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縁も所縁もなかった家業というものに関わってしまった話(マスオ型アトツギ)

はじめまして、私は妻実家の零細企業で奴隷活動をしています。
従業員は数人しかいない会社で、一応後継者として家業入りして1年が経ちました。

私は、四国の人口7万くらいの町で生まれ育ちました。汽車が1時間に2, 3本はある県内2位の中核都市で、のびのびと穏やかに過ごしていました。

夕日を見れば標高何百メートルの山々があり、その手前には時期によって表情を変える田んぼが敷かれています。朝日を見ようとすれば、枯れた松と少し濡れた雑草を嫌がりながら松林を抜け、その先には散々見飽きた浅い海がある。

田舎といえば田舎ですが、歩いて小学校まで行くことができるし、自転車に乗れば中学高校まで一人で通うことができます。部活帰りにローソンへ寄って買い食いをして帰るなど、ごくごく普通の田舎暮らしをしていたと思います。

そんな私が、縁もゆかりもなかった家業というモノに関わってしまった話を書き残しておきます。駄文7000字です。

ふつうの一般家庭での育ち

両親ともに高卒で、父はサラリーマン、母は専業主婦という形態です。妹と弟がいます。妹とは20年くらい喋っていません。弟は13歳下で今は高校生です。子供のころは二人兄弟でした。

祖父母2人は祖父母になる遥か前に他界しており、現存する唯一の祖母は何度か死にかけており、視力を失い、脚も悪く、早く死にたいと言いながら十数年は生きています。

子どものころ

そんなふつうの家族構成の家で育ちました。
小学生のころは、父が家に帰ってくるのが嫌で嫌で仕方ありませんでした。

「今日の機嫌はどうだろうか」
「こうやって返事しても大丈夫だろうか」
「ご飯を食べるペースはこれで大丈夫だろうか」
平和な日はこんなことを考えながら過ごしました。

普通の日は、父が母に八つ当たりをし、一挙手一投足にいちゃもんをつけます。飯にケチをつける。テレビの音量を変えるだけで怒鳴りつけ文句を言う。酒のつまみを寄越せと怒鳴る。酒を注げと怒鳴る。机をしばいて大きな音を出して威嚇したり、一升瓶を外に投げつけて割れたりします。

もちろん、長男である私にも同じです。でも妹にはしませんでした。今思えば第一子が嫌いだったんでしょうね。
とにかく怒鳴り声や一升瓶の割れる音をBGMにして晩御飯を食べて過ごす日々でした。

でも毎日というわけではありません。父の機嫌によります。機嫌がいいときは明るく歓談しています。笑いもあります。円満な家庭のワンシーンそのものです。でもそれは束の間のひとときです。何かの拍子に怒りスイッチを押してしまうと、また恐怖の時間が始まります。なので、機嫌のいいときでも地雷を踏まないか恐る恐る過ごしていました。

でも別に毎日怯えて暮らしていたわけではありません。だんだんと慣れてきます。怒鳴られることにも慣れます。怒鳴られる前に怒鳴られる心構えができるからです。常に怒鳴られる心の準備をしています。そうして人格形成されていきました。自己肯定感なんか育つわけないですね。

もちろん、やりたいことをやりたいと言うことは無いし、欲しいものを欲しいと言うことも無い。そもそも、やりたい、欲しいと思うこともありません。したがって満たされることはありません。不幸せな人生の作り方です。

でも暴力はギリ受けていません。たぶん。

少年野球の監督に試合中に、往復ビンタされたり背負い投げされたり金属バットで殴られたりしていました。それを親は笑って見ていました。

家族で海に遊びにいったときに父に反抗して泥を投げたら、沖の足の届かないところまで連れていかれ、放り投げれられました。ほぼ泳げなかったので溺れて死ぬかと思いました。痙攣でもしたら普通に溺れて死んでました。殺害未遂、もしくは未必の故意ですね。やはり第一子のことが嫌いだったのでしょう。

あるときは、風呂場に連れていかれ、お湯を張った浴槽に顔を沈められて頭を押さえつけられたりしました。水泳を習っていたのだからこれくらい大丈夫だろ、と言っていました。大丈夫でした。父は正しい。

今思い返せば、殺害未遂では?と思うのですが、家庭内では父が絶対ですから関係ありません。家族とはそういうものです。

でも多分、どこの家庭もそんなもんです。↓実例

ネットで調べたらもっとひどい目に遭っている人たちがたくさんいます。私は別に、親友が自殺したわけでもないし強盗殺人の被害にあったわけでもないし戦場に棄てられたわけでもないし性被害に遭ったわけでもないです。比べ物にならないくらいいいです。

ざっと書き散らしましたが、以上のようなふつうの育ちです。
いろんなふつう↓

学生時代の学び

そんな人間が間違って大学に進学してしまいました。Fランではなく地方の中堅国立大です。とんでもないです。本当に間違えました。貧民は貧民の世界で生きるべきでした。自分が生まれ落ちた社会階層を飛び越えてはいけません。

大学時代、周りの人たちは親が公務員だったり、聞いたことのある会社の勤めだったり、お金に対する感覚とか生活に関する感覚が全然違いました。

そういう人たちはさぞ、親に殴られたりして生きてきたんだろうなあと思ったら、家族と喧嘩するくらいに仲良かったりしてびっくりしました。子供は親のストレス発散のために存在するんだよ?って言っても全然伝わりませんでした。

私は大学"入学後"に親から奨学金を借りろと言われたので、借金をして通っていました。毎月5万円を借りていました。僕が親に騙されて借金させられた一方で、自分名義の口座に親がいくらか入れてくれていて、好きに使っている人とか普通にいました。少なくなってきたら知らぬ間に追加されているそう。どういうことか理解できませんでした。

数学や物理を勉強するための学生団体に参加したとき、そこには旧帝か東大落ち早慶みたいな連中がたくさんいました。話をすると頭もいいし、学問に積極的だし、人当たりもいい、ひと癖もふた癖もある人たちでした。

総じて文化資本経済資本ともに豊かで、父が大学教授だとか、大企業の役員だとか、10歳までは海外で育ったとか、よく分からないフィクションの話を聞いた記憶があります。普通の育ち、と自認していたとある人は、江戸時代から続く先祖代々医者の家系で、高校は御三家(ナニソレ)出身、そこでは最底辺だったので惨めな思いをしたそうです。かわいそう。

程度に差はあれども、こういう人たちと当たり前に接してしまったことが、私にとって貴重な経験でもあり、最大の過ちだったと思います。

今でいうところの「親ガチャ勝ち組」の人たちが、SNSで見かけるだけの存在ではなく、言葉を交わし、議論をし、じゃれ合うことができる存在だと知ってしまいました。
スマホで眺める写真や文章だけの存在ではなくて、目が二つ付いていて鼻と口が一つずつ付いていて体温のある生き物なんだと認識してしまった。

これまで親に自己肯定感を殺されたり心身を殺されかけたりして生きてきて、その上で曲がりなりにも努力してやってきて、運よく当たりも引いた結果、ようやく辿り着いたその場所に、潤沢な経済資本と豊かな文化資本に囲まれて生きてきた人たちが涼しい顔をして立っている。

そんな絶望的な事実を学び得た大学時代でした。
(だいたい皆が経験することでもある)

「家業持ち?ボンボンかよ」

上記のような経験を経て、「世の中生まれ落ちた時点でほとんど決まってるやんけ。努力次第でなんとやら、と洗脳を受けてきたけど、クソじゃん。努力だけじゃねーだろって反発したら他人のせいにするなと怒られたのは何だったんだ」となり、

ましてや、いいところに生まれた連中が「私は苦労して努力して今の成果や立場を得ました」みたいな顔をして呼吸をしているのを見ると腹が立つくらい、歪んだ反骨精神が醸成されていきました。

そういう文脈でいくと、家業持ちなんていうのは、"いいところに生まれた連中"であり、私にとって"憎悪の対象"でしかなかったわけです。

大学時代の私は「家業持ち?ボンボンかよ」と心の底から嫌悪して吐き捨てていたと思います。(今となっては天に唾するようなもの、、、)

義実家へ家業入り

時が経ち、そんな私が家業持ちと結婚し、後継ぎ?になってしまいました。

家業に入ってみると現社長(義父)というのは、私がイメージするような、いいところに生まれた連中の一人であり、残念ながら典型的な世襲二代目ポンコツ無能社長でした。

ゴミ屋敷工場

継ぎに来た会社は、従業員数人の絵に描いたような下請け零細企業で、工場は倉庫。というより、ゴミ屋敷でした。

工場入り口の光景

・工場に入ってすぐ右斜め前3mの場所に4m3程度のゴミ山がありました。
・10年前は最近、という時間感覚の世界なので、20年前の資材が当たり前の顔をして在庫棚に並んでいました。
・社長が、これは売れるぞ!と意気込んで10年以上前に海外から何百万円分の製品を仕入れて、全く売れず(売らずに)に何百万円分が残っていました。
・社長が、これは売れるぞ!と意気込んで20年前に特注で10万枚を一気に仕入れて、全く売れずに棚下段に10万枚が残っていました。
・何かのときに使えるかもしれない。と言って置いてある使い古した段ボールも、そこら辺に大量に転がっていました。
・在庫棚から取り出したであろう長物が、品名も分からない割れた状態でごちゃごちゃになって大量に放置されていました。
・既に廃番になっている20年以上前の資材が大量に残っていて棚を占有していました。

さらには、これらを捨てようとすると、社長が「何かに使えるかもしれないのに、なぜ捨てる?君はモノを大事にしないんだね」と怒って捨てることを拒みます。

20年間、埃をかぶってゴミ山に埋もれている備品を捨てるだけでも「それは大事なモノ」「それは人から借りているモノ」と大反対を受けるとは思いもしませんでした。
(人から借りたものや大事なものをゴミ山に埋もれさせる奴にも人権あるの?)

さらには棚にある埃が被っている使えない段ボールを処分していると、「その空いたスペースに何を置くの?笑」と小馬鹿にされる始末です。
挙げ句の果てに、あの段ボールは大きいから何かのときに使えると主張。
それで出来上がったのがこのゴミ屋敷だろうと思うのですが、当人はゴミ屋敷だと思っていないので、困ります。そんな状況でした。

経営が下手とかではなく「ない」

天才肌の人は部屋が汚かったり、片付けができないという謎イメージがあります。もしかしたら社長も実は天才かもしれません。
そんな期待を抱く間もなく、典型的なポンコツ社長であることが判明していきます。

報連相ができない。責任を取らない。他人のせいにする。予定を立てられない。アポを取らない。納期を設定できない。他人や他社をバカにする。取引先と交渉ができない。質疑応答ができない。日本語が通じない。小3レベルのグラフが読めない。自意識が高い。備品購入ができない。無駄な買い物はする。収益の内訳が答えられない。コスト計算できない。現場を確認せずに設計して制作を始める(結果、作り直し)。価格交渉せずにひたすら愚痴を言う。良好な関係を築いている取引先が無い。
あるあるすぎて書くだけ無駄ですね。だいたいそんな感じです。

社長(義父)は報連相もできないので新卒レベルですらなく、日本語も通じないのでアルバイト未満のレベルです。会社経営も地元の高校の文化祭よりレベルが低いです。

https://youtu.be/ozZfcj6rEI8?si=d8-wEwVHqROZ9PKt

下請けなので、FAX1枚が送られてきて、内容通りのモノを作ったらお金が入ってくる。 大企業で言えばイチ製造部門にすぎない。元受けがいる限り、自助努力で成長することもなければ、失墜することもない。(実際に成長も失墜もしてない)

今後、危機意識のない会社は潰れるしかないと中川政七氏が言っていたことに、激しく同意します。現社長がいる限り、うちも潰れるしかないと思います。それくらい危機意識がありません。皆無です。

下請けなので営業努力は必要ないし、製造は内職さんが工夫してやってくれる。生産管理は従業員がやってくれる。

そんな状況でも社長は自分が凄腕経営者だからうまくいっていると思っていますから、社長にとってわざわざ整理整頓する意味は分からないし、生産計画が必要とも思っていません。在庫管理が必要とも思っていません。なので出庫記録を残さずに勝手に材料を持っていく、結果在庫が合わない。そんな状態です。

現在の生産管理システムの課題について話をしていたときに、
「昔はどうしてたんですか?紙に書いてたんですか?」と聞いただけで、
「そんなもん必要ない!在庫数なんか目で見て数えた方が早い!何か間違っとるか?」と怒鳴って教えてくれました。実の父のようです。

こんな体制で40年以上やってきており、売上も20年間ほぼ横ばい。社長は口あけて待っていたら関係者が餌を与えてくれるようなものです。
あらゆるリスクは放置されており、問題や課題も認識できておらず、自分のやりたいことをやるためなら生産を止めてでもやる、そんな社長が君臨しています。

令和5年「これからはスマホの時代だ」

そんな実情にも拘わらず、社長自身は自分のことをイケてる経営者だと思っていて、持論を述べたり、ビジネスってやつを教えてくれたりします。

最近は"新規事業"を考えているそうで、

「これからはスマホで買い物をする時代だ。通販で新商品を伸ばしたい」

といい、webサイトもリニューアルしたいとのこと。じゃあGoogleアナリティクス入れてはどうか、と提案したらなぜか却下されました。

GA不要の理由

理由:「レンタルサーバーの解析見たことあるけど、僕は気にしてないよ。一つにホームページリニューアル一切してないのに来る人減らない
見に来る人と、買い物をする人とは一致しない」

ちょっと何言っているのかよくわかりません。データは必要ないみたいです。経営者としての長年の経験と直感でひと勝負するのでしょう。そのやり方で今まで散々失敗を重ねてきたにもかかわらず。(これは売れるぞ!と言って大量に仕入れて、営業活動をしないので当然、売れない案件の残骸があちこちに。仕入れただけなので失敗ですらないですが)

また別の日にweb販売についてコメントを求めらたので、
「まず年間売上3000万円を目標におくとして、単価2000円、CTR3%程度でいえばまずは月間数十万PVは必要ですね。現状5000PVとかなのでちゃんとテコ入れしないと厳しそう」と答えると、

「数字じゃない。人と人との繋がりや気持ちが大事なんだ。君は数字ばかり見ている。もっと人を大事にしないといけない」
と教えてくれました。ありがとう。数字も人も大事だぜ。

2023年の月別PV
ページ滞在時間

社長(義父)はNPC

ゴミ屋敷はもちろんボロ建屋です。梅雨の時期には雨漏りします。ずっと放置されています。修理してくれと言ってみました。

私「雨漏りしているので修理してください」
社長「外壁工事が必要で難しい、らしい」
私「技術的にダメですか?予算的にダメなのですか?」
社長「大掛かりな工事になるらしい」
私「見積もりはいくらですか?」
社長「大掛かりな工事になるらしい」

このように、いつもループして話が進みません。NPCです。ゲームでさえNPCに話しかけても物語は進まないのに、会社でNPCに話かけても仕事が進むわけがありません。

完全に他人事で、言われたことを横流ししているだけ。当事者意識が全くありません。すべての仕事がこのスタンスです。当事者意識が皆無です。困るのは現場です。でも社長は困りません。そりゃ知ったことではないですね。立派~~。

また、入社して半年以上、今後どのように身を振っていくのか説明もないまま、雑用だけをさせられていたので、「今のままだと何のためにこの会社に来たのか分からない。ざっくりとした承継計画を立てたい」と言ったときは、

「僕のときは~~(昔話)」←関係ない話
「潰しても潰さなくてもいい」←何の話?
「うちの収益の柱が何か言える?」←なんで知らんと思った?
「僕がいつ引退するかよりも、君の問題だ」←話し合いしないの?
「質問されたことがない」←何度もした。今、質問している

と、違う話をひたすら繰り返して最初の質問に何度戻しても話が進められませんでした。ダイバージェンス1%の向こう側へ渡らないといけないようです。

ヨソモノは都合のいい労働力

家業に入ってすぐに「畑の面倒をみろ」と私だけが言われました。
「今は祖母が畑をやっていて、僕も手術してから身体が悪い。畑をやってほしい」
と、言い方は優しかったですよ。

いいですか?
これを"私にだけ"言うんです。

私の隣に妻(社長の娘)が座っていました。何ならこれまで娘はずっと実家にいました。
その状況で、私にだけ、畑をやってくれと言う。

分かりますでしょうか、このときの気持ちが。

娘には言わず、婿にだけ畑をやれという。都合のいい労働力と思っていないとこうはならないですね。

畑仕事は力仕事だから男の君に言っている?今、祖母がやってるんじゃなかったか?もし婿じゃなく嫁だったとしても同じように言っているんだろう?
「息子は仕事で疲れているから君にやってほしい」と。

ヨソモノを召使いとしか思っていない。これはこの一族代々そうです。

他にも、「墓参りにも行ってないんじゃないの?押し付けるつもりはないけど、ご先祖様を大事にする気持ちは持ってほしい」と言ってきたが(それはいい)、私の家の墓参りに行けとは言わないあたりフェアではありません。ご先祖様を大事にする気持ちとは、彼のご先祖様だけ大事にする気持ちのことらしい。

結婚前には「もし苗字を相手の姓に変えるなら、子どもはひとり養子にもらう」と妻を通じて言われました。

子どもの気持ちは?僕らの意志は?

結局、私が妻の姓に変えたのでこの話は棚上げとなりましたが、社長の提案を受けて、子どもができたら一人は私の姓を名乗らせようと思います。
(と言ってやりたいが、子どもが絡む話なので当然そうは言えないし、そのつもりもないが、、)

とにかく私のことは労働力と種馬としてしか認識されていません。

このように、社長にはどう考えても対等ではない思想が根底にあって、不条理な要求を寄越してきます

とはいえ所詮、婿に人権なんかありません。ミツカン事件が代表的です。

まとめ

結局、何が言いたかったんだっけ?という感じですね。

私はDV家庭で育ったという自覚はありませんが、便宜的にDV育ちとします。(正真正銘のDV育ちの皆さん、すみません)

「DV育ちでひたすら耐え抜いて生きてきた結果、世襲二代目ポンコツ無能社長に奴隷として飼育されることになった」という、大変つまらない私の人生のお話でした。ほんとうにつまらない。

以上、義実家の家業に入って1年が経ったのでだらだら書いてみました。

なんかもっとこう、寛大な心で物事に向き合えるよう心を養っていきたい。来年はもっと明るい気持ちで明るい話をできるといいな。

浄化のため、私の好きな動画を置いておきます。

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