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15日間、日本の旅|周庭

香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんは12月から1月にかけて日本を訪れました。香港の現状を日本の学生に伝えようと来日した周庭さんは、たくさんの友だちと出会うことになります。初めて訪れた関西での驚きや、友だちとの観光や忘年会、ゲストレクチャーの様子など、15日間の日本旅行の思い出を振り返ります。
◎翻訳:伯川星矢

御宅女生的政治日常──香港で民主化運動をしている女子大生の日記
第4回 15日間、日本の旅

この文章を書いている今、時刻は午前4時頃。日本からの飛行機が、ちょうど香港に到着したところです。わたしはこの15日間、日本を旅していました。今回はこの日本旅行についてお話ししたいと思います。

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▲着物をきたペコちゃん人形と

12月20日、大学で最終科目の試験を受けた後、わたしは大きなスーツケースを持って、バスで香港国際空港に向かいました。最初の目的地は関西です。わたしは立命館大学の上久保誠人先生の招待を受けて、日本の学生や留学生に向けて授業の中でお話する機会をいただき、わたしの社会運動の参加経験や、今香港人が直面している状況について話しました。

日本に行ったのはこれがはじめてではないのですが、実はこれまでは東京にしか行ったことがありませんでした。そのため、関西を訪問するのは今回がはじめてです。大阪でも京都でも、関東とは全く違う雰囲気を感じました。たとえば関西弁はこれまでバラエティ番組でしか聞いたことがなかったのですが、関西では実際に街中で関西弁が聞こえてきて、とても不思議な感じがしました。

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▲日本のスーパーマーケットが気に入りました

忘れられない思い出になったのは、留学生を対象にしたゲストレクチャーです。そのレクチャーには、タイ、インド、中国などの様々な国からの留学生が参加していました。わたしが英語で香港の政治状況を簡単に紹介すると、タイやインドの学生たちは熱心に自分の国の社会状況や、香港との相違点を話してくれたのです。母国のデモ活動に参加したことがあると言っていた人たちもいました。

ゲストレクチャーが終わると、立命館大学の学生たちが私をいろんなところに連れて行ってくれました。みんなで着物を着て京都の清水寺に行ったり、わたしの大好物の抹茶アイスクリームを食べたり。上久保先生のゼミの忘年会にも参加して、たくさんの学生に出会い、みんなから日本や関西のことをたくさん教えてもらいました。たとえば、とっても簡単でかわいい関西弁とか。

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▲みんなで着物を着て京都を観光

今回、日本の学生とこのような交流ができたことは、わたしにとってとても嬉しいことでした。今回日本に来たのは、日本の学生に香港の現状を紹介するという目的を持ってのことでした。でも、交流とは一方的なものではいけないし、政治関連のことだけにとらわれてしまってもいけないと思っています。たとえば日本の学生の好きな食べ物や、好きな曲、香港に抱いている印象、そういうものを知るだけでも、とても勉強になるのです。

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▲立命館大学の友人たちと

関西の旅を終え、新幹線に乗って東京に向かったのは、クリスマス当日のことです。クリスマスの夜は一人で新幹線で過ごすことになりましたが、全然悲しくはありませんでした。むしろとてもワクワクしていたのです。だって、生まれて初めて新幹線に乗ったのですから。出発する前に新大阪駅で駅弁を買って、席に着いたらすぐに食べ始めてしまいました。わたしは和食が大好きで、漬物から玉子、ご飯までみんな大好きなのです。夢中になって食べていたら、あっという間に食べ終えてしまいました。

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▲初めての新幹線で駅弁を食べました

翌日、倉田徹先生と倉田明子先生、そして香港中文大学の張イクマン先生と一緒に東京外国語大学に向かい、学生たちに雨傘運動や香港の現状について説明しました。雨傘運動のパートでは、金鐘(アドミナルティ)占拠区と旺角(モンコック)占拠区の違いについて、たくさんの話をしました。先生方が様々な理論で当時の状況を補足してくださいました。倉田徹先生は、香港と日本の比較も行っていました。

一つ、興味深いお話がありました。倉田徹先生、明子先生のお二人は、日本と香港の学生たちを対象に、「あなたは社会運動にどれくらい力を入れたいと思うか」という内容のインタビューをしたことがあるのだそうです。ここでいう「社会運動」には、インターネット上で自分の意見を表明して他人と討論することや、デモに参加すること、また逮捕されることなども含まれます。インタビューの結果、大半の場面で香港人学生は日本人学生よりも社会運動に熱心で、多くの犠牲を払うことがわかったそうです。

もちろん、政府のパフォーマンスや社会の雰囲気など、この結果が出た背景にはさまざまな理由があると思います。香港の状況は、日本とは全く違います。香港の政治問題を解決するには抜本的な改革が必要なことは明白ですが、日本はそうではないのかもしれません。わたしは日本の問題についてはまだ理解不足なので、これからもたくさんの先生方に教わりたいと思っています。

今回、東京でいくつかのメディアからインタビューを受けることができて、とても光栄でした。雨傘運動についてだけではなく、最近起こった立法会宣誓事件や、中央政府による法解釈事件についても取材を受けました。今年の香港は様々な出来事に直面することになります。行政長官選挙、返還20周年、行政長官候補者が民意を問わずに香港で故宮博物館を建設すると宣言したこと、香港衆志のメンバーと議員が台湾からの帰港時に愛国団体から襲撃されたことなど。わたしは日本の皆さんにも、引き続き香港の様子に関心を持ってもらいたいと願っています。「反中国」という点だけに焦点を当てるのではなくて、わたしたちが民主主義と自決の権利を求めて戦っているのだということを知ってもらいたいのです。

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▲旅で出会った日本の友だち

今回の日本への旅では、多くの日本人の友だちと出会うことができました。みなさんからさまざまなこと(特に日本語)を教わることができて、とても誇らしく嬉しい気持ちです。香港に戻った今、わたしはふたたび立法会の仕事に専念します。近いうちに行われる会議や、二週間後に予定されている政府による施政方針演説の準備があり、そろそろお仕事モードに戻らなければなりません(笑)。

(続く)



▼プロフィール
周庭(アグネス・チョウ)
1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政党「香港衆志」の副秘書長を務める。

前回:第3回 わたしの学校生活
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