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何故ここにジャッキーが!?

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誰もが通過する人生初めてのデート。ぼくは13歳の時だった。相手は確か中学入学と同時に岡山から引っ越してきた転校生。

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金縁の丸い眼鏡をかけた知的そうなその子は、岡山の訛りを必死に隠そうとするのだけど、会話のふとした拍子に皆と違うイントネーションで話すのが格好良く感じられて、どこか遠い、異文化の香りがした。

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隣の席同士で少しづつ仲良くなって、ある日、その子の友達に呼び出されてヒョコヒョコ付いて行ってみるとその子がいて告白された。

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もちろん。付き合う事にした。でも中学に入学してすぐ彼女なんて作ったものだから野球部の先輩に目をつけられて、すれ違ったりする時わざと思っきりぶつかられたりして壁に吹っ飛んだりもしてたけど、まぁ、しょうがないよね。そもそも、ぼくテニス部なんだけどね。関係なくナイスカ?

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あ、そうそうデートの話だった。初めてのデートは映画にした。そもそもデートなんてした事ないし、アメリカの映画なんかだとデートは映画に決まっているからね。

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その当時(1994年)ちょうど公開されていたのが「ネバーエンディングストーリー3」だった。

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1も2も観ていたし、なんかロマンチックでいいんじゃないかと思って。ファルコンとかさ。相手が前作を観ていたかどうかはわからなかったけど、まぁ、そこまで気はまわらなかった。

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で、駅で待ち合わせして、マックかどこかで少し食事を済ませて、映画館に行った。

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その映画館には友達と何回も行っていたから勝手は知っていた。だからぼくがリードして

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「えーと、3番シアターだからこっちこっち」

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なんて得意気にリードしちゃってさ、、

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二人でポップコーンを持ちながら席について、劇場内がスーっと暗くなって、真っ暗な中、スクリーンの光に照らされている彼女の横顔を覗き見たりして、ドキドキした。

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とても順調だった。

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き、き、キッスも出来るかもしれない。眼鏡は?眼鏡は外すの?ぶつかるの、どーするの?

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なんて妄想してたら、映画がいつの間にか始まっていた。

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ふーん、今回は舞台がずいぶんアジアっぽいんだなぁー。なんだか設定ずいぶん変えたなぁ、、、。と思いながら観ていると、なんか、、、少し変だな。ファルコンとかでてこないし、、、、

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そして、唐突に画面に現れたのは香港スターのジャッキー・チェン!!!

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なぜジャッキーが!!!?友情出演?

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そして追い打ちをかけるかのように真っ赤な文字でタイトルがババーン!

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「酔拳2」

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oh!!!!Nooooooo!!!!!なぜ、酔拳が!?え、え!?混乱する頭の中、ジャッキーはアクロバティックに敵と戦っている。壺に片足を突っ込みながらも戦うジャッキー。はい!はい!はーい!

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しまった!シアター3は入れ替え上映だったんだ!!ってことは「ネバーエンディングストーリー3」と「酔拳2」が交互に上映されているんだ!!よりによって「酔拳2」と交互にするかー?

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ひきつった顔で彼女の顔を覗き見るとぼく以上にひきつった顔をした彼女が見えた。気まずい笑顔。ひー!!

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そんなぼくらに関係なくジャッキーは必死に敵と戦っている。はいやー、はい!はい!はい!

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結局「酔拳2」を観終わった後

、どーしていいかわからなくなって思考停止してしまったぼくは席を立つ事ができず、そのまま「ネバーエンディングストーリー3」が上映スタート。

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4時間近く映画を観た2人は足元をフラフラさせながら映画館をでた。外は真っ暗になっていた。そりゃそうだ。

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外の冷たい風が頬にあたり、とても気持ちがよかった。

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「なんか、、、失敗しちゃった、ごめん」

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「ううん。大丈夫」

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「ジャッキー、カッコ良かったよな!あと、この事だれにも言うなよな!」

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只野 漠
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