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話すことがない若手飲み会

 ハラスメント。この数年で言っていいことと悪いことの分類わけが凄まじい勢いで進んでいる。特に後者の方が圧倒的に多い中で、話せることが極端に減っている。減っているという表現は正しくはなさそうだが、コミュニケーションの上っ面をなでるような、例え歳の近い先輩後輩の関係性であっても取引先の上役と話すときのような、絶妙な気持ち悪さがある。

 これは若手だけで飲んでいるときも同じだった。誰もプライベートに踏み込んだ話はしない。日和っている。それはプライベートの話をすることがハラスメントにつながるという意識もあるだろうが、過剰な相手への気遣いのもと、何も言えなくなっているのだ。歳の近い若手同士で話すことといったら、業務内容ではないはずだ。最近の恋愛事情とか、ちょっと下ネタに走るような下世話な話もある。

 私が下世話な話好きというのもある。「業務内容について話す若手飲み会なんて楽しくない」という私の前提がおかしいのかもしれない。ただ、歳の近い者同士、胸襟を開いて本音で語り合うというシーンがあった方が、仲間意識は強くなるんじゃないか、とも思う。仕事上の付き合いなので、友達であるかと言われればそうではない。ただ、「仲間」ではあると思う。例えば仕事上で議論を交わすとき。お願いをする時。相手を知っているというだけで安心して話せるのだと思う。

 酒を飲みながら下世話な話をしたり、本音で語り合って翌日会社で会うとき、ちょっと特別な気持ちになる。それは「貴方の会社では見せない素性を知っている」という独占欲にも近いような感覚が芽生える。秘密を共有している感覚が仲間意識を育むし、仕事上だけの付き合いをちょっとだけ超えた「仲の良さ」が生まれる。そこのハラスメントの壁は低くなっているし、仕事においても円滑なコミュニケーションにつながる。

 高校生のとき、よく友達とファミレスで「語る」ということをしていた。なんてことのない恋バナだったり将来のことについて何時間も延々と話していたわけだけど、ただの雑談とは違っていた。私という個人をさらけだしていたし、自分の考えをストレートに吐き出せていた。あれほど楽しかった時間はない。相手の本音をしかも酒無しで聞ける。それは仕事仲間ではなく友達だったから、というのもあるし、若さ故というのもあるが、とりわけ今の若い社会人に必要なものは「語り」だと思う。

 極端なハラスメント意識は、人から「若さ」を奪うのかもしれない。社会的な振る舞いを求められているからだ。ああ、こうやって若者たちは大人になっていくのか。書いていてなんとなく分かってきた。ただ私は酒を飲みながら「最近行ったカフェの話」なんてしたくない。最近オススメの韓国ドラマなんてどうだっていい。貴方の本音を知りたいんですよ・・・。

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