いつ・どの時代にも起こる音楽性の違い。イギリス産バンド映画「ザ・コミットメンツ」。

友情は多くは見せかけであり、恋は多くの愚かさにすぎない。

とはシェイクスピアの弁。
どんなに仲の良い人間同士でも、同じ釜の飯を突きあっていれば、互いのアラばかりが目立っていき、次第に一緒に過ごすのが苦痛になり、やがては、それとなく、別れることを選ぶ。
「それとなく発展的に解散」することを称して、
いまでは「音楽性の違い」という便利な言葉が存在する。

その「音楽性の違い」というものを、みごとに、シニカルに描いたのが本作だ。
先日逝去したイギリスの映画監督、アラン・パーカーがメガホンを取った。

アイルランドのダブリンを舞台に、ソウルバンドを結成した若者たちを描いたロディ・ドイルの小説を、イギリスの名匠アラン・パーカー監督が映画化した青春群像劇。本格的なソウルバンドの結成を決意したジミーは、新聞にメンバー募集の広告を掲載する。ところが、彼の元に集まったのはソウルとはとても結びつかない変わり者ばかり。それでも彼は何とかメンバーを集め、ようやく「ザ・コミットメンツ」を結成。早速練習を開始するが……。
【スタッフ】
監督    アラン・パーカー
音楽監修    G・マーク・ロズウェル
【キャスト】
マイケル・エイハーン、アンジェリナ・ボール、ロバート・アーキンズ、
マリア・ドイル、デイブ・フィネガン

引用元:映画.com  作品情報


よくあるバンドの日常風景。仲良しこよしじゃない、ギスギスした日常風景。
本作で90年代ダブリンの青年たちが
「音楽で有名になりたい!」
そんな淡い功名心から結成したバンドは、船頭多くして船山に登る。

彼らが必死で生み出した革新的で先進的な音楽は、90年代:まだ再開発もなく「労働者の町」だったダブリンの保守的な空気には、どうにも馴染まない。
浮き上がれそうで浮き上がれない日々が淡々と過ぎていき、精神的疲労がたまり、メンバー間の仲もギクシャクしていく。
バンドのリーダー的存在であるジミーも、いつしかメンバー間の爆弾処理に追われる毎日で、やりたいこともできず、ストレスが溜まっていく。

結局、バンドは「音楽性の違い」という理由で、半ば喧嘩別れに近い形で解散する。当の音頭を取ったジミーが、逆ギレ紛いにメンバーに宣告する形で。
最終的に、音楽に携わる者、携わらない者、全く別個の生き方をそれぞれ歩むこととなる。
それでもジミーは音楽を続ける。いつかまた、自分と志を同じくする仲間たちとバンドを組むことを待ち望んで。船頭多くして船山に登らない仲間を望んで、いつか、また。



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