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サンファンの火祭り(103首目)


かの街に夏告げる火よ舞い上がれ 邪は浄められ天健やかに


6月24日のサンファンの日の前夜、23日の夜はバルセロナの街は非常にうるさい。至るところで爆竹が弾け、花火が上がり、焚火が炎を上げる。

なんて、ここに越してくる前に5年間も住んでいながら、実は私はサンファンの何たるかも知らず、「夏至の少し後に、みんなが狂ったように爆竹を鳴らす日」くらいの認識しかなかった。

少し調べてみたところ、この祭りはスペインに限ったものではないそう。いくつかの由来が合わさった祭りで、サンファンという名前は、キリスト教の「サンファン(=聖ヨハネ)」。聖ヨハネの誕生を祝う日。しかしキリスト教以前の古代から、夏至の火祭りはあったと。

火で、悪霊や邪気を払う。また、夏至を過ぎて日照時間が短くなっていく、つまり太陽の力が弱まっていくから、太陽に力を与えるために火を焚く、という起源も聞いた事がある。洋の東西を問わず、夏至は人々の暮らしに古くから根付いていたのだなぁと思う。太陽が力を持ちすぎて酷暑になるのはごめんだけれど、太陽の恵みはありがたい。

うちの家族で、このサンファン前夜をめちゃくちゃ楽しみにしていたのは、次男。花火や焚火はどうでもよくて、次男の興味は爆竹一点集中。若い子の多くはそうなのかもしれない。

バルセロナの2年目だったか、初めて友人達と深夜まで楽しんで帰って来た時の、当時高校1年生だった息子の興奮ぶりは、相当なものだった。誰に咎められることもなく爆竹を鳴らし続ける。うるさく、きな臭いだけなのに。1回2回ならまだしも、延々数時間って。

今年のサンファンの火祭りも、去年に引き続き様々な制約はあったようだけれど。それでも焚火も花火も爆竹も行われたと、友人からの便り。

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邪気が払われ、世界がどうか落ち着いていきますように。