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【ついに!】「イルカ・クジラ解放」(目黒峰人 2023)が完成したらしい   ~鴨川シーワールド・名古水の写真を添えて~


今日は、ある文章をざっくり読んでみたうえで、まずは感じたことを。
それに関連して、須磨海浜水族園の再整備(シャチの展示)に反対することに関して、その発信のあり方の現状と分析を少し記しておきます。



1,待ってました!


 実は、私にはずっと公表を待っていた文章があったのです。
 それが、これ。


目黒峰人『イルカ・クジラ解放』不明、2023年

最終アクセス日時 2023年2月28日7時2分

 前回アクセスした時点では、上記のリンクから閲覧することが可能でした。基本的に誰でも見ることができます。皆さんもぜひ読んでみては。(というか一通り目を通しておくと、この記事がもっと読みやすいはず)


 著者が以前から執筆を続けていること、どんな内容に仕上げたいかなど、情報が発信されていたので、完成したら絶対に読もうと思っていました。

 私自身は、シャチという生き物を中心とした発信を、色々聞き取りや文献調査しながら行っています。その一方で、それ以外にはあまり詳しくないのも事実なのです。○○イルカとか○○ゴンドウなど、どういう生態なのか、どれくらい飼育されていてどう評価すべきなのか、「イルカ漁」に関わる種類はどんなものなのか、何を問題視しているのか、どういう解決を目指しているのか…  まだまだ理解が足りていません。

 何より、イルカやクジラを「解放する」にあたり、団体をはじめ彼らが、何に疑問を持っており、現状をどのように評価しているのか、どのような解決を考えているのか、多くの人が知るとてもいい機会になることを期待していました。
 また、もう一度落ち着いて、彼らの主張の根拠を冷静に分析する機会を与えてくれるとも考えました。

 

少ないストックから ディアナとティア(鴨川シーワールド、2015年)


2,まずは文章全体に目を通す!

 
 まず、今回発表された文章は、解放美談(動物を扱う産業を受け入れる立場から見た造語)を訴える人の教科書のような位置づけともいえる一方で、普段水族館に通って動物のパフォーマンスを楽しむ人にもおすすめできる内容といえます。

 例えば現在、須磨海浜水族園の再整備に関して、シャチの展示が予定されています。これに対しては、動物からの搾取反対を打ち出す団体の多くが、主に「残酷なショーの拡大」を批判し、反対する姿勢をとっているのが現状です。すべての動物から搾取をやめるという方向性とも合致しており、その主張には一定の一貫性があるといえます。これがあるからこそ、論と論がぶつかることができるのです。
 「イルカ・クジラ解放」では、シャチに関する問題に限らず、捕鯨やイルカの漁をはじめとする諸問題への、心構えや考え方、解決に向けてのステップやアイデアも提供しています。一応、語りかける対象は、解放団体を支持する人といったところでしょうか。

 ここで、ちょっと寄り道。
 再整備に反対する人の中には、もちろん水族館に通っていながら発信する人も存在します。しかし、本文章を参考に考えるならば、こうした人は「自分の好きな動物(ここではシャチ)だから、離れ離れになってほしくない」と言っているわけで、自分勝手でしかありません。動物を扱う産業の現状を鑑みれば、再整備を行う側は「聞くに値しない」と思うでしょう。
 そういう自分勝手な主張をやめろとは言いませんが、こうした人が「金儲けのために移送するなんてひどい」などと言い、主張の非一貫性を指摘すると話を逸らす傾向が見られているため、ここに記しておきました。


私もこの4頭でずっと暮らしてほしい気持ちは大いに理解します。
自分の好きな生き物だから熱くなるんだろうけど、
本当に計画を中止させたいのなら、一貫性のない自分勝手な主張は通用しない。

シャチ4頭集合(鴨川シーワールド、2022年)


3,とりあえず、おおまかな感想


 とまあ、1041ページにわたる「イルカ・クジラ解放」を、読んでいきました。今後、さらに細かく内容を読み込んだりする予定なので、ここではまず、文章全体の内容を読んで感じることをおおまかに記します。
 読んで書評を書くのはまだ分析を行う必要があるとして、今回は簡単な感想を述べる段階みたいなものです。

項目の分け方について

 自分もいつか、解放美談ではない側の目線からこのような文章をまとめられたらと考えていたので、今回著者がどのようにまとめるのか注目していました。
 やはり、細かく章が分けられており、見かけは辞書や図鑑といったように感じます。種ごとのデータから活動の目標と方法アイデアまで、細かい項目にわけて、著者の見解を交えながら記述されています。一番印象に残ったのは、動物解放団体が現状の解決をどのような形で考えているのか。これはまた別の記事で詳しく触れたい部分ですね。
 そしてもちろん、このような執筆は、根気強さがなくては進まないものと思いますし、著者の強い思いが伝わってくるようです。

データのおおまかな内容について

 著者自らが観察に行った調査をもとにした部分もあれば、ネットの情報を頑張ってまとめたという感じの部分まで様々です。=既存の情報をまとめた、まとめサイトを全部文章化したようなものという意味です。データの見やすさに限って言えば、かなり見やすいと感じました。
 今回の「イルカ・クジラ解放」は、そのままホームページにして、気になる情報をより多くの人が見つけやすくするということもできそうです。

 ただし本文章の特性がゆえに、我々が純粋なデータとして引用する価値が低い部分も多く、特に種ごとのデータや動物の飼育、研究成果の原典にあたる重要性も確認できます。原典にあたる面倒くささを感じる方もいるでしょうが、著者が示す参考文献の中には私からもおすすめしたいものが結構あります。

「イルカ・クジラ解放」の表現へのこだわり

 これは著者の影響なのか、団体で統一しているのか、断定できませんが、表現方法にはかなりのこだわりを感じました。
 解放美談側の文章に初めて触れた方が読むには、かなり難解な表現も多いです。最初の方に表記について書かれているものの、一度彼らの思考回路を把握しておかないと、一般的な日本語に翻訳しながら読み進める必要があり、難しいと感じる人が多いかもしれません。
 例えば、私とは動物の数え方や飼育へのとらえ方に大きく異なる部分があります。あとでベルーガの写真と具体例を載せておきました。

 しかし、著者がなぜこだわりをもって、あまり聞きなれない表記をしているのか、そう考えることが異なる考えに耳を傾ける第一歩です。日本の多くの水族館を実際に周った著者は、まず自分とは異なる相手の意見に耳を傾けたうえで反論を試みています。ここについては、今までの解放美談とは少し異なる冷静さも含まれています。

 当たり前ですが、解放美談を主張する方と、本文章で挙げられている諸問題について議論を行うなら、まずは相手の考えの構造を理解することが不可欠です。一応自分もそれなりにやってきたつもりです笑。動物を解放するという思想に至る回路をしっかり理解するというのは一見大変ですが、そのステップは、SNSでの誹謗中傷合戦からワンランク上のコミュニケーションを円滑に始めることにつながります。
 これが言うだけならいいのだが、なかなか難しい…。それを実践する人は双方の立場とも少ないし、時間と労力と根気も必要なので。


著者は、「動物差別的でない言葉を使用します」(本文5頁)として
ベルーガ1頭を「1名」と数えたり、飼育を「監禁」と表記している。

ベルーガ(鴨川シーワールド、2013年)


事実?あなたの意見?

 具体的には引用しませんが、やはり自分と価値観の異なる内容だけあって、著者の意見というのはかなり強調されて見えるものです。事実と自分の意見が明確に分かれていない部分もあり、特に私のような水族館大好き人間からすると、読みにくいという感想を持ちがちかもしれません。
 これに関しては、大学生のレポートなどでもよくある現象で「文章を書く」難しさでもあります。じゃあお前は事実と自分の意見が混ざらずかけるのかと訊かれると、割と自信ないです。文章を書くスキルはまだまだ学ばなくてはいけないなと思っています。

 以上のように、解放美談に初めて触れる方が読むと、戸惑うこともあるかと思いますが、その正体のひとつが上記のようなものです。「イルカ・クジラ解放」を辞書とかデータブックという認識で読んでいくと、すぐに違うと気付くはずです。
 一方、解放美談を支持する方が読むと、ちょくちょく出てくる著者の意見は、自分の考えの肉付けになるので、気持ちよくなれるうえ、読みやすく感じるのではないでしょうか。

 この点を考えたうえで、著者の意見を忠実に拾っていくと、具体的な解放に向けたステップや方法(あくまで1団体の人間によるものだが)がよりわかりやすく見えてくるわけです。ちょっと抽象的な話になりましたが、理解していただけると幸いです。



なんか引用されていた話


 個人的に今回「イルカ・クジラ解放」を読んでいて、驚いたことがありました。先ほども原典の話をしましたが、どういう文献を参考にしたのか色々見ていると、『イルカ・クジラ解放』「参考文献」1021頁に下記の記事がありました。

よりによって、これを引用するかあ。。。

 一応、この記事は今でも多くの人に見られている記事のひとつでして、他にも「PEACE」という動物からの搾取をやめる主張をしている団体をはじめ、解放美談側にも結構引用されています。


 ただし、私の至らない点があって、参考文献を示していなかったのです。人から聞いた話ではなく、ちゃんと文献があるわけです。これについては致命的で本当に申し訳ないのですが、著者にも私の書いた記事しか引用の形跡がないので、おそらく原典には行き着いていないと思われます。 
 近いうちに、原典となる記事と共に事故に関する内容を再度記述する考えですので、それを見て下されば嬉しく思います。


シャチパフォーマンス(鴨川シーワールド、2022年)


4,最後にまとめる、、、

 

 今回は、 『目黒峰人「イルカ・クジラ解放」不明、2023年』 について、まずは読んでみた率直な感想という形で記述しました。
 本文章を一言で表すと、解放美談側にとっては、動物を扱う産業へのアプロ―チに向けた概論という位置づけになると考えます。一方で、解放美談のアカウントを日々ブロックしてきた(?)我々としても、彼らから見た動物を扱う産業を知ることができ、異なる考えや価値観に目を向けることのできるチャンスですから、一読する価値は大いにあります

 「動物解放団体の人が書いたから…」とか言わずに、まずは読んでみることをおすすめします。最初は「多様な考え方があるんだな」という感想を持つだけでも価値あることです。




それではまた、上陸でーす。


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