今日をひらく
リビングで鳴るアラームの音が聞こえる。
すっと目覚めてベッドから素早く出る。苦もなくパッと起き出す。寝室にスマホを持ち込まないことをマイルールとしていて、目覚ましのアラーム音を止めに動き出す。
スマホの音はあまり心地良いものではない。本当は聞きたくないのだけれど、代わりに相応しいものを用意する方が面倒で、ずっとスマホで起き続けている。どんな音を設定しようと、スマホらしさはどうやっても出てくる。
最近は体内時計を試していて、起床時間を唱えて寝ることで自然と起きられる日も増えている。体内時計の時刻をスマホのアラームより前にセットする。鳴る前のアラームをオフにするのは、何とも言えず、気分がほんの少し良くなる。
冬のリビングは冷えている。半袖半ズボンのジャージで寝ているから、寒さが堪える。もともと寒いのが苦手。エアコンをつけても部屋はすぐには暖まらない。止めたスマホを手にしたまま、ついついコタツに身体を入れてしまう。
画面が立ち上がっているスマホを見て、メッセンジャーアプリを開く。たまっている通知に目を通しながら、Amazon定期便で届いた2Lペットボトルの水を飲む。喉を通り身体の中に水が落ちて、染み渡っていくのがわかる。
歯を磨こうと、コタツを出て洗面台に向かう。寒い。歯磨き粉を少量、夜の半分ほどの量をつけて、歯を磨き始める。いつもどおり右奥歯の表側から始まり、徐々に中央へと向かっていく。前歯に到達するあたりで寒さに耐えきれなくなり、またコタツに戻る。
コタツの上に置いたスマホを手にしてしまう。歯を磨きながら、SNSをチェックしたり流れてきた記事を開く。読んでいるようで読んでいない感覚。中身を深く読まず字面だけ追い、気になったものは「あとで読む」アプリにためておく。あとで読んだことは、あまりない。
スマホを見ながら歯を磨いていると、恐ろしく時間が過ぎていることがある。気がついたら30分経っていた、2周目の右奥歯の表側に入っていた。また朝の貴重な時間を使ってしまった。歯はつるつるになった。
口をゆすいで髪をヘアゴムで縛る。お湯を出して顔にかけ、洗顔料をつけて顔を洗う。顔を洗うところまで終えると、夜の睡眠の延長から朝の活動の始まりに切り替わる、気がする。明確なルーティン・スイッチにしているわけではないから、あくまで、そんな気がするだけ。
一日を始めようと、PCを開く。もしくは手帳を開く、読みかけの本を開く。あるいはまた、スマホを開く。始まりの一歩を明確に定めていないから、日によって開くものが違う。
ただいずれにせよ、僕の一日は、何かを「ひらく」ことから始まるみたいだ。
***
ここから先は
自分の言葉で過ごす。
誰かの期待に応えたい・社会の役に立ちたい。そうやってどこか他人のものさしで生きていると、あっという間に月日が経ってしまう。そんなふうに過ご…
ありがとうございます。本を読むのに使わせていただきます。