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沈んだ世界を渡るデラシネたちよ。未来少年コナン的な世界観のADV RPG “High Water”

High Waterは、

洪水により崩壊した世界を舞台に、立体型ターン制パズルバトルを繰り広げる、一風変わった3Dアドベンチャーゲーム『ハイウォーター』。このメランコリックで情緒あふれる脱出ゲームで、ボートを操り、島を発見して、仲間を増やしながら、ユーモアあふれる友情の物語を楽しもう。

気候大変動の最中、ハイタワーと呼ばれる洪水地帯は、ほぼ地球規模で壊滅しているウォーゾーン、そして、巨大な壁の向こうに超富裕層が暮らす要塞都市アルファヴィルという、2つの乾燥地帯に挟まれ一種の安全地帯となった。

地球での生活を維持することは難しく、火星への脱出の噂が飛び交う中、ニコスは友人たちと共に危険な旅に出る。まず向かうはハイタワー。そして、その先には難攻不落のアルファヴィルの国境が待ち受けていた。果たしてニコスと仲間たちはロケットでの脱出に成功できるのか!?

steam公式

とある様に、じつにオシャレかつシニカルな世界観。

ゲーム中でアイテム以外にも、世界観を伺う手掛かりとなる様々なテキストを拾うのだが、白鯨よろしく、争いの絶えない醜悪な世界であると知る。
争いの種は僅かな資源や土地ではない。イデオロギーだ。アルファビルの防衛部隊、アルファビルを攻撃するレジスタンスはまだマシな方で、バイキングを気取る、打ち捨てられた鉄道に救いを求めるグループなど、カルト化手前でなんとか踏みとどまっている哀しい人々も現れる。

ロケットに乗れる選ばれた連中は除いて、残された人々の行き先は様々。VRの天国に没入する者、または安楽な死を求める者。

いずれにせよ未来が失われた地球を捨てて、主人公ニコスは、火星行きのロケットに乗り込む意思を譲らない。長年住み慣れ見知った漂着者ばかりの共同体、ハイタワーを捨ててでも。

戦闘はSLG形式、装備の追加はあってもステータスが上昇することはない。よく出来たSLGの特長よろしく、クリア条件は敵の全滅に限らず、ゴムボートを搬送する、発電所を守るなど、多数。
旅は道連れということで様々な仲間が加わっては、また、離れていく。彼らのスキルと途中のアイテムを活用し、戦闘勝利を目指せ。
木を倒したり、ショッピングカートを敵にぶつけたり、横転した車の影に隠れたり、海に突き落としたり、フィールドのギミックを活用すれば、体力消耗をできる限り避けつつ敵シンボルを倒すことができる。

🛡️のマークが表示されている地点なら、敵からの銃撃のダメージを反撃できる。
身を隠しつつ卑怯な飛び道具を持つエネミーを倒す鍵は、ニコルの装備つりざおにある。
2,3のステージのみ仲間になる味方キャラクターも皆良い味してる。
プリーストは非暴力を掲げてるとあって、攻撃こそできないが防御が高く回復もできる。
赤のマスにシンボルが存在するとギミック発動。
できるだけ敵を誘い込むことだ。どうせ、倒しても、けいけんちなど入らないのだから。

とはいえ、本作の1番の醍醐味は、ニコスの持ち船アルゴ号に据えられた海賊ラジオ放送に耳を澄ますことだ。アルファビルにもレジスタンスにもどちらの側にも立たないDJは、市民の生活に直結するニュースの合間にインディーズのナイーヴな音楽を流す。これが、どれもしんみりして、世界観にマッチしていて、良いのだ。

最初は張り付くように生えていた
木々に囲まれた世界も、
次第に移り変わり
終盤は人工物ばかり、却って幻想的な世界が姿を現す…。

(ニコスが劇中焦ることは裏腹に)どうせ急がない、時間制限のない旅なのだ。釣船に乗った気分になって、プレイする手を止めて、ラジオをつけたまま波に揺られる遊び方も、一興。

いっけん未来少年コナンの様な世界。しかし宮崎駿的な夢やカタルシスはなく、ダウナーながらもしぶとく生き続ける人々の息遣いが聞こえてくる世界観を旅する、デラシネたちのものがたり。
Netflixメンバーなら特典でプレイできるので。インディーズと食わず嫌いせず、手にとってみては、いかがでしょうか?

クライマックス、アルゴ号を捨てて
アルファビルに乗り込んだ一行を
待ち受けるものとは…。

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