詩/紫の記憶

紫の記憶

坂の上にある小学校の校庭
暗くなるまで夢中になったのは
なりきりごっこのキャプテン翼

迷いもなく、サッカーに励んだ中学生活
卒業証書と一緒に受け取ったのは
球技が苦手だったという確信

高校には幸いサッカー部はなく
飛び級のラグビー部があった

最初のホームルームでは
希望部活の空欄を手元に
黒板の向こうを眺め、シャープを回した

何故かいとこ達がやっているという
それだけの理由で、記入した剣道部の文字

入部に伴い、近くの散髪屋に向かった
髪の毛と一緒に、お洒落欲とのサヨナラ

入部後に仲よくなった友人

お互い彼女もいないのに、彼は
やたらとぼくに、お洒落をしろと言ってきた

お洒落の仕方も分からないぼくほ
彼の着こなしを真似た

ジーンズはLEVI'S
靴はconverseのシューズ
ツバを折り曲げたCOSBYのキャップ

一通りを買い揃え、
自分なりのお洒落が手にとった薄い紫のシャツ

待ち合わせの彼がぼくに言ったコトバ
「なんかお洒落になっとーやん」

ウラもオモテも知らなかったあの頃

照れながら
「ほんなごて?そげんなかばい」と返した

ぼくは今でも、きっとあの頃の
薄い紫のシャツの記憶を 着ている


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