見出し画像

主役は車と音楽と60年代テイスト。Good Old Days カーアクション 三本だて。

のんびり車を走らせるタイプのカーアクション。それは、世界中が経済成長でイケイケどんどん、「マイカーが男のロマンだった」60年代にのみ咲いた徒花だ。
派手に車を潰したり吹っ飛ばしたりせずとも、走る絵作りだけでお客が満足していた時代の産物。車も音楽も台詞回しも上品な世界観。

この時代の代表作を3つ、今回は取り上げて見ていきたい。どこか遠くへ行ってみたいときにでも、どうぞ。

車が主役。人間は脇役。 「ミニミニ大作戦」。

イギリスの大泥棒たちが、イタリアのトリノに乗り込んで、500万ドルの金塊を強奪しようと計画する。しかしこの計画を阻止しようと待ち受けるマフィアの一味がいた・・・・。マフィアの裏をかき、首尾よく奪った金塊を積んだミニ3台が街中を駆け抜ける!ひねりのきいたラストシーンも忘れがたい。
監督:ピーター・コリンソン
出演:マイケル・ケイン、ノエル・カワード、ベニー・ヒル
パラマウント ピクチャーズ  公式サイトから引用

まず脳裏に残るのは、
ミニクーパーをはじめとする名車の数々、おしゃれに早口な主題歌、
マーガレット・ブライの茶色のミニスカ&ブーツの60年代テイスト・ファッション。一周まわって、非常におしゃれだ。

ジェームズ・ボンド as ショーン・コネリーの007シリーズ黄金期、その中に生まれたフォロワー。本家のゴージャスさを体現しようと不必要なまでに美女が配置される本編。しかし、人間の女よりもキュートなのが3台のミニクーパーだ。

見どころは、大泥棒たちが金塊を積み込んだミニクーパーでトリノ市内を暴走するシーンだろう。おおよそカーアクションには不向きなミニクーパーが3台揃って警察の車やバイクの追跡から逃れる軽妙な姿、クインシー・ジョーンズのコミカルでテンポいい劇伴と合わさって、見ていて実に心地よい。
階段を降り、ショッピングモールの中を走り、結婚中の教会の階段を駆け下り、建設中の展示ホールの屋根の上を走り、ビルからビルにジャンプし、川の中を走り、下水道を走り、遂には逃亡に成功するのだ。
もちろんイギリスの大泥棒なので、ミニクーパーで逃走するときの並びは赤、白、青の順番、つまりユニオン・ジャックの並びようだ。

もちろん、助演車の顔ぶれも実に豪華。冒頭にはランボルギーニ・ミウラ、アストン・マーティンDB5コンバーティブル、ジャガーのEタイプ、追いかけるパトカーはアルファロメオ・ジュリアと堂々たる顔ぶれ、それをクラッシュさせるは崖から落とすは、じつに贅沢なのである。

これらゴージャスなクルマの前に、無意味に数だけは多い金塊強奪グループは没個性化する。人数ばかり揃えた理由は、ひねりの効いたオチで明らかになる。

なお本作はリメイクされた。 監督は「ICE BREAK」のF・ゲイリー・グレイ。
キャストの一人に「EURO MISSION」で参戦するジェイソン・ステイサム。知ってかしらずか、ほぼ「ワイスピ」化しているのは、言うまでもない。


機械仕掛けの人形のいじらしさ、可愛さ。 「ラブ・バッグ」。


本邦未公開のディズニー製作の実写映画だ。アニメで稼いだお金を注ぎ込んでいる分、「ミニミニ大作戦」に劣らず見応えあるのが良いところ。 
(全米大ヒットもあって、この後二作もシリーズが作られている。)

自分の意思を持った愛すべき車、“ハービー”が大活躍!1969年に公開するや、その年の全米No.1興収大記録を成し遂げた大ヒットムービー!!
落ち目のレーサー、ジム(ディーン・ジョーンズ)は、外車ショールームで不思議なフォルクスワーゲンと出会う。渋々ながらもこの小型車“ハービー”とチームを組むことになったジムは、なんとその後のレースで連戦連勝。運が向いてきたのは自分の技量のおかげだと自信満々。しかし、完敗したライバルが、卑劣な手を使ってハービーを潰しにかかってきた。あらゆる妨害を受け、遂に車体は真っ二つ!それでもハービーは走り続け、ジムと共にひたすらゴールを目指す!!果たして勝利の行方は!?見る者の心を奪う不思議な車“ハービー”が、数々の奇跡の冒険を繰り広げるファンタスティック・コメディ。

ディズニー ブルーレイ・DVD・デジタル配信 公式サイトから引用

「意志を持った」1963年式白のフォルクスワーゲン・タイプ1が、画面を所狭しちょこまかと駆け回る。
意気揚々とウィリーしたり、レースで酷使されたり、チャイナタウン を爆走したり、悪人の手で傷物にされて橋の上から飛び降りようとしたり。一挙一同が可愛らしいのだ。

「ミニミニ大作戦」と異なるのは、こんな愛しい機械仕掛けに負けず劣らず、濃いメンツが揃っているところだ。
ジムは自信過剰な男(中盤まで「自分が勝ててたのはハービーのおかげ」だということに気づかない!それに気付いてから、マイナス分を稼ぐのだが。)だし
ライバルはブラック魔王(by チキチキマシン)ばりの高笑い。
コテコテの芝居が、ハービー同様に忘れがたい。

本作も「ハービー 機械じかけのキュービット」としてリメイクされている。
主人公を、冴えない(汗臭い)オッサンから、リンジー・ローハン演じるさわやか女子にチェンジ。 画面がさらに華やかになったのは、言うまでもない。


60半ばのカウボーイ、マスタングに跨る。「マックQ」。

親友で同僚のスタン・ボイル刑事がショットガンで殺された事件を、ロン・マックQ警部は麻薬組織の帝王マニー・サンチャゴが背後にいると睨んだ。そのために彼は大変なトラブルに巻き込まれることになる。サンチャゴは明らかに警察幹部に顔が利くらしく、マックQは上司にボイルの件から手を引くよう命令されたため、あっさりと辞職を決意するのだった。私立探偵のライセンスを取り、捜査を続けることにしたマックQは、まず情報収集資金5,000ドルを、金持ちと再婚し今では友達の別れた妻から借りて用意した。そして、サンチャゴが麻薬絡みと思われる何かの企みに、3人のガンマンを雇ったことを知った。さらに、ボイル事件の周辺を洗っていくうちに、マックQは事件に警察内部の人間が関わっている疑いを深めた。マックQの追求する正義を見つけ、そして事件の全貌の鍵を握る人物を探り当てた時、サンチャゴと悪徳警察官対マックQの対決が壮烈なフィナーレを飾る!
キャスト:
マックQ … ジョン・ウェイン (納谷悟朗)
コスターマン … エディ・アルバート (田中明夫)
ロイス … ダイアナ・マルダー (平井道子)
スタッフ:
監督 :ジョン・スタージェス
製作 :ジュールス・レヴィ
製作 :ローレンス・ロマン
脚本 :ローレンス・ロマン
ワーナーブラザーズ 公式サイトから引用

この映画の特徴は「カーアクションなのに、妙にノンビリした雰囲気」だということにあるだろう。70年代の映画にしては食い足りないほど、ジョン・スタージェスもジョン・ウェインも、マイペースに、のびのびと撮っている。

1971年の『ダーティハリー』のハリー・キャラハンのオファーを蹴った「西部劇の王様、アメリカを代表するスーパー・スター」ジョン・ウェインは凄く後悔したという。4年後、彼は彼なりの刑事像を打ち立てるべく、本作に主演した。当時60半ば過ぎ。(当時の平均寿命を考えれば、「運び屋」をイーストウッドが主演する位の快挙?暴挙?といっていい。)

今までカウボーイハットをかぶりライフル銃片手に馬に乗っていた男が、背広にサブマシンガン「イングラム」片手にトランザムに乗り込むのである。
そう、この男が乗り込むのが、荒馬のようなブルースター・グリーンの1973年式トランザム455なのである。追うトランザム、追われるラストの水しぶきを上げながらの海岸線のカーチェイスは、夕陽をバックになかなか魅力的だ。

肝心の捜査線はグダグダそのもの。同時代の「ダーティハリー」や「フレンチ・コネクション」の硬質さとは異なって、そのどこかのんびりしていて、温かみがあって、なんとなく癒される不思議なムードが漂っている。
スリリングな男の魅力を堪能するのではなく、ジョン・ウェインののんびりしたオジサン刑事が頑張る映画。ラストもほっこりさせられます。



この記事が参加している募集

この映画の話は面白かったでしょうか?気に入っていただけた場合はぜひ「スキ」をお願いします!