32 グレムリン
母が泣き喚いて
死にたい!
という。
こうなるのは何度か見ているから、私は嵐が過ぎるのを待った。
10分もすれば落ちつくだろう。
母の鳴き声が聞こえなくなってきた頃合いを見計らって、私はタブレットでyoutubeで讃美歌の動画を見せに寝室の扉をたたいた。
失礼しまーす、とドアをゆっくり開けると
母はまだ泣いていたが私が入っていくと照れくさそうに少し笑った。
グレムリンのギズモのように見えた。
私は母のお気に入りの讃美歌を聞かせた。
さやかに星はきらめき
を聞かせると一緒に歌いだした。
3曲くらい歌うと母はケロッとしてリビングに戻って、さっき泣き喚いた人とは別人のように何食わぬ顔をしていた。
だから私はこのまま寝て起きれば、今日の事は忘れて普段通りに戻っているだろうと思い、寝酒を飲みながらご機嫌で布団に入った。
翌朝、今度は自分自身が泣き叫ぶことになるとは、この時は全く思いもしなかった。
早朝トイレに起きると、隣の寝室から話し声が聞こえたが、父もトイレに目覚めたか何かでガサゴソやっているのだろう。
と思い私は自室に戻り二度寝した。
(この4時間後私はどん底に落とされる)