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なぐる国となぐらない国

あるところになぐる国となぐらない国がありました。

なぐる国の住人は、道端で歩いてきた人をすぐになぐりました。

なぐられた人は怪我をしました。
なぐられて怪我をした人のために病院ができました。

なぐられた人はなぐった相手を許せなくなり、訴えることを考えました。
なぐられた人の正当性を証明するために裁判所ができました。

なぐられた人はなぐられないように誰かに守ってもらいたいと思いました。
なぐられた人を守るために警察ができました。

なぐられた人はなぐった人に復讐をするために武器を作ることを考えました。また、なぐられたときに身を守るために防具を作ることも考えました。

なぐる国では、なぐったりなぐられたりすることは日常茶飯事だったので、武器と防具は他の人たちもみな欲しくなりました。

武器と防具を作った人はなぐったりなぐられたくない人たちのために商売をはじめました。武器と防具はとても売れました。

なぐられた人がなぐられ損にならないように保険ができました。定期的にお金を払うと、なぐられてもお金がもらえるのです。

なぐられた時の苦しみを癒すために宗教施設が作られました。

誰かがなぐるのが上手な人同士を戦わせて賭けをすることを思いつき、ギャンブルがはじまりました。ギャンブルはお金を儲かる人と失う人を生み出しました。

あまりにもギャンブルでお金を失う人が多くなったため、学校が作られました。学校ではギャンブルで身を崩してはいけないということが教えられました。

なぐる国では、学校で勉強した人がたくさんのものを作りました。

企業というものを作ったり株式制度というものを作ったり、マスメディアや人工知能というものを作ったり、複雑で難しいものがたくさん作られました。

産業が発展し、なぐったりなぐられたりするもの以外にもたくさんのものが発明され、流通しました。そして、国はどんどん拡大し、文明はますます発展していきました。そしてお金をたくさん稼いで有名になる人やお金をそこそこ稼いでそこそこ満足して暮らす人やいつもお金がなくて嘆いている人やたくさんの人たちが出てきました。

そして、幸せを感じている人も幸せを感じられない人もいろいろな価値観や感情の人が現れました。みんな、幸せの度合いや満足度の度合いは違っていました。いろいろな人がいましたが、みんなどこかで少しは不安を感じていました。いつ、なぐられるかわからないからです。

いっぽう、なぐらない国の住人は、道端で歩いてきた人をすぐになぐったりしませんでした。

なぐりあわずに一緒にご飯を食べて一緒に空の星を見ました。

そして、ご飯が足りなくなったときは一緒にお腹をすかせました。


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