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商業小説は、ペルソナマーケティングによる商品企画で作られている。

 ペルソナとは仮面のこと、ペルソナマーケティングというのは、本を買ってくれる読者を具体的に想定(ペルソナ)し、その読者のニーズを満たすように商品を作ることです。

 私はポルノ小説だけではなく、ライトノベル、時代小説なども書いているのですが、編集者にこのレーベルの読者さんはどういう人ですか? という質問を投げたとき、最も詳細に読者像を教えてくれるのはポルノの編集者です。

 乙女系の編集者なんかすごかったですよ(乙女系は女性向けの官能小説)。読者さんは40代の専業主婦、スーパーのレジのパートをしている。夫は会社員。短大卒。子どもが二人。静岡県静岡市に住んでいる。築二十年のマンション住まい。チワワを飼っている。

 官能小説であれば、40代以上の男性会社員と定年退職者になります。

 ジュブナイルポルノであれば、20代から40代のアニメや漫画が好きなオタク。ナポレオン文庫を立ち上げた編集長は、「コミケで売っている『ダーティペアーのエロ同人誌』みたいな本を作りたかったんだよ」と言っていました。19年前、コミケが晴海で開催されていて、今のように隆盛を極めてなかった時代です。

 なんだよ。まるで商品を作っているみたいじゃないか? と思われた方もいらっしゃると思います。その通りです。出版社は会社であり、会社は営利追求団体です。編集者は会社に利益を与えるために行動します。

 「誰がこの小説にお金を出してくれるのか?」を編集者は気にします。私たち作家は、まず企画書を提出して、編集者と相談します。ボツになることもあるし、企画書を書き直す場合もあります。編集者の側から、エルフをヒロインにして書いてください、と指定されることもあります。企画がぜんぜん通らず、5通も6通も出すときもあります。

 編集者は、どういう表紙にして、どういうタイトルにすれば訴求効果が高いか計算して、イラストレーターさんやデザイナーさん(装丁者)に発注します。

 受講生が書いてこられた小説で、魔女が少女奴隷を飼う話がありました。百合だと思って読んでいたのですが、少女だと思ったらフタナリで、フタナリだと思ったらショタだったと、関係性が変化していきます。受講生はネットでウエブ小説を書いている人でした。

 ああ、この展開の読めなさが、ネット小説のおもしろさなんだなと納得し、とても勉強になりました。どちらに転ぶかわからないお話は確かに面白かったのですが、この小説は商業では厳しい。読者を絞れないからです。

 百合好きな人に読ませたいのならフタナリは良くない(こんなもの百合じゃないと怒り出す人がいる)、おねショタが好きな人には、百合は「違う、金を返せ」と言われてしまう。もしもこれを出版するとき、編集者は表紙を迷うことでしょう。そして、そういう、編集者が表紙を作りにくい小説は、誰にも刺さらない場合が多い。

 ポルノ小説の表紙は、ヒロインがどういう人で、どういう読者さんを対象としていて、誘惑なのか調教なのか、全部わかるように書いてあります。

 私は美少女文庫を書くとき、表紙やタイトル、帯の煽り文句まで想定して企画書を出しています。そして、編集者の作った表紙や煽り文句に、注文はつけません。私が想定したものと差異がないからです。

 あなたの小説は、読者を意識していますか? 
 編集者が表紙を作りやすい小説になっていますか?

 ポイントのおさらい
 読者を具体的に想定して、編集者が表紙を作りやすい小説を書きましょう。
(私はAmazonのアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています。)


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