すずらんのお守りのエフィカシー

東京大神宮、縁結びで有名な神社。
地方育ちの私は、大学で都会に出てくるまで存在を知らなかった。教えてくれたのは同じく上京した高校の友達だ。

上京した仲良い友達３人で、大学生になってからも定期的に会って近況を報告していた。
ある日、友達のひとりに彼氏ができたとき、もうひとりの友達が教えてくれた。

「私がね、東京大神宮のお守りをプレゼントしてから、すぐに付き合うことになったんだよ」
東京大神宮の効果すごいわ、って。
そこで私は初めて東京大神宮を知った。縁結びに強い神社がそんなところにあるんだ、と。

友達はジンクスを信じるほうで。
私があなたにお守りをあげたら、あなたにも彼氏ができるかもしれない。
そう言って、彼女は私にもすずらんのお守りをくれた。

高校時代はそんな浮いた話もなかった私たち。大学生活に夢を抱いていた。だから私も、もしかしたら……と淡い期待を抱いたのは事実。
結果、お守りの効果はなかったんだけど。


もともと私はあまり信仰心が深いほうじゃないし、神頼みや占いは自分に都合のいいところだけ信じるタイプ。
お守りも、本気で効果があると考えていたわけじゃなかったけれど。効果がなくて、なんだ、やっぱり自分で切り開いていくしかないし、どんな神に頼んだって、結局は自分次第なんだよなと、ちょっと悟りを開くくらい。

そんな思い出のある東京大神宮に、久しぶりに参拝したのは去年の春。
東京ドームでのコンサート前に、少しの空き時間に行ってみようとなった。縁結びの神社だし、良席祈願をしてこよう！と。

一緒に行った後輩と大神宮に向かう道中、
「私、ここのすずらんのお守り持っていて、ずっと通勤バッグにつけていたんですけど、それが切れちゃって、そのあとすぐに彼氏ができたんです！」
そんなエピソードを聞き、どこかでも聞いた話だ、と私も高校の友達のエピソードを話して。でも心のどこかで、どうせ神頼みなんて………と冷めた気持ちを持ちながら、東京大神宮って本当に効果強いんだね、なんて話しながら向かった。

大神宮に参拝して、それはそれは必死に良席を祈り、おみくじを引いて、せっかくだしと、あのすずらんのお守りを授かってきた。
あのとき、友達にもらったお守りは、家のどこかの引き出しのなかで眠ってしまっている。心機一転、新しいお守りをつけてみよう、と。

ちょうどそのとき、恋愛なんてそっちのけで、趣味にしか生きていなかったし笑、そのあとも続く推しのツアーで良い席に入りたい！という気持ちで、私もすずらんのお守りを、通勤バッグにつけることにした。

結局、その日のドームの席は遠くて推しは豆粒(笑)
やっぱ私と東京大神宮の相性悪いんだなぁ、なんて思いながら。

すずらんのお守りを通勤バッグにつけて最初の１～２か月。正直、ちょこっと期待していた。効果があるかなって。
でも、ツアーでとりわけ良い席に入れたわけでもなく、普段の人間関係も良くも悪くも代わり映えせず、そのうち、お守りはただのバッグについたキーホルダーとして、私のなかで気にも留めない存在になっていた。

それから半年以上が経って。
仕事終わりに職場の同僚と話をしていたときのこと「バッグについてるのって東京大神宮のお守り？」と聞かれた。
そうだよ、と何気なく答えた私に、同僚は私も同じ色で持っていて！とキーチェーンについたすずらんのお守りを見せてくれた。
そこでふと同僚が、「あ、でもあなたの社紋とれてますね。とれると良いことあるっていうよね」と。

え？と思ってみてみれば、気にも留めていなかったお守り、たしかに社紋部分がなくなっていた。でもつい最近までついていたような気もする。いつなくなっちゃったんだろう。

でもだから社紋がとれたからって、とりわけ良い変化が起きてはいなかったし、考えられることは、数ヵ月前に出会った彼のことだった。
ちょうど、彼に深入りしないようにと、距離感をどうしようか、友達として見つめ直すのか、自分のなかで考えていた時期だったから。

お守りが、彼との悪縁に耐えられなくなって身代わりになってくれているのかもしれない、直感的にそう思った。

そう考えたら、お礼にいったほうがいいかもしれない、そう思って。だって、人生でお守りが切れた経験なんてない。悪いことが起きたら嫌だ、とそう思って、時間を見つけて東京大神宮に参拝することにした。

切れたお守りと、友達からもらってしまいっぱなしだったお守り、どちらも奉納して。

信じていなくてごめんなさい、悪縁から守ってくれたのならありがとうございます、でも、もしこれが良い縁なのであれば、進めるように背中を押してもらえたら嬉しいです。
なんて、そんな、私利私欲にまみれた幼稚なことを真剣に祈った。

それから、また、新しいすずらんのお守りを授かって。悪縁で切れたのなら、また良い縁を結んでもらえるように、もしくは、また悪縁から守ってもらえるように。後者の気持ちのほうが正直強かったかな。
都合の良いところだけ信じる私なので、そんな自分勝手なことを思いながら。

新しく授かったすずらんのお守りを通勤バッグにつけかえてから１か月半。
状況が状況ではあるけれど、彼から交際を切り出させ、付き合うことになった。
悪縁を断ち切ってくれたんじゃなくて、良縁を結んでくれたのかな。そんなこと、都合がいいことを考えている。

結局は何事も自分次第だと私は思うから、
神頼みとか、占いとか、そういうのって、自分の考えや行動に、よし！これでいけるぞ！占いもこうだし！って、自信に箔をつけるものでしかないと、私は考えているけれど。

東京大神宮、すごいじゃん。
すずらんのお守りのエフィカシー。