ヒントp

【メモ】物語構成のヒントを音楽ジャンルに求める。

「3幕」・「起承転結」構成は物語の最適解なのか?

商業映画の脚本教科書ともいわれるシド・フィールドの書いた「SCREENPLAY・The Foundation of Screenwriting」には、観客をひきつけ満足させる基本フォーマットを「3幕構成」として各映画を分析実証している。
漢詩の考えから来ている「起・承・転・結」構成は、現在もサザエさん、ドラえもん、特撮戦隊ものまでエンタメ作品の基本構成として通用している。

漢詩の「起・承・転・結」構成を頼山陽が短く謡にしている。

起: 大阪本町 糸屋の娘
承: 姉は十六 妹が十四
転: 諸国大名は 弓矢で殺す
結: 糸屋の娘は 目で殺す

映像が浮かぶ見事な例えで一度聞くと忘れられない名文だが、「お話、お話」しすぎていないか?という不安も同時に感じる。

他にも様々な創作ハウツー本でこの四幕構成の事は書かれているので、創作をし始める時、「このページまでセンターポイント、ここから大きく舵を切る!」などと拘ってセリフを足したり引いたりしてしまいがち。そのことばかり考えていると、「この構成にはまらないアイデアはストーリーに向いていない」と考えたりする。

でも実際に自分で、1時間、2時間という長尺のドラマ・映画の分析をすると、多数のネタが存在するので、ここが「第2のポイントだ!」という解釈も人によって違ってくる。例え構成は3幕構成になっていても、退屈な話は退屈だし、面白い話は転結転結だけでも見続けられる。
何故この構成か?クリエイティブを制限することになる!とも思うが、自分に革命的なアイデアが思い浮かばないなら、まずは「型」として、この形式に沿って書くと、多数の観客に受け入れられやすいですよという親切なガイドラインに過ぎない。3幕構成、起承転結に十分な耐久力のある「設定、キャラ、テーマ」がないとキツイですよということで、何を書けばいいのかというヒントにはならないので、ゴールの見えない試行錯誤が続くことになる。

そこで、何かストーリー系ではない、他のジャンルで都合よく、この3幕、4幕構成に必要な検証できる材料はないものか?
数学の公式のように、別の言葉でヒントを補完できないだろうかと考えました。

映画・ドラマと同じく「時間の流れ」を鑑賞する近いジャンルは音楽。

クラッシックで3幕、4幕構成というと、バロック音楽のソナタ(sonata)形式が思い浮かぶ。
音楽なので、物語にはない「テンポ」という要素が表現できるため、ソナタは基本形式「緩−急−緩−急」というように「穏やかな要素」と「緊張要素」を交互に展開することで、持続的に音楽への興味を引き続ける。

さらに細かい形式を加えると、

ソナタ4章の構成
1、ソナタ形式 章内3幕構造(2つの主題提示、展開、再び主題提示)
2、1と似て非なる緩急ある展開(変奏曲)
3、1と同じトーン(テンポはややゆったり)
4、同じ旋律が繰り返される(ABAB)

となる。これに脚本や小説の要素を加えると、以下のような解釈はどうか?

4章の構成
1 ソナタ 3幕構造(2つの主題提示、展開、再び主題提示)→ベース世界の提示、テーマ提示。
2 1と似て非なる緩急ある展開(変奏曲)→日常の変化・伏線、変化あるその後の展開、困難な状況
3 1と同じトーン(テンポはややゆったり)→変わってしまった日常、二度目の問題
4 同じ旋律が繰り返される(ABAB)→テーマの回収、真相、追いつめる

かなり漠然としているが、ストーリーに必要な質感は感じられる。

これを、さらに具体的なミステリードラマ・映画の2時間サイズ脚本に落とし込むと

第1章 S1~30 事件発生(全ての要素がここに詰まっている、テーマは提示)
第2章 S30~S70 次の問題(容疑者が複数出てくる、推理と裏切り、伏線、ミスリード)
第3章 S70~S110 容疑者 第2の事件(徹底的な証拠、トリックの全貌)
第4章 S110~S130 (犯人の捜索逮捕と伏線軸の本線回収)


という事になる。音楽的な緩急の要素を創作時に当てはめていくと、ベテラン作家のテクニックである「思わず読み進めてしまう」「1行1行かみしめて読む」ような、テンポ、リズム構成のヒントが発見できないかと思っている。

さらに現在の音楽の流行を追うことで、4幕構成を発展させたルールのバリエーションが発見できないかとも思う。

Jポップの基本構成は長らく
「Aメロ、Bメロ、サビ」 
3構成。このバリエーションで語られた。

現代の主流は「Aメロ、Bメロ、Cメロ(サビ)、大サビ」の構成。

物語では「起・承・転・結」で言う「転」に「結」の要素を入れて盛り上げ、さらに最後は徹底的に盛り上がるということか。 現在配信が主流の音楽ビジネス。曲を頭から聞いてくれることが期待できない、曲のどの部分が客に届くか分からないので、「印象に残る部分を増やす」、「接触面で確実に感じさせる」手法が増えてきている。現在ヒットしている映画、ドラマ、小説は、自然と「転」の部分にも感動要素を盛り込み、ラストには「キャラ、テーマ、イベントで一番書きたかったこと」を怒涛のように盛り込むことで、「つまみ食い読み」、「予告釣り」向けにアップデートされた構成で作られて来ているのではないか?とも感じてます。

個人の体験量では賄えないエピソード数をコード進行のように分類し、複数の作家のストーリーをAIで再構成してから、セリフの上手いキャラ作家が書き始める時代がもう来ているように思います。

と、メモ的に記しておきます。



ドラマ企画100本目指します!