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わけのわからないもののスゴさはもっと理解されるべきだという、登美彦氏と『熱帯』を巡る長い話の序章(つまり前編)
森見登美彦氏は、四畳半の者である。
代表作は『夜は短し歩けよ乙女』(2006)でいいだろう。
ほかにも評判の良い作品がいくつもあるが、おれはあまり真面目なファンではないので全部に詳しいわけではない。
『夜は短し・・・』は主にジャケとタイトルで受容されている作品と考えていい。いや、作品としてはもちろん面白いのだが、おれの中では、スイーツを装った危険物である、といったようなことを言いたいからだ。
京都を舞台としたファンタジーなのだが、内容は、おじさんが炬燵の部屋で汗をダラダラ流して悶絶したりしながら火鍋勝負をしたりする話などであり、要素に分解すると、とてもじゃないが一般受けしそうな感じではない。
おそらく、ジャケットにも描かれている黒髪の乙女が「たぶんかわいいに違いないと思えてしょうがない」というほぼ一点で、その危険性が絶妙にカムフラージュされ、広く読まれるに至った作品である。マンガ、舞台、アニメーション映画、と手広く展開された。作品のメジャー度を端的に示すと、主演が星野源、ということである。
キャッチコピーにいたってはこんなことになっている。
“キュートでポップ!カラフルな奇想と、めくるめく展開。抱きしめたくなるラブストーリー!”
ものは言いようである。
要はストーカーめいたパイセンがやや天然気味な乙女を付け回すわけなのだが、その先々で、奇想天外というか、基本的にわけのわからないシーンが描かれ、結果、なぜか運よくお近づきになれる、そういう話である。
デビュー作『太陽の塔』のファンからは、乙女と結果的にお近づきになるとは何事だ、四畳半の面汚しだ、となるわけだが、野郎と大文字の炉で焼き肉をしたり、ゴキブリを送りつけあったり、彼女に電動招き猫をプレゼントして大変なことになる、といった話ではなかなかメジャーにはなれないわけであるから、ここは乙女の可憐さに免じて、一応許してやるべきだとおれは思う。
しかし、おれが心から登美彦氏を許して良いと思ったのは、そこではない。
『熱帯』を最後まで書いたからだ。そして、おれが本当にしたいのは『熱帯』の話だ。
つづく
そう、続いてみた。これは何気なく初の試みだ。とんでもなく話が長くなってしまって、ぜんぜん終わらないので、健康のために今日はここで終わろう。
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