"マイケル・サリヴァンの人となりを尋ねられたら、いつもこう答える、「私の父親だった」と。"『Road to Perdition』

2002年に公開されたトム・ハンクス主演の壮絶なマフィア・アクション映画『Road to Perdition』(邦題:「ロード・トゥ・パーディション」)より。
監督・製作はサム・メンデス、音楽はトーマス・ニューマン、撮影はコンラッド・L・ホールと、通好みのスタッフ勢ぞろい。
冒頭、雪が降りしきる中、少年が静かに町の中を駆けていく、色調を押さえたカメラで切り取られたシーンだけで、この映画を見て正解だと感じさせてくれる。

舞台は1931年のアメリカ、禁酒法時代のシカゴ。主人公マイケル・サリヴァン(トム・ハンクス)は、アイルランド系マフィアのボス、ジョン・ルーニー(ポール・ニューマン)の信任を受けて、彼の手下として仕えている。しかし、ある出来事がきっかけで、マイケルと彼の息子のマイケル・ジュニア(タイ・シムキンズ)はルーニー一家から逃れることを余儀なくされる。
マイケルは、自分と息子を守るために、冷酷な殺し屋マガイアー(ジュード・ロウ)との壮絶な追跡戦を繰り広げる。逃亡の旅路を通じて、父と息子の絆が深まり、過去の罪と和解する機会を探し続けるストーリーが描かれる…。

原作はマックス・アラン・コリンズ作のグラフィックノベル。。小池一夫小島剛夕漫画子連れ狼』をモチーフとした重厚かつ繊細な世界観。「子連れ狼」の拝一刀よろしく、愛する妻の死、裏切りの汚名を一人背負って復讐に生きる主人公マイケルのたたずまい、息子との心のふれあいを描き切っているのが、見事だ。
それでいて、マフィアものとはいっても「子連れ狼」とは真逆、血しぶきの飛び散る派手な演出ではなく、基本トーンを押さえて暴力は描写されており、不思議で魅惑的な静の魅力が、全編を支配している。

何といっても、マイケル父子のさりげない会話のひとつひとつが良い。
例えば、道中立ち寄ったダイナーで、父子が賞金を分け合う瞬間。

Michael Sullivan, Jr.: So when do I get my share of the money?
Michael Sullivan: Well... how much do you want?
Michael Sullivan, Jr.: Two hundred dollars.
Michael Sullivan: Okay. Deal.
[Michael Jr. stops eating and thinks for awhile]
Michael Sullivan, Jr.: Could I have had more?
Michael Sullivan: You'll never know.

IMDBから引用


そして、復讐の果てに迎える終局、これはサム・メンデスな絵作りといってよい。
海岸のそばの家を買い、マイケル父子は、ようやく平穏を得る。
その平穏も長くは続かない。窓際の部屋の背後にマガイアーが迫る(窓の反射を活かした「ロング・グッドバイ風」の絵作りが見事)。
父と殺し屋は相撃ちになる、なおも息のあるマガイアーは、銃を、無事な息子に向けようとする。銃を手に取ってマガイアーを撃つしかないのか、銃を握りしめつつ、躊躇する息子。
そこを最後、父は力を振り絞って、マガイアーを撃つ。息子に殺しをさせないために、道をそらせないために。自身と同じ汚れたマフィアの道を進ませないために。これこそが、父の「愛」。
奇しくも、最後宿敵・柳生烈堂に父を殺された大五郎が、復讐の刃を烈堂の体に突き刺す「子連れ狼」とは、真逆の結末に終わる。

最後は、少年のモノローグで、静かに締めくくられる。たった6週間の冥府魔道をかみしめて、父の死を惜しんで、それでいて感情は押さえて、しめやかに。

[last lines]
Michael Sullivan, Jr.: I saw then that my father's only fear was that his son would follow the same road. And that was the last time I ever held a gun. People always thought I grew up on a farm. And I guess, in a way, I did. But I lived a lifetime before that, in those six weeks on the road in the winter of 1931. When people ask me if Michael Sullivan was a good man, or if there was just no good in him at all, I always give the same answer. I just tell them... he was my father.

IMDBから引用


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