見出し画像

一寸先は春か

 春になったら、違う生活が始まっているのだろうなと漫然と考えていたが、もうすぐ、というか、もうほとんど春になってしまった。昨今は寝ても覚めても、新型コロナウイルスの話題で各所が大変な頃合いで、ネガティブな気持ちになるきっかけに事欠かないが、実際のところ無職で独り身の自分は、社会的に何者でもなくどの立場からも議論に加われない(加わりたいわけではない)存在で、世間がえらいこっちゃなってるぞ、と思いつつも何となく浮世離れした気持ちもありつつしばらく暮らしていた。

 ところが、本来ならば当初、今日が新しい仕事(アルバイト)の雇入れ日だったのだが、完全にコロナのあおりを受けてしまっている職場上、先週、今日だった雇入れ日が今月末になり、そしてさらに先日の政府の自粛延長要請を受けてさらに延期する…という報を受けてしまった。現時点では採用には変わりないと伝えられているし、やってみたかった仕事なので、当分待つつもりだが、見通しが立たなくなってしまって、続報があるたびに少し動揺してしまう。社会復帰のタイミングは自分の気持ち次第でいつでも決められると思っていたのに、まさかこんな非常事態が起きるなんて、という気持ちと、ようやくなまりかけている重い腰をあげたのに見事に出鼻を挫かれる形になってしまったことの脱力感がある。

 予定していた収入の目途が立たなくなったことも当然不安だし(本当に逼迫するならもちろん他の仕事を探す必要あり)、目に見えて経済状況が悪化していく中でゆくゆくは再就職を、という呑気な考え方(という声が勝手に聞こえる)で大丈夫かという自問自答も絶え間ないが、いまさら何を焦っても仕方ない。不況に振り回されたら就活の二の舞なのだから。

 ちょうど先ほど、Twitterのトレンドに「内定取り消し」が上位にあがっていて、自分の時代と重ねてしまったのだが、入社目前にしての内定取り消しは不当ですらあるし、気持ちを切り替えろと言われてもそう簡単にいかないと思う。来年度卒の就活生は、求人を絞られて厳しい戦いになるかもしれない。でも、内定を取り消したり人員を削ったりする会社になんとか入っても、人手不足で補充も見込めず、業務過多で人が潰れる可能性がある。身を粉にするアピールで少ない席を奪っても長く続けることが難しい。今となってはそう思う。そうはいっても当時は、とにかく、「内定」の二文字が欲しかったんだよな。私は。今回の場合、一定の業界全体が窮地に立たされていて、企業だけが悪いとは言えないと思うけど、自分の身は自分で守るしかない。と、どの立場から思いつつ。

 ひとまず、無職延長を決めたことにつき。

 先日無事、日商簿記三級をとれたので、引き続き二級の勉強を、感覚を忘れないうちにできるだけ進めたい。基本的な料理を、どんなに時間をかけてでもレシピ通りにきっちり作る練習をしたい。桜の木の蕾を頻繁に観察しに行きたい。ひとりでふらっとでかけたい。そんなことを予定通りできたりできなかったりする間に、次の季節もとっくに終わっているんだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?