現役メガバンカーが「決算書の読み方セミナー」をやった話
はじめに
本記事は、現役都市銀行員である私が「決算書の読み方セミナー」の企画・広報・実施・満足度調査を行った結果を振り返る後日談である。
結果的に満足度100%を頂き、特にトラブルなく終えたわけだが、小さいセミナーながらに色々と考えて実施し、多くの学びを得たので、この記事を読んで頂いた方には包み隠さず共有させて頂こうと思う。
セミナーを行う目的
まずはじめに「なぜセミナーを行うことにしたか」を記しておこうと思う。闇雲に行っても意味がないと思うからだ。
私自身の話をすると、現在保育・介護・障害福祉等の「福祉経営を学ぶeラーニング」の開発・運営と、起業する個人様や資金調達や資金繰り等に悩む法人様の支援を行っており、これまでそのほとんどをオンライン経由で行ってきた。
そう、私は銀行でずっと行ってきた「対面での活動」を全く行っていなかったのである。オンラインの良いところは、私の様にマンパワーが足りない状況でも多くの方にリーチができる点であるが、やはり対面の様な一期一会感や、出会った人との信頼関係を結ぶことは容易ではない。
その点、対面での活動にはオンラインに比べ労力もかかり、リーチ数も少ないが、ターゲットをしっかり決めれば会いたい人と長い時間を過ごすことができ、信頼関係を結びやすいと改めて考えたためだ(この考えに至るまでにも対面で何名かの方にアドバイスを頂いたりという経緯もある)。
対面での活動の中でより効率的に、また自身の経験値として重要だと推察されるツールとして複数人の前に立ち話ができる「セミナー開催」という方法へたどり着いたのだった。
テーマ決め
やることが決まったら、テーマを決めることにした。これについては正直ほとんど迷いはなかった。なぜなら、今回の一連のフローの中で、最も難しいと考えていたのが「集客」であるからだ。
今回は私が人に話す中で「最もターゲットとなる市場が広いテーマ」にすることにした。個人的には「福祉経営を学ぶeラーニング」に興味を持って頂けそうな方々に福祉に関する情報を発信するというのが理想である(現在はこれをYouTubeで行っている)が、「自分がやりたいこと」と「周りが求めること」は違うことがある、というのは残念ながら現実でもある。
今回、対面では初のセミナー開催という事で、より限定的な広報活動(エリアや日時等)が想定されたため、より興味を持ってくれる方が多いと考えられるテーマである「決算書の読み方」をチョイスした(リサーチを厳重にしたわけではないが、最近本屋でこういった類の本が平積みになっているのをよく目にすることから需要を確認した)。
有料?無料?
これについても特に迷いはなく、私の中では「無料一択」であった。
なぜなら、セミナー開催が目的ではないからだ。セミナーはあくまでも人と出会うための手段。個人的に、有益な情報を提供するかどうかは有料無料にはあまり関係ないと考えている(私もこれまで多くの有益な無料セミナーを受けたので、有料のハードルがいかに高いかという事を実感していた、という事もある)。
会場はどうする
セミナーの内容が決まったら、次は会場である。自身が理事を務める保育園の空きスペースを使う、等も考えたが、よく考えればいくら私が大手銀行所属とはいえ、無名企業が主催のセミナーに参加すること自体が一つのハードルである。それに加えて会場まで得体の知れない場所だった場合、そのハードルは更に高まるだろう。
会場は市の施設をお借りすることにした。この選択は良かったと思う。結果的に市関連の職員の方も参加者として来て頂くことになり、良い出会いの一つとなった。
オンラインも繋げる?
次に考えたのは「せっかく実施するならYouTubeでオンラインと同時開催する?」という事である。これは当初から考えていたことであるが、自身のSNSでセミナー開催の旨を発信した際「オンラインなら視聴したい」とお声を頂いたことでより検討に力が入った。
しかし事務局とも相談の上、結果としては「オンラインとのハイブリッドは実施しない」という結論に至った。なぜか、記載しておく。
問題となったのは「オンライン・オフライン双方の受講者の満足度」であった。自社でハイブリッド型で実施した場合、オンラインでの視聴者へ適切な音響環境を整えること、オフラインの受講者の集中力の妨げにならないことの確証が掴めなかったためだ。
この辺りはもう少し知見を蓄えて再挑戦したい気持ちもまだあるが、現時点では「対面での出会い」という目的に立ち返り、オフライン受講者の方を最優先に考えようという結論に至った(後悔はない)。
広報・集客
会場を抑え、いよいよ今回最大の不安な部分である「集客」に移った。ただ、今回については自分の中で一つの指標を作りたいと考え、チラシによる法人向けのポスティングを中心に行った(実際ポスティングてどうなの?というのを検証したかった)。
チラシについてはcanva(有名なので知らない方はググってみて)で何パターンか作成し、第三者の意見をもらって選定。チラシ上のQRコードから、ホームページの申込フォームへ飛べるように設定。結果として今回の申込の大半はこのチラシ経由となった。
それ以外だと、セミナー告知ができるサイトに2つほど登録したが、想定通り対面という事もあって申込を頂くことはなかった(オンライン開催なら有効なツールかもしれない)。
結果として、ポスティングのエンゲージメント率は0.4%(250枚配って1名参加。テーマによって異なると思うので参考にはならないとは思う)となり、想定よりは確率が高かったものの、労力を考えると今回の様に小さいキャパの会場での開催では有効という結果となった(参加者のほとんどが経営者・役員の方だったことからも有効な手段の一つであることは確認できた)。
ポスティングに加えて以前からお知り合いの経営者の方々にも参加頂き、幸いにも会場はイイ感じで埋めることができた。
他にはない工夫㊙
当日の体制は私と事務局1名。先に会場入りし設営を行い、受付、実施となったのだが、今回は新たな試みとして他のセミナーでもあまり行われていない工夫をしてとても良かったので特別に共有させて頂く。
一つ目は「LINE公式の活用」だ。通常の無料セミナーだと参加者からの質問は最後に纏めて受け付けることが多いが、今回はまず手元資料としてお配りしたQRから、あらかじめ用意しておいたLINE公式を友だち追加して頂き、そのLINE経由でいつでも質問を受け付ける、という制度にした。こうすれば参加者は手を挙げる必要もないし、事務局もタイムリーに(あるいは時間調整のために)質問を拾ってその場で疑問を解消できる。
後述するがこのLINEリッチメニューにアンケートの回答リンクもつけており、そこから参加者全員に回答を頂くことができた。
二つ目は「セミナーの目標設定」だ。私自身、いかに有益な情報を頂けるセミナーに参加しても「ふーんそうなんだ」と納得して次の日には忘れてることが多々ある。そこでセミナーの最初に「このセミナーを受けた後に何ができるようになるか」を明示した。具体的には「90分後の目標は損益計算書と貸借対照表が読めるようになること」といった形である。
アンケート収集と結果
無事時間通りにセミナーも終わり、前述の通りLINEリッチメニューを活用したアンケートフォームから参加者全員にアンケートに回答して頂いた。
結果として100%の満足度を頂くことになったばかりでなく、セミナー後に居残りで具体的な相談迄頂くことになった。
実際にビジネスにつながるかはともかく、大切な会社の情報をお話頂いた上で真剣に相談頂く、という少なくともオンラインではありえない「信頼関係」を築くに至ったことは、大きな成果であると言えるだろう(他にもセミナーのスライドを沢山写真に収めて今後の学びとしてくださる方もいて、ビジネス抜きにやってよかったと感じた)。
今後に向けて
アンケートでは「次回テーマ」に関するご意見も頂戴し、「もっと初心者向けのテーマ」と資金調達等「もっと専門的なテーマ」どちらの声も頂いた。ターゲットを広く設定した分、参加者の方のそもそもの知識にバラつきが出た結果であると推察される。
今後はターゲットを絞ってより満足度の高い内容を求めていくか、若しくは同様の内容を他地域で行うか、色々と迷うところではある。イベント開催はそれなりに大変であることもよく分かったので、その辺りは自身の状況(参加して頂いた市関係の職員さんが来年度のセミナー講師に推薦すると言ってくださったので、そのように外部の方が環境を整えてくれると楽で良いなと思いつつ)も見ながら考えたい。
最後までお読み頂きありがとうございました。「セミナー開催」はこれから起業を考えてる人や、起業したばかりの人にもおすすめな手法であることがお分かり頂けたかと思います。ちなみに、今後の無料セミナー情報の発信や財務無料相談は引き続きLINE公式から受付しております。
無料ばかりで恐縮ですが、良ければ友だち追加よろしくお願いします。
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