レモネード【小説】第2話
「ただいまー。お母さん、イモ、置いとくよー」
るねの家はてんぷら屋をやっている。魚、イカ、イモが人気だ。通はモズクや紅ショウガのてんぷらも頼む。しっとり触感で、店頭でソースをかけて食べることもできる。客は近所のおばあひとりだった。
「あんたそんなに急いでどこにねー?」
「先生のとこ!」
「ちょっと、あんた!」
イモを棚に半ば放り投げ、鏡で髪を整えると、るねは行ってしまった。手を粉まみれにした母のるりが調理場から顔を出す。
「もう、あの子ったら」
「いいじゃない先生のところ