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上白石萌音 河野万里子『翻訳書簡『赤毛のアン』をめぐる言葉の旅』について

   先日、息抜きに目の前の仕事とあまり関係のない本を読もうと考えて、しばらく前に入手していた『翻訳書簡『赤毛のアン』をめぐる言葉の旅』を開いた。これはちょっと(いや、だいぶ)変わった本だ。モンゴメリの『赤毛のアン』から印象的なシーンを選択して、その英語原文を上白石萌音が手探りで翻訳する。その訳文をベテランの翻訳者である河野万里子が読み、自分ならこうするとアドバイスをする、そして上白石は自分の訳文をブラッシュアップして返信する……といった往復書簡が収録されている。

 要するに上白石が『赤毛のアン』を素材にちょっとした翻訳の修行をする過程が収録されているのだけれど、これが意外な展開を見せる。


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僕はもはやFacebookやTwitterは意見を表明する場所としては相応しくないと考えています。日々考えていることを、半分だけ閉じたこうした場所で発信していけたらと思っています。

宇野常寛がこっそりはじめたひとりマガジン。社会時評と文化批評、あと個人的に日々のことを綴ったエッセイを書いていきます。いま書いている本の草…

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