見出し画像

大分のおばあちゃんと西武新宿線の若夫婦

 僕の友人たちが何人も参加していたコミュニティが都心のある「イケている」街にある。それはいわゆるクリエイティブクラス的な人たちの集まりで、階級的にはともかく業種的には多様な人が参加していたのだけれど、少し前にそのうちの一人と話す機会があった。彼らは家族の概念を拡張するために、ある有名なビルの1フロアに住んで、共同生活を営み自分たちは「家族だ」と述べていた。血縁のない60人ほどが共同生活を送り、困ったときには助け合っているのだという。その人はこうやって、血の繋がりにとらわれず家族の輪を拡張していくことが、これからの社会の公共性のベースになるのだと目を輝かせて話していた。今の社会は、醤油が切れたときにコンビニエンスストアに買いに行くしかないけれど、昔のご近所付き合いのコミュニティのように隣の家に借りに行ける社会のほうがいいのだ、と。

 その人たちが暮らしているのはある有名な公園の側にあるビルで、僕と話していたときはちょうどその公園の再開発の問題が浮上していたタイミングだった。そこにはたくさんのホームレス生活を強いられている人たちが集まっていて、彼らが再開発で追い出させてしまうことが社会問題化していた。僕はその人に、少し意地悪な気持ちで尋ねた。じゃあ、その拡張家族の中にあなたたちの足元の公園から追い出されそうになっているホームレス生活を強いられている人たちは入れてもらえるのですか、と。もちろん、そんなことはなかった。

ここから先は

2,001字

¥ 500

僕と僕のメディア「PLANETS」は読者のみなさんの直接的なサポートで支えられています。このノートもそのうちの一つです。面白かったなと思ってくれた分だけサポートしてもらえるとより長く、続けられるしそれ以上にちゃんと読者に届いているんだなと思えて、なんというかやる気がでます。