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碇本学『ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本社会の青春』

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漫画家・あだち充の作品を通じて、戦後日本のサブカルチャーの中に見落とされてきた〈成熟〉の可能性を掬い上げる本格評論。
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『タッチ』の明青学園を再び舞台とした『MIX』​​(後編・最終回)| 碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。今回がいよいよ最終回です。 現在連載中のあだち充最新作『MIX』では、どのように「成熟」が描かれているのか、過去のあだち作品と比較しながら分析します。そして、愚直に「成熟」と向き合ってきたあだち作品を、いま私たちが見返す意味とはなんなのか、これまでの連載を総括します。 (前編はこちら) 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本社

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『タッチ』の明青学園を再び舞台とした『MIX』​​(前編)| 碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。 今回は、いよいよ現在連載中の最新作『MIX』を扱います。長きにわたるあだち充の魔画家人生の中で『MIX』はどう位置づけられるのか、過去のインタビューも振り返りながら考察します。 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本社会の青春 第23回 『タッチ』の明青学園を再び舞台とした『MIX』​​(前編)「明青学園を、もう一度甲子園に連れて

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「ゲッサン」創刊とあだち兄弟を彷彿させる『QあんどA』​​(後編)| 碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。 一種の「ループもの」のような結末を迎えた『QあんどA』。かつては戦後日本の精神性を独特な形で描いたとして評価されたこともある「ループもの」ですが、本作で描かれたあだち充なりのループからの脱却にはどんな意味があったのでしょうか。 前編はこちら。 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本社会の青春 第22回 「ゲッサン」創刊とあだ

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「ゲッサン」創刊とあだち兄弟を彷彿させる『QあんどA』​​(前編)| 碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。 今回は「ゲッサン」創刊号から連載を開始した『QあんどA』を扱います。「サンデー」初の月刊誌ということで新人作家の育成を狙う編集部の意向もあるなか、良い意味で「肩の力が抜けた」ベテラン作家による本作の特徴とはどんなものだったのでしょうか。 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本社会の青春 第22回 「ゲッサン」創刊とあだち兄弟を彷彿

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ヒロインたちの夢を叶えた男女入れ替わりの野球漫画『アイドルA』(後編)​​| 碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。 「ヤングサンデー」「ゲッサン」で2005年から不定期連載されている異色作『アイドルA』。主人公が男女入れ替わりながらアイドルと野球の二足のわらじで活躍するというデタラメな設定の本作が、デビュー以来の「あだち充劇団」の成立と発展を経て叶えてみせた歴代ヒロインたちの「夢」とは? (前編はこちら) 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦

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ヒロインたちの夢を叶えた男女入れ替わりの野球漫画『アイドルA』(前編)​​| 碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。 今回は「ヤングサンデー」「ゲッサン」で2005年から不定期連載されている異色作『アイドルA』を取り上げます。スーパーヒロインとその幼なじみが、男女入れ替わりながらアイドル活動と野球の二足のわらじで活躍するという荒唐無稽な設定の本作。その成立背景を、担当編集者のバトンリレーから辿ります。 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本社会の

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ゼロ年代における新自由主義の行方を描いていた『クロスゲーム』(後編)​​​​| 碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。 あだち充の現状最後の少年誌連載作品である『クロスゲーム』読み解きの完結編です。浅野いにおの『ソラニン』とも同時期の連載だった本作の底に垣間見える、2000年代前半の新自由主義的な時代性を捉え直す視点について検証します。(前編はこちら) 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本社会の青春 第20回③ ゼロ年代における新自由主義の行方を描いて

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ゼロ年代における新自由主義の行方を描いていた『クロスゲーム』​​(前編)| 碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。 あだち充の現状最後の少年誌連載作品である『クロスゲーム』読み解きの完結編です。『ナイン』以来のあだち充の「ラブコメ×野球」路線の集大成とも言える本作で描かれた主人公コウと青葉の恋愛描写の成熟度と、2005年の連載当時の文化シーンの空気感を振り返ります。 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本社会の青春 第20回③ ゼロ年代における新自由

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喪失を抱えるヒロインとその姉妹たちを描いた『クロスゲーム』​​|碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。 今回は、あだち充の2000年代後半の少年誌連載作品『クロスゲーム』のヒロイン・月島若葉の人物像を掘り下げます。代表作『タッチ』とは逆に、主人公の相手役姉妹が喪失を抱える図式で描かれた本作で、あだち充が『ナイン』以降の蓄積の上に見出した新たなヒロイン像とは? 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本社会の青春 第20回②喪失を抱えるヒロイン

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「あだち充劇場」の集大成としての『クロスゲーム』| 碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。 今回から、あだち充の現状最後の少年誌連載作品である『クロスゲーム』を読み解きます。消化不良のまま終了した前作『KATSU!』とは一転、新世代の編集者とのタッグで「逆『タッチ』」をコンセプトに始まった王道の恋愛野球漫画の成立背景とその作品史的な立ち位置を解説します。 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本社会の青春 第20回 ①「あ

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空虚な中心をめぐる物語としての『KATSU!』| 碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。 21世紀初頭に連載されたボクシング漫画『KATSU!』をめぐる分析の最終回です。主人公の亡き父・赤松隆介が物語における「空虚な中心」となった本作の成否を、現在公開中の映画『ドライブ・マイ・カー』など同型の構造をもつ作品群と対比しながら考察します。 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本社会の青春 第19回 ③ 空虚な中心をめぐる

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「ダメおやじ」の原型となった兄・あだち勉と父親の視線をめぐる物語としての『KATSU!』| 碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。 前回に続き、21世紀に入ってから連載されたボクシング漫画『KATSU!』を取り上げますが、本作からは従来のあだち作品にはない家族像の変化が読み取れます。漫画家・あだち充の「父」的存在であり連載中に他界した兄・勉と、平成不況による家族構造の変化は物語にどのような影響を与えたのでしょうか? 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本社会の

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選ばれた者と選ばれなかった者を描いた『KATSU!』|碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。 今回から、21世紀に入ってから連載されたボクシング漫画『KATSU!』を取り上げます。過去のあだち作品でサブエピソード的に取り上げられることの多かったボクシングに、ついに真正面から取り組んだ本作。連載中に兄・あだち勉の逝去も重なった「死と隣り合わせのスポーツ」に、あだち充はどんな思いで臨んだのか? 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦

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ネット社会を予見させる「超能力」を描いていた『いつも美空』|碇本学

ライターの碇本学さんが、あだち充を通じて戦後日本の〈成熟〉の問題を掘り下げる連載「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」。 今回は、世紀の変わり目の短めの連載作品『いつも美空』を分析します。SF×時代劇だった『虹色とうがらし』に続き、超能力少女たちを主役に据えた異色のSF×現代活劇として、あだち充としては息抜き的に描かれたとされる本作。荒唐無稽な作風ながら、のちのネット社会の問題への洞察を孕んだその予見性とは? 碇本学 ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本社

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