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おれは、高松美咲『スキップとローファー』のことを今日知ったばかりだが、完全に傑作であると確信したのでみんなにおすすめしたい。

漫画大賞2020の三位入賞作品、高松美咲『スキップとローファー』。月刊アフタヌーンで2018年10月から連載中の漫画である。既刊4巻。

おれは邪悪な資本主義の権化であるキンドルストアで、ウカツに漫画大賞コーナーに並べられているのをぽちってしまっただけだったのだが、あっという間に既刊を読み終え、今や完全にファンつまり虜になってしまったので、ここに報告する。

石川県のはしっこ育ちの岩倉美津未は、高校入学を機に上京した、田舎天然ぴかぴかの女子高生である。少しズレてるけど、めちゃくちゃマジメ真っすぐで、スッキリしなやかに強いみつみちゃん。そんな主人公が、クラスメートとの交流の中で、ちょっと躓くけど、スッと乗り越えて、友達に幸せを広げていく。

久しぶりにこういう漫画を読んだなあという、さわやかな青春物語である。

おれは当初、青春ものという点に若干の不安を感じたが、ドロドロとした人間関係やどうしようもない悲しみで読者のハートを痛めつけるといったことは、まったくといっていいほどなかったので色々疲れてハートが弱っている大人たちも安心して読んでほしい。

ピュアな主人公、都会ずれしたちょっと意地悪な女友達、どっかさみしい感じのあるイケメン(いいやつ)、そしてナゾの性悪美人・・・道具立てとしては、ものすごくありふれたものばかりなのに、どうしてこんなに新鮮なんだろう。

青春の悩みを描きつつも、重たすぎず軽すぎず、爽快な読後感が圧倒的だ。それでいて浅い感じも受けない。矢沢あいであれば軽く5巻は引っ張りそうなすれ違いも、大体1話で解決するテンポの良さも心地よい。

まだ、話の途中なので、今後どうなるかはわからないが、今のところ、期待感を持って心配なく読んで行ける。まだ解決されていなさそうなエピソードもあるが、みつみちゃんならきっと大丈夫、そんな希望を感じさせる作品である。

狭い人間関係で育ったみつみちゃんにとって、微妙な人間関係の悩みというのはほとんど初めてのこと。その一つ一つに真っすぐ向き合って正面突破していく。

大人であれば誰しも経験のある、なんかうまくいかなかったことみたいなものがスッキリと解決されていく様子は、ご都合主義といえばそうかも知れない。

しかし、キャラクターの魅力なのか、読者はそれを違和感なく素直に喜ぶことができる。自然とそういった気持ちにさせる描き方ができていると言ったほうがいいだろうか。派手でない絵柄も、素朴なあたたかい気持ちを引き出すのに一役買っているところだろう。

とにかく、裸足で疾走する岩倉美津未を応援したい。気がついたらそんな気持ちになっている良作である。


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