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(3)モードで即興演奏 その1

今回は、前回の『白鍵のみで即興、アンビエント・ピアノのススメ』の続きとなります。

こちらが前回ご紹介しましたドリアン・モードです

いわゆるドレミファソラシドは、英語ではCDEFGBC、ドイツ語ではCDEFGAHC(発音はツェー、デー、エー、エフ、ゲー、アー、ハー、ツェーに近いもの)となります。
ここではコードネームにも一般的に用いる英語を使って表記をしたいと思います。
このドリアン・モードはレで始まっているので、つまりDのドリアン・モードとなります。

このドリアン・モードで、前回同様にペダルを踏んだまま即興演奏してみたいと思います。

いかがでしょうか。
このモード(旋法)の響きはどこか懐かしさを伴うように自分には聴こえますが、映画やアニメ、ゲームの音楽によく使われています。

Voices / 新居昭乃(「マクロスプラス」エンディングテーマ)

この「Voices」では、ベース音にこのモードにはない音を使っています。シのフラット(♭)です。コードネームで書きますとB♭(シ♭、レ、ファの三和音)となります。

ちなみに、Dのドリアン・モードのシの音をフラット(♭)にしますと、ニ短調の音階、Dマイナーのスケールとなります。正確には自然的短音階。英語ではnatural minor scaleです。ここからはDのナチュラル・マイナー・スケールと書きます。

Dのナチュラルマイナースケール(自然的短音階)

この短音階とドリアン・モードは一つの音が半音違いということからか、互いを行き来して使用される例が少なくありません。
B♭のコードはDのナチュラル・マイナー・スケールから用いられたものということが言えます。ナチュラル・マイナー・スケールは、ハーモニック・マイナー(和声的短音階)や、メロディック・マイナー(旋律的短音階)に転じて、メジャー・スケール(長音階。ドレミファソラシド)とマイナー・スケール(短音階。ドレミ♭ファソラ♭シ♭ド)から生まれたコード(和音)の進行の中で使われることが多いです。

Dのハーモニック・マイナー・スケール(和声的短音階)
Dのメロディック・マイナー・スケール(旋律的短音階)

一般的なコード進行というのは、トニック(tonic、主音)、サブドミナント(subdominant、下属音)、ドミナント(dominant、属音)というのがありまして、例えば、ドミナント→トニックというコード進行などがあります。そういった進行が楽曲の柱となります。

Dのマイナースケール、三和音のコード表。Tがトニック、Sがサブドミナント、Dがドミナント。

一方、モードの使い方は、そういったダイナミックなコード進行とは別の、独特の浮遊感が持ち味です。
ナチュラル・マイナー・スケールは前述の通り、はっきりとしたコード進行の中で使われることが多いので、物語的に音楽を引っ張っていきたいというとき、とても便利です。
この「Voices」のように、モード上にない音をベース音、和音として使うことはよくあります。
もちろん、モードの旋律と音がぶつからないように配慮をします。

ちなみにDのナチュラルマイナースケールは、前回ご紹介しましたエオリアン・モードと同じ音の並びです。下の図は前回ご紹介しましたAのエオリアン・モードです。

Aのエオリアン・モード
Dのエオリアン・モード。Dのナチュラル・マイナー・スケールと同じ音の並びです。

「Voices」では、ドミナント→トニックというようなはっきりとしたコード進行が見られるわけではないので、ドリアン・モードとナチュラル・マイナー・スケールを行き来するというよりは、ドリアン・モードとエオリアン・モードを行き来することで作られた楽曲といった方が良いかもしれません。メロディがドリアン・モード、ベース音、コードがたまにエオリアン・モードを使う、という感じでしょうか。

Dのドリアン・モード、三和音のコード表
Dのエオリアン・モード、三和音のコード表

ここでは、また別の楽曲をご紹介したいと思います。
エオリアン・モードとナチュラル・マイナー・スケールは同じ音の並びですが、先ほども書きました通り、ナチュラル・マイナー・スケールは前述のようなコード進行の中で使われます。この楽曲もドミナント→トニックという性格の和音が少ない、どちらかというとモード的な雰囲気が漂う楽曲です。

「
シェイクスピア & ハサウェイ」Theme

上の楽曲ですが、派手な和音進行ではなく、素朴で優しい楽曲作りにモードはとても合っているように思います。

これまでペダルを踏んだままで演奏してきましたが、次の動画では、ペダルをそれほど使わずに即興演奏してみました。同じくDのエオリアン・モードです。

さて、ドリアン・モードに戻りますが、Cのキーで演奏するとこんな感じです。

スカボロー・フェアを即興的にちょっと弾いてみました。これもドリアン・モードです。

最後にCのナチュラルマイナースケールで即興演奏してみました。

ここまでこのnoteを見てくださった方々の中には、例えば「即興演奏のときに和音はどのようなルールの上で重ねているの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ここでのモードの扱いは、メジャースケール(長音階)やマイナースケール(短音階)のような和音進行は特にないので、前回にも書きましたが、モード内の音であれば、どのように重ねても構わないのですが、自分の演奏は、いわゆるコード進行を通ってきた手つきになることが多々あります。
次回以降、和音に関しても少しずつ触れていきたいと思います。

音楽、とりわけ作曲を勉強するときに最初に和声やコード進行を覚えるというのはよくあるやり方ですが、そこから入りますと、ことによっては、雁字搦めになって抜け出せなくなるということがあります。
「音」そのものを「楽」しむという観点から、気を楽にして、モードを入り口として楽器にひとまず触れていただければ……。そんな意味合いを込めて、このnoteを書いています。是非ゆったりと、ご自分での即興演奏を楽しんでいただければと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

今月、6月26日に神楽坂グリーさんのグランドピアノを演奏するオンラインライブを行います。即興演奏多めの内容となると思いますので、よろしかったらご覧ください。

XやInstagramもやっています。たまに動画も載せますのでよろしかったらご覧ください。
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また、warp jamというジャンルレスのピアノトリオもやっています。
ご興味持っていただければ幸いです。

和楽器のアンビエント作品も書いています。20曲ほどございます。
お聴きいただければ幸いです。
Seizan Ishigaki "wishes"


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