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“その手でお前の愛馬を埋めるんだ!”_”Bite the Bullet”(1975)

「スティール・ボール・ラン」の元ネタ。だけどジョニー・バレンタインも、リンゴォ・ロードアゲインもといチャールズ・ブロンソンも、出てないよ。
喩えるなら、ノリスケ・ヒガシカタを主役に置いたような映画。

1908年の西部。
デンバー・ポスト新聞の主催による、踏破距離700マイル、賞金2000ドルの人馬による 過酷なレースが始まろうとしていた。 それは、山あり谷あり砂漠ありという定められたコースを6日半で踏破しなければならず 、馬を乗りかえることは出来ず、もし事故に遭えば生きては帰れない、死のレースだ。

出場者8人が各地から集まった。カウボーイのサム・クレイトン (ジーン・ハックマン)、皮肉屋の賞金稼ぎルーク・マシューズ(ジェームズ・コバーン)、 ミスターと呼ばれるカウボーイ(ベン・ジョンソン)、名声に憧れる若者カーボ(ジャン・マイ ケル・ヴィンセント)、乗馬を愛する英国紳士ノーフォーク卿(イアン・バネン)、メキシコ人 (マリオ・アルテアガ)、馬術家リー・クリスティー(ロバート・ホイ)、紅一点、 娼婦のミス・ジョーンズ(キャンディス・バーゲン)。

8人の冒険者たちは毎晩定められたチェック・ポイントに立ちより、獣医によって厳 しい馬の検査を受けなければならない。このレースはアメリカ中で注目され、 何百万ドルという賭金が動く。 レースが始まる。

とはいえ、70年代の映画なので(客層に合わせて)年の功が物をいう。
だから年老いたガンマンのタフガイ二人が主役なのは、当然。クレイトン:ジーン・ハックマンと、マシューズ:ジェームズ・コバーンだ。 ネタバレすれば、最後優勝するのも、この二人。

抜きつ抜かれつというよりは、どこかのんびりしたレース模様。
むしろ、大自然の厳しさにさらされる人間の弱さ、賞金 を求める人々の執念に目を見張る。本作は、レースを中心に描かれる人間ドラマといって良いだろう。ハックマンとコバーンのナイスミドルぶりと合わせて。

ドラマに締まりがないのは、良い台詞に巡り会えないせいもあるかもしれない。
脚本家から監督へとキャリアを進めたリチャード・ブルックスの作品。「冷血」ほか文芸ものを得意とするリチャード・ブルックスの作品 だと言うのに。
あえて良い台詞を挙げるとすれば、このあたりだろうか。
カーボが愛馬をつぶしてしまい、その死体を残して逃げ出そうとしたところ、クレイトンは彼を捕まえて、ちゃんと最後まで面倒を見てやるものだと厳しく教育するシーンより。

[Carbo's abusive riding tactics have killed his horse]
Sam Clayton: Bury him.
Carbo: What with?
Sam Clayton: Your god-damned hands!

[to reporter]
Sam Clayton: See he does it. You see to it!
Carbo: What he said, is it that important?
Reporter: Must be, he said it twice.
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https://www.imdb.com/title/tt0072705/quotes/?ref_=tt_trv_qu

マシューズとクレイは対照的な人間。
マシューズは、上記のやりとりで分かるように、年の功に長けた、親切で思慮深い、過去にちょっとした事情のある人間。
方やマシューズは小狡いくクレイに真っ向から勝負したのでは勝てないと知っているマシューズは、クレイに八百長で負けてくれるよう頼む。マシューズに賭けられている賞金を後で山分けしようという魂胆で。
真逆の性格のこの二人が、どういうわけだか、惹かれ合う。ジョニィとジャイロの様に。
この2人が、終盤、馬を奪われて、協力して馬泥棒の後を追う姿は、本作のハイライトだ。

疲労困憊ながら2人はレースに復帰する。ゴール手前、クレイが一着でマシューズが二着。しかし、彼はわざとマシューズが近づくのを待ち…二人は同時にゴールインする。余韻ある終わりかただ。


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