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「サン=クルーの風見鶏」ことジョゼフ・フーシェの伝記的漫画がいつの間にかKindleに来てた件

フランス革命、ナポレオン体制、激動の時代を生き抜いた政治家、オトラント公爵ことジョゼフ・フーシェという人物がいる。

生まれながらの裏切者、いやしむべき陰謀家、営利的変節漢、政治的カメレオンなどと悪口には事欠かなず、秘密警察を駆使し国家のあらゆるものを監視したとされる稀代の策謀家である。

英雄的な部分がひとつも見当たらないフーシェであるが、その伝記はとても興味深く、自分は彼を主人公にした、『静粛に、天才只今勉強中!』(倉多江美)という漫画で知って以来のファンである。ファン…?いやよくわからないが、どうやったらこんな風に生きられるのかと昔から疑問で、度々ふり返ってみるもののひとつとなっている。

詳しい伝記はシュテファン・ツワイクによる『ジョゼフ・フーシェ ある政治的人間の肖像』というのが岩波文庫から出ていて、これもなかなか面白い。フランスがアツかった時代を、フーシェのような風変わりな悪玉的人物の視点から眺めてみるのも良いものだ。

『静粛に、天才只今勉強中!』もほぼ伝記に忠実で、基本的にこれを読めば大体のことはわかるようになっているのだが、いかんせん刊行が1984年から1989年と古く、古本屋でもめったに見かけないような作品となっていた。

しかし、時は流れるものである。最近ふと探してみると、単行本がkindle化されていて、しかもUnlimitedに入っていれば全部読めるようになっていた。というわけで、おすすめしてみる次第である。

■ あらすじ

ナントのオラトリオ教団で学問を修めたジョゼフ・コティ(作中の名)は僧院で物理学の教鞭をとる傍ら、次第に政治運動に関わるようになり、1972年、国民公会の議員に当選する。パリで議員となったコティは、当初は穏健派に属していたが、国王ルイ16世の処刑を巡り、旗色が悪いと見るや否や急進派に鞍替えし処刑票を投じる。

一夜にして過激な急進主義者に転身したコティは、その後、革命を推進すべく総督としてナントに赴任。ロベスピエールさえ躊躇した私有財産の没収を断行するばかりか、キリスト教信仰を否定し、教会権力をも粉砕し、多くの金品をパリに送るという実績を上げる。

今や鉄のごとき共和国随一の猛者となったフーシェは、反動主義者達に苛烈な弾圧を加え、都市を破壊すべくリヨンに向かい、「リヨンの霰弾乱殺者」として3ヵ月で2000人近くの人々を処刑した。しかし、ある時、はたと風向きが変わった。各地で行われる暴虐行為に嫌気がさした市民らから告発が行われ、恐怖政治への批判が活発化する一方で、国民公会では政治的対立が深まり、議会の風向きは読めない。コティは直ちに虐殺を取りやめ、革命委員会を解散させた。リヨンの虐殺者はまたも一夜にして寛大なリヨンの救済者に転じたのである。

そんなコティにパリから召喚状が届く。曰く「リヨン事件の経過を弁明せよ」。果たして弁明すべきは、やりすぎた弾圧者としてか、寛大に過ぎ愛国の同志を迫害した穏健派としてか。パリに戻ったコティは、変節漢を好まない清廉の人にして恐怖政治の独裁者、かつての友人にして強大な政的、マクシミリアン・ロベスピエールと対決する。


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