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小瀬甫庵『信長記』1

 和本と能楽のつぶやきを『信長記』から手を付けることにした。 
なぜか。
日本人の中では、好き嫌いに関係なく織田信長ほど多くの人を惹きつける歴史上の人物はいないのではないだろうか。
少なくとも日本の戦国時代における有名な武将を挙げよと問えば、恐らく第一位に選ばれるのではないかと思う。
だからこの本を取り上げれば、興味を持っていただけるのではないかとの打算が自然と働いたのだ。
それに、ちょうど大河ドラマ「どうする家康」で岡田准一さんが強烈なキャラクターの信長を演じている。見ている方なら、番組と絡めて読めば楽しんでいただけるのではないかと期待する。

ところで、信長と能楽は何の関係があるのか?と思われるだろう。
実は、秀吉は能狂いとしても知られ、自身が演じた記録もあるという。秀吉ほどではなくとも戦国時代の武将はある程度嗜んでいたのである。『信長記』を通じて関連するところを少しづつ紹介していこうと思う。

小瀬甫庵『信長記』巻第一 目録裏~1丁表

そろそろ本題に移りたいのだが、その前に"信長記”について簡単に説明したい。
太田牛一が著した"信長記”を増補した小瀬甫庵の"信長記”が江戸期に版行されて流布し、各種軍記物や随筆などに引用された。一方で、牛一の"信長記”は「秘本」的な扱いで知る人ぞ知る的な書物で、明治期に初めて刊行された。 
参考:『『信長記』と信長・秀吉の時代』 金子拓編 勉誠出版

画像にある"大田和泉守牛一”が本家本元、アレンジが"小瀬甫庵道喜居士”ということなのだ。とすれば、太田牛一の"信長記”が欲しくなるというもの。
しかしながら、「秘本」的な和本を一般人が手にするのは困難である。

そこで、現代に出版された太田牛一の『信長記』(信長公記と呼ばれることが多い)と比較してみた。一方では、能の演者や曲目について詳しく記述されているが、一方には無しという能楽ファンには残念な箇所がある。これについては、別途該当箇所で触れたい。

今回は、ここまでとして、次回は、能楽と縁が深い平家と信長との関係についての記述を紹介したい。

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