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あの頃、私は「真面目」に殺された。

先日、母と私の子供の頃の話をしていた。
 

小学校高学年になる頃、私は母に「わたし、真面目って言われるのが嫌い」とこぼしたそうだ。なんとなく記憶にはある。
母はそのときに、あぁこの子は真面目な子なんだなと思ったらしい。


今振り返ると、何事にも真面目な子だった。


習い事のダンスではセンターを取り、水泳は大会でメダルを取るほど練習に没頭した。ダイエットを始めると、好きな雑誌のモデルのBMIを超えるほどに痩せて、周囲から心配される程だった。大学受験に向けて1日12時間勉強した結果、偏差値は半年間で20ほどあがっていた。

ゴールや節目が存在して、真面目すぎる前に真面目に終止符が打たれるのなら、真面目も自分にとって弊害にならなかったかもしれない。これまでの人生、真面目さゆえに得るものが多かったのも事実だ。
 

だけど、少なからず小学校高学年の私は「真面目だと思われたくない」と思っていたらしい。

 

あの頃の私が何を思っていたかなんて、今の私は知る由もない。だけど、26歳の私も真面目な自分に呆れるときがある。
自分の感情をそっちのけに、真面目というエンジンが私を走らせることがある。 


そして、真面目すぎるがゆえに、何事も頂点までやりぬくか、徹底的に捨てるという選択しか知らなくて大変なんだ。楽しむ前に頑張っちゃうんだよ。

だから笑っている人が羨ましくてたまらない。


ある年齢までは、与えられたものを徹底的にこなすか、徹底的にこなさないかを選択していたら、それなりに生きられる世界に住んでいた。

それが、ある日を境に「自分の人生を自分で切り開いていきましょう」というミッションに変わるのだ。



私には壮大すぎた。


あの子は大学に進まないとか、あの子は就職するとか、あの子は夢のために勉強するとか。そうしてみんなが各々の人生を自分で選んでいく。
日常の中の娯楽は増え、趣味は増え、自分なりの色を足したり引いたり調合しながら歳を重ねていく。
 


選択肢が増え続ける中で、徹底的なイエスか徹底的なノーしか手札にない私は多くのものを所有しようとしては失ったきたように思う。つまみ食いなんてできなくて、ひとつひとつを完食し、自分のものとしたくなるのだ。そうできないものは全て捨ててきた。


きっと私の知らない誰かは、
「理由はないけどなんか良さそう」
「ひとまず始めてみよう」と手をだす瞬間がたくさんあって


「これは自分に合わないな」
「しっくりこねぇな」でやめる瞬間がある。


感情とともに行動する。その回数が多いほど、自分が表現したい人生という色になっていくんだと思う。


私にはそれができなかった。
いつも目の前にあるのは全か無で、メリットとデメリットだった。


「はじめたらやりきらなきゃ」
「結果をだすまでが最低限だ」
「やり始めたからには最後まで」
「何かを得られるまでは必ず」 


気づけば物事に手をだすこと自体が怖くなっていて、自分が見ている景色は狭まっていく。そして真面目さゆえに手に入れた、過去の栄光が恋しくてたまらなくなるのだ。
 


ドライフラワーに水をやっていることにも気づかず、未来に花が咲かせなければいけないプレッシャーに今日も動けなくなる。今日も動けなかった自分と、笑顔のあの子を比べて消えたくなる。
 


あの子が楽しんでるあんなことやこんなことが羨ましい。やってみたかった。でも自分にはできない。きっと結果を出せないから、始める資格なんてないのだ。



小さい頃に長所だった「真面目」は、いつしか自分の自信を削ぐ凶器になっていた。そして私を殺した。



もしかしたら、小学生の私はその恐怖に気づいていたのかもしれない。真面目さゆえに私が私じゃなくなっていく恐怖が。あるいは私が既に私でないから真面目という生存戦略を身に着けてしまった恐怖が。

どちらの恐怖だったかは分からない。
 


だけど、大人になってもずっと真面目でいると、こうして選択肢を奪われていく。失敗もしないけど、同時に自分の色もなくなっていく。



自分を守るための真面目さが自分を壊しちゃうなんてね。なんで真面目になったんだっけって思うと、褒められたいとか愛されたいとかそんな感じだったはずなのにね。


 

外面は完璧で固めて、心から笑う他人が妬ましくて、そんな自分が嫌いで、厄介だよね。 
 


やりはじめて合わなければ、やめちゃっていいんだよ。行ってみて息苦しかったら、帰っちゃっていいんだよ。誰も責めないから。


中途半端でも、結果がなくても、続けてていいんだよ。中途半端でも、結果がなくても、そこにいていいんだよ。自分の人生なんだから。
 


本当に求めてるものへの近道は、自分の真面目さというプライドで手放せないガラクタを手放すことかもしれないのにね。



小学生の私へ、
私、やっぱ今も真面目で、真面目が嫌いだよ。


💜💙 

竹口 和香(たけぐち わか)

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