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【徒然なるままに】#114 DIC川村記念美術館

2020年に今のような状況になってから、美術館に足を運ぶ回数が減っていましたが、先日、何年かぶりにDIC川村記念美術館に行ってきました。

特にどこかに行こうと決めていたわけではなかったが、川村にでも久しぶりに行こうかな、という考えは数日前から頭にはあった。
先週のある日、部屋のバルコニーに出て雨のにおいを感じると、もしかしたら雨の日に行く川村も良いのではないかと思い出かけたのだった。

行ってみると平日ということもあり、とても空いていた。
木々が沢山ある小道を歩く。雨に濡れた緑や土の香りに心身が癒される感覚。しばらくすると白鳥のいる池が見えてくる。水鳥たちはとてもリラックスしているように見え、雨の日の空と相まってその景色は幻想的に自分には映った。
水辺や緑が広がり、良い意味で、自分の普段の日常とはかけ離れた非日常がそこにはあった。天気の良い日も良いと思うが、雨の日に初めて来た印象は、雨の日こそ来るべきなのでは、と思わせてくれる美しい風景だった。

現在の企画展は『カラーフィールド 色の海を泳ぐ』。
プレスリリースによれば、「カラーフィールドは1950年代後半から60年代にかけてアメリカを中心に発展した抽象絵画の傾向」で、「大きなカンヴァス一面に色彩を用いて場(=フィールド)を創出させることで、広がりある豊かな画面を作り出しました」とのこと。
その中の代表的な作家にフランク・ステラなどがあげられていて、今回、彼の作品も展示されている。
 
ステラは知っていたし、これまでもそれこそ川村でも作品を見たことがあったが、カラーフィールドという言葉は今回初めて知った。
「本展は、このカラーフィールド作品の収集で世界的に知られるマーヴィッシュ・コレクションより、関連する作家9名に焦点をあて、1960年代以降の出色の作品を紹介する本邦初の展覧会です」とプレスリリースにもあるので、もしかしたら日本ではカラーフィールドという言葉が一般に広がるのはこれからなのかもしれない。

企画展の印象としては、大きめの作品が多いように思った。実際に足を運んで美術作品を見るのは久しぶりだったが、来場者がそれほどいなかったこともあり、ゆっくりと作品を見ることができ、なんとも心地よい時間だった。心は静かで穏やかなまま、しかし、色々な影響を作品から受けた。自分は主に音楽を作るのだが、普段からインスピレーションを得るのは音楽よりは絵画や文章が多いように思う。
ジュールズ・オリツキー(Jules Olitski 1922 – 2007) という作家は今回初めて知ったが、作品と共に紹介された彼の言葉が良かった。

自分の絵画に求めているのは、単純に霧状の色です。
雲のように漂い、けれどその形をとどめるような。
ジュールズ・オリツキー

個人的には60年代から70年代辺りの彼の作品が特に気に入った。他の作家の作品も、美術館の紹介ウェブに載っていた画像とは大分印象が違って、色合いや質感などの違いを楽しめた。サイズも大きいから、スマートフォンで作品を見ることでは体験できないものがここにはあった。


久々に入った常設のロスコ・ルームも良かった。他に良い言い方が見つからないのだが、とても贅沢な時間を過ごしている、という感じだった。
館内を歩いていて、時折見える外の景色が素晴らしかった。

今の時代、直接人と会わなくても良い社会に段々と移行してきているとは言え、30年前と比べるとすぐに連絡がつく社会で、ストレスを感じている人も多いだろうと想像する。むしろ昔よりもSNSの普及などで「人」と関わること自体は増えただろう。
それに疲れない人はそれでいいのだが、疲れて周りのペースに振り回されっぱなしという人は、老若男女問わず、常設展も充実していて、程よい自然が感じられる川村記念美術館はおすすめである。
スマートフォンという日常をOFFにして、普段の生活とは違う非日常を体験するにはもってこいである。特に(もちろん個人的な見解ですが)平日の雨の日が良いように思う(大雨や嵐の日はちょっと避けた方がいいと思いますが^^;)。

常設展で見たアン・アーノルドのラム・タムという猫の立体作品がとてもかわいらしく、その後も気になったので、帰宅後にインターネットで英字も含めて検索したが全く出てこなかった。川村記念美術館の持っている作品のカタログを元々持っていたのだが、それにも出ていなかったので、新たに購入したものなのだろうか。展示替えをしていなければ、今でも美術館で見られるはずだ。
常設展から企画展も自然と繋がっていて、館内を歩くのも楽しい。この作品は何を意味しているのか、などとは考えずに部屋をゆっくりと渡り歩いていくのもいいだろう。意味というのは大抵後から、それぞれの中で生まれてくるものだと思うし、特に意味という受け止め方でなくても、無意識にでも、何かしらは残るのではないかと思う。あるいは、何も残らない、ということもあるかもしれないが、それはそれで良いのではないかと思う。
どう感じても良い自由があるというのは素敵なことだ。

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