わぴあインタビュー(16)株式会社ジャクエツ 白井 光洋さん
-------白井さまの自己紹介をお願いします。
株式会社ジャクエツの白井です。現在は、ジャクエツのパブリックスペース課に所属しています。幼稚園・保育園以外の施設、例えば、わぴあのような複合施設や商業施設、スキー場など様々な施設の遊具設計等を専門にやっている部署で業務をしております。
-------株式会社ジャクエツの紹介をお願いします。
株式会社ジャクエツの主な業務として、幼稚園・保育園の教材、遊具の設計・製造、園舎の設計等をおこなっております。また、最近では、幼稚園・保育園の園舎のリノベーション工事もしております。本社は、福井県敦賀市にあり、全国には68店舗の営業所を構えております。
クレヨン1本のコンセプト設計から始まり、園舎の建替えなど幅広い業務に携わることができます。幼稚園、保育園などの子ども施設に関しては、遊具の企画立案、提案、設置導入までの流れをワンストップできるような仕組みを目指しています。
また、弊社は、日本全国の約7割の幼稚園・保育園と何かしらの取引があり、所沢にも店舗があります。こうして多くのお客さまとお付き合いできるのも大変ありがたく思い、対面で顔を合わせながら商品づくりや新たな企画を作ることを意識しています。
-------総合児童センター内の「わぴあタワー」のコンセプト・特徴について教えてください。
SPC(わぴあを建設・運営するために設立された特別目的会社)で作られたあそび場のコンセプトが「細かなことにしばられることなく、自身の発想で様々なチャレンジが出来て、子どもたちや保護者が集える環境を整備する、意欲を喚起する遊環構造」で、SPCからはこのコンセプトを実現して欲しいというミッションをいただきました。
弊社のコンセプトとしても、ただ楽しい・安全だけでなく、子どもがあそびを選べる・考える、コミュニティが生まれるということを踏まえながら、わぴあタワーを企画しました。また、あそびを通じて、身体面だけでなく、心理面にも影響を与えられるような遊具づくりを心掛けました。
わぴあタワーは迷路状であるため、ただ単に登るというルールがありません。子どもたち自身で、遊び方・登り方を考え、ルートを探すことで、頂上へたどり着いたときに達成感を得られるように、2階まで突き抜けるような構造を提案しました。そのためには、回遊性が大切なため、一歩通行ではなく、様々な導線を考えながら設計をしました。今回の総合児童センターへ設置したわぴあタワーは、弊社で設計した遊具の中でも特に大型な遊具になりました。
あそびの中で、コミュニケーション、想像力などの非認知能力といった机に向かって勉強するだけでは身につかない力が養えるとうれしいです。
-------「わぴあタワー」の導入にあたり、苦労したこと、工夫したことなど教えてください。
わぴあタワーのような大型遊具を設計するにあたり、建設会社、設計会社様と多くの打ち合わせをしました。限られた空間を、ダイナミックに活用するために吹き抜けを作ったことで、室内であっても開放感を出すことができました。わぴあタワーは、建設会社、設計会社の皆さまの協力がなければ実現できなかった遊具だと思います。
一般に、遊具は地面に基礎を打って建てるものですが、わぴあタワーは建物と接続している遊具なため、工程に多くの時間を要しました。皆さまのご協力のおかげで、建物と一体化した遊具になりました。
また、わぴあタワーを分解した1つの部品が約300kgもありましたので、室内への搬入作業も非常に大変でした。今回の搬入に際して、室内で小型のクレーンも使用しました。大きなトラブルはありませんでしたが、今振り返ると、現場は四苦八苦しながら作業をしていたと思います。
公共施設においては、これほど大きな遊具を設置する機会がほとんどなかったですね。建物そのものを遊具にすることは稀にありますが、わぴあタワーほど大きな遊具を建物内に設置することは事例として少ないと思います。
-------「わぴあ」は、和光市初の公民連携事業ですが、公民連携についてどのように思いますか。
PPP事業(公民連携事業)は、SPCが官公庁と連携を取りながら進めていくものでありますので、大変苦労もあるかと思います。しかし、民間企業のノウハウを生かせることは、市民にとって嬉しいことだと思います。
行政機関の力だけでは、実現できないことやしばりがある中で、民間企業がフットワーク良く、運営を柔軟にできることは非常に素晴らしいと思います。また、画期的かつ先進的な新しい取り組みをしているのもよく見受けられるので、弊社も積極的に参画していきたいと思います。現在でも、遊具の調達業者として参加してほしい、との声もいただいています。
-------白井さんの影響が大きかったあそびについて教えてください。
弊社では、「あそびの環境をデザインすることで、未来価値を創造する」、というミッションを掲げております。私は、遊びについて、幼少期と大人になってからの2軸で考えを持っています。
当時、子どもの頃は木登りが大好きでした。理由としては、わぴあタワーのようにルールがなかったからだと思います。自分自身でどのように上まで登るかを考えて、足のかけ方や木から落ちないように工夫をしていました。様々なことにチャレンジしてわくわくする気持ちや、考えて安全を確保するのが楽しかったですね。木登りに似たような感覚のクライミングウォールは、今になっても楽しいですね。
私の中で、あそびの定義は、熱中することだと思います。やらされないこと=熱中、楽しいことだと思います。この考え方を持つと、仕事もあそびの感覚になることがあります。ですから、日々の仕事の中でもあそび心を持つことを忘れないようにしていきたいですね。
-------将来こういったあそびはどのように変わっていくと思いますか。
昨今、川あそび、水遊び、木登りなどの自然あそびが極端に減ってきていると思います。やはり、自然あそびには、危険が伴うので親御さんが心配することも多くあるのではないかと思います。
一方で、弊社の遊具開発では、自然あそびに重点を置いています。もし、自然環境の中で遊べないのであれば、自然あそびの要素自体を遊具やあそび場に盛り込んでいきたいと考えています。楽しいを考える、あそびそのものを考える、という行為が現代のあそびには少ないと思います。ブランコやゲームなど、答えが出ているあそびが多いので、自然あそびであれば、自身で考えることが多くなると思います。
弊社でも、遊具だけでなく空間までに工夫を凝らして設計をしています。遊具の素材も鉄や木だけでなく、石のものも開発をしています。自然素材に触れ合うことが大切だと思いますし、石は永久に残るものですので、子どもたちの記憶にも残るのではないかと思います。子どもの頃に、考えて、創意工夫をして遊んだ経験が大人になった時に生きてくるのではないかと思います。
-------市民の方へメッセージをお願いします。
率直に、和光市民、近隣の方々は羨ましいですね。総合児童センター、温浴施設などがあるわぴあ全体では、あそびだけでなく、学びの場もあると思います。わぴあは、多くの方々との交流が生まれ、コミュニティを作る拠点になっていくと思います。そのような施設に、弊社が手掛けたわぴあタワーを導入できたことは大変光栄に思います。子どものみんなには、いっぱいチャレンジして遊んでほしいですね。
また、子どもたちが大人になった時に、わぴあタワーを思い出してもらえるような遊具になったらさらに嬉しいです。わぴあは、子どもだけでなく、お年寄り、親も楽しむことができる空間です。たくさん遊びに来てくれたら嬉しいですね。
(聞き手:一般社団法人和光市広沢エリアマネジメント 谷田貝 翔)
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