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わかおの日記265

年明け一発目のバイトだった。店長に「あけましておめでとうございます」と挨拶をすればいいのか、もしくは「今年もよろしくお願いします」と言うべきなのか、はたまた折衷案で「あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします」と丁寧に言ったほうがいいのかとか、色々考えながらバイトに向かった。

しかし考えすぎたのがよくなかったようで、店長が入ってきたときに第一声が出てこず、先にサラッと「今年もよろしくお願いします」と言われてしまった。挨拶が難しい。

仕込みの量が多かったし、正月明けでなんとなくぼーっとしていたので、指を切りながらも黙々とニンジンやジャガイモを処理して、そのまま開店時間になった。喋ってもいいし、黙っていてもいい感じが好きだ。

開店と同時に客がとめどなく押し寄せ、あたふたしながら仕込み用の生姜をカットしていると、店長がボソッと「ソータローちゃんは勘がいいのに、少年のままだよね」と言った。あんまり意味がわからずにいると「普通勘がいいと、もっと達観するのにね」と付け加えてくれた。

言いたいことはわからなくもないような気がして「達観できたら楽なんですけどね」と返した。店長は満足げに相槌を打っていたので、多分正解だったんだと思う。

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