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【Marche Interview #05】自分が活躍できる場所として/スペイン産カラスミの販売、槇村洋志さん(MARCOMAR JAPON)

インタビュー5人目は、スペイン産のカラスミを軸にオリーブオイルなども輸入販売されている、MARCOMAR JAPON(マルコマールハポン)のお話です。マルシェにはたくさんの輸入食品・輸入雑貨を販売されるお店がありますが、現地へ足を運びつくり手としっかり繋がって仕入販売されているお店は少なく、マルコマールハポンさんはそんなスペインのつくり手と東京をつなぐ出店者の一人です。

最初の思惑とは違う事業展開をマルシェで発見

ースペイン産のカラスミに目をつけた理由を教えてください
 若い時からいつか自分で事業をやりたいと思っていました。その場合、専門性が無いと駄目だろうなと思い、ずっと水産関係の仕事をしてきていたこともあり、水産でかつ一人で事業をやるなら生鮮より加工品の方が扱いやすいので加工品だとは考えていました。
 カラスミとの出会いは、モロッコでスペイン人が経営する会社で働いていた時に、社長が釣ってきたカツオでジャーキーみたいのを自家用でつくっているのを食べたり、カラスミがスペインと日本でどっちが食べられているかなど激論したり、オリーブオイルの食べ方や美味しさに気づかせてもらう経験がありました。そして前職(飲食店の水産仕入れ部門)時代に休みをとり、スペインへと渡り、水産関係の現場を色々と見ていくと、日本には無いような様々な魚のカラスミがあり、その中でマグロのカラスミとマグロのジャーキーを始めてみた時に、これだ!と思ってぴーんときました。そして副業として勝手に仕入て販売をはじめていました。
 その時は、8割事業者向け2割消費者向けのBtoB事業中心で行こうと考えていました。

-マルシェに出店するきっかけを教えてください
 事業者向けの販路拡大をしようとスペイン系の飲食店をリストアップして営業をひたすらしていましたが、仕入れる側からすると単価が合わなくて取引にほとんど結び付きませんでした。そんな時に、妻がオリーブオイルソムリエを持っており、その仲間のオリーブオイル販売の出店者に場所を一部借りてマルシェでカラスミを販売してみたのがきっかけでした。
 それでマルシェの雰囲気をはじめてみた時に、これはいけるかなと思ったのとそこでまずはしっかり販売していこうと考え、自社で出店登録をして、初出店したのがヒルズマルシェでした。(2013年11月8日が初出店日)

■「MARCOMAR JAPON」の由来
※こちらはMARCOMAR JAPONさんのホームページより転載
MARCOMAR JAPON(マルコマール・ハポン)は、スペイン産のカラスミ等の塩干品、また、その関連商品を専門的に扱う会社です。そして、MARCOMARという社名には由来があり、スペイン語で“海の海産物を食べる”つまり、シーフードを食べよう、という意味を持たせています。

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-マルシェに出始めてみてどうでしたか?
 最初はノウハウも分からないし、対面販売・小売をした経験が無かったので悪戦苦闘でした。例えば値札1つとってもそうだし、ディスプレイなども勉強はしていくもののどうしたらいいのか分からなくて、他の出店者をみたり、教えてもらったりして行きながらでした。なので、最初は売上もあまりあがらず、そこから試食の出し方など1つ1つ変えていって売上があがるようになりました。
 カラスミ自体も日本人にとっては馴染みがすごいあるわけでもないので、興味は持ってもらうものの、単価が高い(2,000円~3,000円)こともあり、売上には中々結びつかなかったです。ある時、他の出店者との話の中で、お試しサイズがあれば売れるのではないかと話になり、現地に連絡をしたところ、現地では対応出来ないと言われつくってもらえなかったのですが、徐々に実績がついてきたら製造してもらえるようになり、お試しサイズの販売がはじまり、そうすると売上があがるようになってきました。
 その後、一か所だけではと思い、違うマルシェにも出ようと思ったけども当時いくつかのマルシェでは輸入食材はNGということで出店すらさせてもらえませんでした。その後出られるようになってきて出店場所を増やしてます。最近は月20日~25日、1日最大2カ所の出店をしています。

-マルシェ出店を経験していく中で、事業はどう変わりましたか?
 最初思い描いていた事業者8割、消費者2割というのは完全に逆転し、事業者2割、消費者8割になっています。事業者向けの営業は熱心に営業することはなく、色々なつながりの中で営業するようなカタチが多いです。
 そうした中で将来的には、事業者向けに卸すなら自分で飲食店までやってしまった方がいいのではないかなと思って、カラスミに特化した飲食店をするのが1つの夢として考えています。

直輸入だからこそ、つくり手の想いを代弁するお店へ

-マルシェの販売で大切にしていることはなんですか?
 カラスミという専門性を高めていき、しっかりとした知識をもち正しく語れないといけないと思ってます。その為には、やはり思い入れが無いといけないかなと思います。オタクに近いような商品への思い入れや語れる内容は必要だと思います。

-槇村さんのように現地へ行きつくり手の現場を見て直輸入をしている店舗は少ないかと思いますが、それはやはり難しいものですか?
 直輸入をしなくとも展示会などへ行き、日本のインポーターと出会い気軽に購入(仕入)できるというのもあるかと思いますし、もちろん言葉の壁もあると思います。ビジネスとして考えれば現地に行くのは費用もとてもかかってきますので、その経費をかけないでやる方が多いのではないでしょうか。(槇村さんは毎年1月にスペインに行き、現地での視察や交渉をされ改善や新商品を発掘されてきます)
 私がその経費をかけてでも現地へ行くのは、やはり見ないと分からないことが多いからです。オリーブオイル1つとっても事業者によって全然違ってきます。先月行った時にも面白い方と会い、オリーブ農家が自家用オリーブオイルを生産するのを見たりしましたが、現地に行かないと分からないし出会うことがないですよね。
 それと、一番大変なのは、文化・常識も含めた感覚の違いです。例えば、日本ならある程度取引していく中で、言わなくても分かってもらえるというコトがあると思いますが、スペインの場合は、毎回、適切な指示をしっかり行わないと伝わらないです。マルーカのカラスミでも着色無しと伝えていたのを支持し忘れると途端に着色されたのが入ってきたり、オリーブオイルでも、向こうでは500mlのサイズが主流なので、250mlをというとそんな試飲みたいなサイズなんで売れるの?など言われたりするのでしっかり説明して現地との間隔の詰めをしていかないといけないです。そういう部分がとても難しいですね。
 もちろん、作業としては事務的な部分で通関手続きなどはありますが、調べればわかることでこれは誰でも出来ると思います。
 また、輸出する側も食品によっては検査も必要だし、通関手続きも必要になってくるので、手間も相当かかるので、海外で出会った生産者のを仕入て販売したいといっても簡単に商談につながるわけでもないです。

専門店の集積体こそマルシェの価値

-マルシェの価値ってなんだと思いますか?
 音楽で例えると、お客さんはオーディエンス、出店者がミュージシャン、事務局が裏方だと思うんですよね。そうすると、出店者が自分たちを見せるのであれば、ただ仕入れてきたものを販売するだけではなく、専門性をもってしっかりと想いをもって語っていかなくてはいけないと思うんですよね。コミュニケーションをとる対面販売の場なので。昔から海外でも日本でも、市場とかは魚屋、八百屋、チーズ屋などの専門店が集積している場所で、チーズ屋ならチーズ以外に変なのを置くことはないし、魚が食べたければ魚屋で食べ方を教えてもらって購入することができる。今はネットでもスーパーでも簡単に商品が買えるし、店員がいなくても買える世界になっているけど、逆行していいのではないかなと思います。マルシェでは会話して購入することが出来るので、そうした専門性のあるお店が集まってくると、よりマルシェ自体の価値が高まってくると思いますし、1出店者からするとそうあって欲しいなと思います。
 自分自身も、スペイン産食材としてカラスミをメインにオリーブオイルやニンニクなどいくつか食材展開をしていますが、あるマルシェではカラスミ専門店でカラスミだけを販売するというような形で再度取り組んでみたいなと思っています。書籍(※一番下参照)でも書かれていた「世田谷ファームランド」さんなどはシフォンケーキのみと潔く分かりやすいので良いですよね。
 マルシェって、僕にとっては活躍できる場所なんです。職場として一生懸命頑張ればフィードバックもあるし、生活の場としても一消費者として楽しむことが出来る場所でもある。だけど、最近はマルシェという言葉が独り歩きして安売りしている感じもあり、それがこれからちょっと怖いなと思います。マルシェという言葉を使うのにあたってルールや許可制になった方がいいのではないかなと思います。
 

~インタビューを終えて~
 私のマルシェでは「つくり手」か「目利き」かを大きな区別として捉えてます。理想は作り手が集まるマルシェ。それは、お話でもでてきた専門性があるからです。同じ作物でも農家など作り手によって想いや品質は違い、かつそれが本業の為1店舗1店舗が専門店になります。目利き(仕入販売)店はそのつくり手以上に価値を磨いて専門店化していかなければいけないと思っています。しかし、30店舗の専門店が並ぶ店の1店舗であれもこれもそれもとジャンル問わず売れそうな商品を適当に集めて販売するお店が散見されます。お客様にとっても分かりにくいですし、あまり面白い店にはならないです。何でも食べられるファミリーレストランより、カレーしか出さないけどめちゃくちゃ美味しいお店の方が、わざわざ行きたくなるお店ですし、ファミレスが30店舗ならんでいる場所って魅力が感じられないですよね。というのを改めて思い、マルシェの裏方としてしっかりやっていきたいなと感じました。

■SouseiMarcheでも絶賛販売中!
 他では手に入らないMARCOMAR JAPONさんのスペイン産カラスミは、私が北海道で経営しているお店「SouseiMarche」でも販売しています。

■マルシェの出店や使い方を知りたい方はこちらをご覧ください
 『マルシェのつくり方、使い方: 運営者・出店者のための教科書
 (※amazonの販売ページへとびます)
 

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