自分<赤ちゃんになったとき
朝、電話が掛かってくる。美容院からである。予約の時間をとっくに過ぎていた。平謝りで別の日に変えてもらった。
育児休業に入る前に、美容院の予約をしていたことを、すっかり忘れていたのだ。
育休を始めると、頭の中が子供中心に切り替わってしまっている模様。スケジュール帳を開き、過去の自分が、なぜこの日に美容院を入れたのか確認する。確かに、妻が休みの日だ。
この日、午後から名古屋に用事があり、頼まれていたボランティア活動の打ち合わせに行くのだが、なぜか緊張感に欠ける。睡眠は取れているのに、だるさ眠気。まだ乳児の扱いに慣れていないのだろう。
2016年1月25日 イクメンの僕29歳 長男0歳4ヶ月 妻29歳
こんな日記が残る1月のこと。この時、息子は、0歳4ヶ月になる。妻は、産休明けの1月から職場復帰し、僕は会社を育児休業で休みをとった。息子と僕、この1月の半ばから本格的にイクメン生活を始めた頃のことであった。
生活の変化は、僕の脳に大変な混乱を呼んだ。混乱とは、物忘れであった。美容院の予約、頼まれていたボランティアの約束など数々。
実は、育休直前まで妻が里帰りをして、9月から12月まで僕が独身に戻っていたような一人暮らしの生活があった。そこから、1月になり急に赤ん坊を育て、日中を2人でいることに。このような生活にがらりと切り替わっていた。育休直前は、仕事を引き継ぎ、猛烈に多忙であった。
例えば、昼寝をして、ふと起きた瞬間に、今周りに誰かいるか、分からなくなった。過去の記憶と現在の状況がつながらない。いわば、自分を忘れた状態というのがあった。
言い換えれば、普段の、いわゆるルーチンワークに、どれほど家モードや仕事モードを支えられているか気づく。平日は仕事、土日はこうするという過ごし方が、生活の安定を保っている。明日から仕事で憂鬱というのも、正常なルーチンになる。一方、それが平日土日の区別なく息子の世話にかかりきりになると、曜日感覚や時間感覚が鈍化してくる。
そして優先度も、劇的に変わった。自分のことより、息子である赤ちゃんのことを優先に考えるからだ。「俺、いつ昼飯食ったか。何してたっけ。」20時ごろ妻が帰ってきて、おかえりと言って安心し、子供を寝かしつけながら、たびたび寝落ちした。そして気づくと深夜という記憶が度々ある。
一日のリズムがつかめず、その日があっという間に過ぎていく。そんな生活が2、3週間続いた。混乱の収束は、記録簿をつけ始めてから、段々と兆しが見えてきた。
そんな生活を送っていた自分に、イクメンノートから伝えたいこと。自分<赤ちゃんになった時、それはつまり自分より赤ちゃんを優先し、自分を忘れかけた時。そんなときは、自分を忘れないで欲しいということ。
ちょっと思い出すきっかけを持ってほしい。
この時、大切なのは、ミルクの記録とリズム。
後から思うと、確かに生活の中心は赤ちゃんで、リズムを赤ちゃんに合わせるというのは分かっていた。だけれど、僕は、赤ちゃんのリズムを漠然と睡眠のリズムで考えていた節があった。睡眠のリズムで考える、そうすると、いろいろと一定でないのだ。
睡眠のリズム、寝たり、起きたり、おむつを替えたり、ミルクを飲んだり、そして寝たり。寝る合間には、行動が伴うが、疲れたから寝るという感覚は、大人の感覚で、むしろ夕方まで赤ちゃんはあんまり疲れたように見えない。
そうすると、赤ちゃんが目まぐるしく活動をするリズムは、躍動的で捉えどころがないように思える。そこで、日中に寝るのが、身体を休めるというより、脳の情報整理の行動の一環であるとみてはどうか。例えば、お出かけをして、大量の情報収集がなされた時、午後過ぎに情報生理ため、脳を休める「スリープ状態」で寝るのであると。
一定時間寝て行動するのが、大人の規則的なリズムなら、赤ちゃんは、エネルギー補充のリズム。宇宙ステーションと探査機のようなもので、世界を探査し調べ、お腹が空いては宇宙ステーションに戻り、その合間に充電して(ミルクを飲んで)いるのだ。
例えば、ミルクを飲んだり、寝たり、起きたり、おむつを替えたり、ミルクを飲んだり、泣いたり、行動したり、ミルクを飲んだりというような感じ。ミルクの合間に消化吸収し、エネルギーを蓄え、行動する。
そういったミルクとミルクの合間の時間に、少し自分を見つめる時間をもって欲しい。
ノートには、ミルクの記録が多く出てくる。
6時00分 母乳 ※8時〜8時30分 父(僕)の食事
9時30分100ml 10時〜12時は寝ないで赤ちゃんが行動する時間
12時170ml
13時10ml ※11時30分くらいか、13時に父(僕)の昼ご飯
13時から13時30分 睡眠
15時160ml
15時から17時の間に少なくとも1時間以上寝る。
18時から19時 風呂に入れる
19時210ml
19時15分から2時 睡眠
2時以後 母乳
たそがれ泣き対策は、18時に風呂に入るのが、我が家の定番 スケジュール。(起きてるとき)だっこ紐をつけて、家事をやるのもあり、洗濯干したりは良いと思う。
2016年2月10日 僕29歳 長男0歳5ケ月 妻29歳
丁寧に、僕は色々な世話を記録していった。特に、ミルクを何時に何cc飲んだか。すると、ミルクを飲んだ時間の合間に30分から1時間程度の活動時間を確認することができた。
その間に家事をしたり、散歩をしたり、はたまた赤ちゃんとのんびり過ごしたり。自分を思いだそう。
今回の話、イクメンノートを見返すと、僕が2016年1月の終わりごろに美容院の予約を忘れたことが記されていた。生活の変化、環境の変化により、この頃、自分を見失っていた。そんなとき自分を見つめ直すのに、書くこと、記録することが、自らの励ましとなると言うこと。
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