み

今回はPCR検査の仕組みを説明していきます。

結論から言うとPCR検査とは、唾液などから採取したDNAをもとにウイルス特有の塩基配列の有無を調べる方法です。ただし唾液などを採取してすぐに調べられるわけではありません。なぜならウイルスのDNAは微量であり、機械で検出できないからです。

したがって、採取したDNAを増やす処理をおこなう必要があります。そしてDNAを増やす方法がPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)と呼ばれているのです。PCR法はわずかなDNAをもとに同じDNAを多量に複製できるという特徴を持っています。

ここからはPCR法の原理に焦点を当てていきます。
PCR法では最初にDNA溶液を約95℃まで加熱します。すると元々、2本鎖だったDNAが2本の1本鎖に分かれます。
次に温度を50〜60℃に下げると一本鎖DNAの複製する領域の端っこに短い一本鎖DNA(プライマー)が結合します。プライマーは増幅したい部分の起点となります。
最後に約72℃まで再加熱します。これは耐熱性のDNAポリメラーゼ(DNA合成酵素)を働かせるためです。このDNAポリメラーゼはヒトのものではなく、高温の環境で生息する好熱性細菌という細菌から発見されたDNAポリメラーゼで95℃でも機能します。
まとめると、温度の上げ下げによってDNAの分離や合成を制御することで、分離した一本鎖DNAを鋳型として2本鎖DNAを複製するのがPCR法によるDNA複製サイクルです。このサイクルを何回か繰り返すことによってターゲットのDNAを増幅させます。

参考文献:嶋田正和ほか22名,「生物」,数研出版,(2017).

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