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糖尿病の原因と怖さ

血液中のグルコース濃度の事を血糖濃度と言い、ヒトの血糖濃度は0.1%前後で一定に保たれている。しかし食事などによって糖質を摂取すると一時的に血糖濃度が上昇してしまう。この血糖濃度が高い血液が流れていることを体が察知して膵臓(すいぞう)からインスリンというホルモンが放出されて血糖濃度が下がり、一定の濃度に維持されるという仕組みだ。

インスリンは細胞内へのグルコースの取り込みや消費(分解)、そして肝臓でのグリコーゲンの合成を促進する。そのため血液中の血糖濃度が下がるというわけである。

逆に激しい運動などによって血糖濃度が低下すると、交感神経を通じて副腎からアドレナリンが分泌される。他にもグルカゴンといったホルモンも分泌されるのだが、これらのホルモンは肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの分解を促し、血糖濃度を上昇される働きを持っている。

以上のような仕組みによって血糖濃度は緻密にコントロールされているわけだが、血糖濃度が高い状態が長期間にわたり放置されると糖尿病が引き起こされる。普通は腎臓の細尿管でグルコースを100%再吸収するのだが、糖尿病になると血糖濃度が高すぎて再吸収しきれずに尿中にグルコースが排出されてしまうのだ。しかし糖尿病ではグルコースが尿に出る事自体は問題ではなく、血糖濃度が高い状態が続くことにより血管が傷つき、眼や腎臓・手足の血管障害などの合併症が引き起こされる。これによって透析が必要になったり、失明や手足の切断という事態になってしまう。それもかなりの確率でだ。

糖尿病はインスリンを分泌する膵臓の細胞が破壊される場合(I型糖尿病)とそれとは別の原因でインスリンの分泌量が低下したり、ホルモンを受け取る受容体をもった標的細胞がインスリンを受け取れなくなったりする場合(II型糖尿病)に分けられる。そして糖尿病患者の実に95%以上がII型糖尿病であり、これは生活習慣病の一つなのでほとんどの人は予防可能な病気なのである。例えば友達や家族と話しながら、もしくはテレビを見たりラジオを聴きながらご飯をゆっくり食べるとか、血糖値の急激な上昇を抑えるために野菜から先に食べることで予防効果が期待できる。意識の高い人は白米を玄米に変えてもいいだろう。

糖尿病は自覚症状が少なくなかなか自分で気づくことができない。しかし糖尿病が重症化してからでは手遅れでQOLが大きく低下してしまう事は間違い無いので今回の記事を通して少しでも糖尿病の怖さが伝われば幸いだ。

※インスリンは膵臓のランゲルハンス島と呼ばれる場所のB細胞から分泌される。ちなみにグルカゴンはランゲルハンス島のA細胞から分泌される。

参考文献:嶋田正和ほか14名,「生物基礎」,数研出版,(2016).

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