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「"旅行"ではなく"旅"をしなさい」 栃木県民が敦賀を旅する

本記事は、#わかさはっくつが企画したモデルコースのモニター参加者による記事です。

「大川晴菜さんがナビゲーターのわかさはっくつモニター……参加……募集……だと……????」
 
家のベッドで布団に潜りながらTwitterを開いていた私は、即座にその募集記事を開いて目を通した。
目を通して、行ける日程にまっさきに応募した。
……というより気がついたら応募が終わっていた。よもや無意識に応募したのである。
 
 
『栃木県民 28歳 田所 花菜
精神障害者保健福祉手帳3級所持、双極性障害、自閉症スペクトラム
障害者枠として今年の4月より社会復帰
大川晴菜さんのファンクラブがあったら入りたい。』
 
これが本記事の執筆者である。
 

 
私は福井県にほぼ行ったことがない。
しかし、福井県に行きたかった。
きっかけは大川晴菜さんだ。
 
とあるところで、大川さんの存在を知った。
不登校時代に引きこもり経験があるというお話を聞き、精神障害者として私も引きこもりだったことから、共感と、"好き"を仕事にして活躍されている姿に鮮烈な憧れを抱いた。それを知ってから何かと大川さんの情報を追っている。友達から引かれる程のファンなのだ。
 
大川さんの情報を追っていると福井県のお話がたくさん入ってきた。
 
──福井県に行ってみたい。
 
それから福井県に行きたいとずっと思っていたのだ。
 
そして今回のわかさはっくつのモニター募集の告知である。
 
──行くしかない
 
金銭面もなにも考えずに応募したのである。なにせ栃木から福井は遠い。
だが、距離なんて知ったことではない。このチャンスを逃すものか。
 

 
10月16日日曜日8時半。福井駅に降り立った。
集合時間の9時には栃木からでは間に合わないので、前日に石川県の友達の家に泊まり、電車で福井駅へやって来た。
 
集合場所の恐竜モニュメント前に着く。
 
「グルルルルル」
 
突然モニュメントが動いて鳴きだした。
 
(?! これ動くの??!)
 
思わず動画を撮る。
そんなこんなしていたら、大川さんが広場に現れた。
推し様が目の前に現れ……た…………
 
「お会いしとうございました……っ!!」
 
推し様にご対面できるなんて……生きてて良かった……っっ!
 
栃木から福井に来た甲斐があった……!
 
根っからのオタク気質である私は感動をじんわり噛み締めた。いや、あの時はそんな暇は無かったかもしれない。
 
これからさらに私は、福井の、敦賀の洗礼を受けることになる。
 

 
福井駅からハイエースに乗り込み出発した。
車内で軽く参加者の自己紹介をする。
 
私以外の参加者は福井大学の1年生3人組の若い女子大学生。皆さん福井県出身で、県外者は私のみだった。
 
女子大学生の子達はみんな積極的で、学ぶ力をひしひしと感じられた。今の私には枯れてしまって、ないものだ。眩しかった。
 
そんなメンバーで、敦賀に辿り着く。
 

 
スタートは氣比神宮だ。
静かな荘厳さのある社と青空が映える。
神社仏閣巡りをして御朱印を集めている身としては、お参りをして御朱印を買わなくては。
皆で恋みくじも引いた。……中吉。内容は秘密である。
おみくじの内容を写真に収めて紐に括り付けてきた。
 
境内の中は林に囲まれた祠などがあり、自然と神聖さが交わって、神社仏閣でないと味わえない特殊な空気が漂う。こういう場所ならではのパワーがあった。私はこの精神が研ぎ澄まされるような感覚になれる空気が好きだ。

氣比神宮から出て、商店街の散策を開始する。
お店が開いていない場所が多い中、私達が着目したのはレトロな看板だ。味がある古き良き看板は「エモさ」を感じられる。と、直感で写真映えしそうと感じたものを皆で見つけては写真に収める。きっと一人では見つけられなかったかもしれない。
他の人の感覚も借りて、「エモい」を探す。自分も見つける。それぞれ写真の撮り方も異なる。
「寂れている」そう捉える人もいるかもしれないこの商店街を、そのままでもポジティブなものに変換できることを体現した。

商店街から折れて裏道へ。いろんな居酒屋の看板が並び、意外と背の高い建物が多い。
そんな中、女子大学生が「ここインスタで見ました」という店に偶然辿り着く。行く宛も決めずに歩く旅というものは、こういった偶然や出会いがあることを私は知っていた。しかし、しばらく味あわなかったものでもある。
 
おしゃれなカフェでお昼を挟んで、
「福井の海が見たいです!!」
と挙手した私の意見が採用。砂浜を目指し歩き始める。
 
何故海が見たいか。
 
栃木は海がないからである。
 
日頃海は見れないし、海のさざ波に耳を澄ますことは気分が不思議と晴れるものだと経験しているから。再びその気分を味わいたかったのだ。
 
海岸を目指しながら行く先の街並みは、町家が多く、まず栃木では見ない風景だった。その風景だけでテンションがあがる。道路の中心を走る雪解け水排出口すら珍しい風景に溶け込む。さらに路地裏を見つけては、気の赴くまま入ってみる。行き先は民家だったりした。引き返す。そんな寄り道がたまらなく楽しい。

そんな街並みを進むと松林の公園に辿り着く。敷地内には俳句が掘られた岩が複数立ち並び、俳句の投書箱を見つけた。じっと眺めた後、設置されていた紙に手を伸ばした。
お話はよく書いてはいるが、俳句や短歌などは学生以来書いたことが無かったかもしれない。
この旅で覚えた感覚を書き出して、投函した。
 
まつぼっくりが転がる公園を進むと、視界が開けた。
 
──海だ!!
 
海だ海だ海だ海だ海だ海だ海だ海だ海だ海だ海だ海だーーーーーー!!

海岸にはたくさんの釣り人がいた。晴れ渡る空に海は深い青。微かに波の音が聞こえる。すぐ向こうに山が見え、青と緑のコントラストがとても綺麗で。視界の端に灯台も見えた。この景色が見れただけで胸が満たされる。というよりすでに満ちていたので溢れた。
 
車で金崎宮へ移動。道中車内から赤レンガ倉庫が見えた。
日本ではじめにできたという線路を越えて、謎のトンネルを発見する。さながら千と千尋の神隠しのよう。大川さんとダッシュでトンネルに向かった。
トンネルをくぐった先には小さなお寺が。
ここも目的地として来たわけでなく、彷徨って発見した地である。線路を越え、トンネルを抜けた先のお寺。こんなシチュエーションあるだろうか。トンネルをくぐったことでどこか別の空間に迷い込んだような空気があった。


 
最後にちえなみきに集まる。
集まる、というのも、ここでわかさはっくつの局長さんと寺井CODさんが合流したのだ。お2人共、記事やインスタライブなどの配信で拝見した方だった。まるでテレビの向こうの方と会ったかのような気持ちに。光栄だった。
 
ここで感想などのワークショップを開き、この旅で感じた思いをいの一番にぶちまけた。
 
「私は大川さんきっかけで福井を知るようになり、ずっと行きたいと思っていました。
学生の頃はよく一人旅をして、行き先はざっくりしか決めずに放浪する旅をしていました。
それからうつ状態になり引きこもりになり、旅から遠のいてしまいました。
その後社会人になりましたが旅に出る暇もなかなかなく、今日まで旅らしい旅はできていませんでした。
今日、行き先を決めずにパワーを感じた方に向かう、というスタイルで街歩きをして、過去一人旅をしていたときの感覚が蘇ってきました。またあの感覚を味わえて楽しかったです」
 
私は一人旅が好きだった。あてもなくふらふら歩いて偶然見つけた店に入るのが、路地裏を行くのが、好きだったのだ。それは昔の話で、うつ状態になり、引きこもり、社会人になり、双極性障害になり、ふたたび引きこもりになり。長く"旅行"ではなく"旅"というものを味わってこなかったのだ。
 
ちなみに、すこし話がそれるが。私が学生時代に出会った老人に言われた言葉がある。
 
「"旅行"ではなく"旅"をしなさい」
 
私はこれを聞いてから、目的地は大まかにしか決めなくなった。
旅はいろんな出会いがある。狙ったかのように人や場所に出会えるのだ。まるで必然だったかのように。
 
そんな旅を長らくしていなかった私は、今回のモニター参加で旅の感覚を思い出させられた。思い出しただけではない。誰かと一緒に、自由に気になった場所を巡る。インスピレーションの受け渡しあいという、一人旅の先のものを見せてもらった。それがとても刺激的で。懐かしさを超えたものを感じたのだ。
それは、旅の仲間と場所という条件が揃っていたからだと思う。
 
敦賀は旅というものに適した場所なのだ。
さらに、寂れている。を、レトロ・エモさに変換できる旅の仲間。
 
この2点が今回のツアーの要点だったと思う。
 
感覚を刺激される。そんなツアーにモニターとして参加できたこと。
そしてわかさはっくつの記事を初の県外者として書かせて頂いたこと。
初めての福井旅、最高の体験となった。
 

 
また福井に、必ず行く。
そう誓って私は栃木行きの電車に乗り込んだ。

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