星新一 著 ノックの音が より『華やかな部屋』 

 星新一 著『ノックの音が』という短編集に『華やかな部屋』という話があります。
 …と、まず本編の前に、この本全体の面白ポイントを一つ紹介すると、各話の冒頭が全て“ノックの音がした。”から始まっています。
 他にも星新一さんの短編集はいくつか読んできましたが、こういう面白ポイントに出逢ったのは今作が初めてです。星新一さん、こういう本全体に仕掛けてくる面白さもやるのか!と思えた一冊です。
 その中で、今回ちょっと取り上げてみようと思ったのが、終盤の方に収録されている『華やかな部屋』という話。
 とある大きなホテル内に、香水専門店を経営している25歳女性が主人公で、その女性が住んでいる高級マンションの一室が物語の舞台。ある日の夜、その女性の部屋に“ノックの音が”して…。そこから物語が展開されていくのですが、ハラハラする展開が一段で終わらず、もう一段展開が待っていたかと思えば、さらにラストにもう一段待っているという…。展開の転がし方が面白かったので紹介してみました。
 この物語自体、12ページほどしかないにも関わらず、ここまでハラハラドキドキさせてくれるのか…!と、無駄のなさがすごいです。短過ぎてネタバレにならないように紹介するのが難しかったのですが、めちゃくちゃ短いので興味がある方は、読んでみて下さい。
 〆が少し物足りなさを感じますが、その先を語らないからこその面白さもあるのかなぁと思える話なので、これはこれでいいかなぁと思いました。

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