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【小説】 とある男の話 滝登りのその先へ(仮) 第0話

「おい! チャイム鳴ったぞ! 全員席につけよ~」

蜉?阯、蜈育函がそう言うと教室はバタバタと忙しくなった。

ああ、また始まってしまったか、この窮屈でサイアクな時間が。

俺はそんなことを思い、慌てて席に着く繧ッ繝ゥ繧ケ繝。繝シ繝達を眺めながら憂鬱なため息をついた。

時間は流れていく。

「全員席に着いたな。 よし、じゃあ今日の授業を始めるぞ!」

どことなくやる気を感じさせる蜉?阯、蜈育函の声色に俺は一層憂鬱になった。

この監獄からはいつか自由になれるのだろうか。 

始まった授業には集中せずにそんなことを考えていた。

すると突然、隣の席の国民的アイドルのみるるちゃんに声を掛けられた。

「ねぇ繧「繧、繝ウ君、あのさ」

「なに? みるるちゃん。」

「教室に穴が開いちゃったの」

「うん?」

俺は授業中にも関わらず立ち上がり教室の真ん中を見た。

するとそこにはぽっかりと大きな穴が開いていた。

俺はもっとそこに近づいて異様な穴を覗き込む。

「穴っていうか下り階段だね」

俺は言った。

教室の真ん中には穴が開き、下りの階段が出来ていた。

「これ結構危ないよね」

そういって俺は振り返ると繧ッ繝ゥ繧ケ繝。繝シ繝達が全員俺の方を見ていた。

ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべていた。

俺はギョッとして息をのんだ。

すると繧ッ繝ゥ繧ケ繝。繝シ繝達一人一人が喋り始めた。

「繧「繧、繝ウ君はもういらない」
「繧「繧、繝ウはもう用済み」
「だって繧「繧、繝ウは何もできないじゃん」
「繧「繧、繝ウの顔見てると超ムカつく」
「繧「繧、繝ウいなくなっちゃえ」

「いなくなっちゃえ」

そう言われて、俺は誰かに背中を蹴られ階段から突き落とされた。

わけがわからない。

どうなっているんだ?

怖い。 

眼下の地面に真っ逆さまに落下するような感覚をしっかりと感じながらも色々な事がぐるぐると頭を巡った。

こんな大きな階段から突き落とされたら大怪我をするだろう。

当たり所が悪かったら死ぬかもしれない。

恐怖が全身を覆いつくし体が固まっていく。

体が吸い寄せられるかのようにどんどんと地面に近づく。

呼吸がどんどん浅くなっていく。

汗が噴き出す。

思考が追い付かない。

もうなすすべはない。

諦めよう。

俺の人生は階段から突き落とされて終わるのか・・・

そう思いながら自室の天井を見上げる。


自室の天井を見上げる?


男はひどく混乱したが暫くして我に返った

「えぇ? ・・・あぁそういう事ね・・・」

口では平静を装っているが呼吸はかなり浅く、こめかみの血管が浮かび上がりドクッドクッと脈打っている。

男は大きくため息をついた。 そして考える。

この手の悪夢は2日に一回程度見るのになぜこんなにも怖いのだろうかと・・・


【2】


こうして奇妙な男の一日が始まった。

寝ていたベッドの傍に置いてあるタブレット端末で今の時間を確認する。

時間は14:03分だ

男はどうやら昼過ぎまで寝ていたらしい。

そうか・・・もうこんな時間か・・・

そんなことを思いながら男は長髪をヘアクリップで束ね、前髪をカチューシャで上げ、クーラーを切って窓を開けて自室を後にする。

そんな男は肩をぐるぐると回しながら洗面台に向かう。

洗面台に着くとすぐにバシャバシャと無造作に顔を洗いうがいをする。

夏の暑い日だ。 クーラーをかけながら寝ていたとはいえ体が変な感じがする。

男はシャワーを浴びる事にした。

適当に服を脱ぎシャワーを浴びる。

さっき見たあの悪夢が頭にこびりついている。

随分と奇妙な夢でありハッキリ言ってサイアクな目覚めだった。

今浴びているシャワーがあの情景も感情もまとめて洗い流してくれることを願った。

シャワーを浴び終わった男は頭にタオルを巻き元の服を着てリビングに向かう。

リビングはクーラーがついていて随分と涼しかった。

風呂上がりの男にとってのそこは楽園の様に感じられた。

男は奇妙なステップを踏みながら冷蔵庫に向かう。

まずはよく冷えたアセロラジュースをこれまたよく冷えたグラスでぐいっと飲む。

そして野菜室からキウイフルーツを取り出し、その辺に置いてあった果物ナイフで器用に皮をむいてキウイフルーツにかぶりついた。

男の朝食(世間的には昼飯)はこれで終了した。

次に男は何のものかわからない鼻歌を歌いながら洗面台に向かい歯磨きを始める。

そして頭に巻いたタオルを取りドライヤーで髪を乾かし始める。

髪を乾かし終わった奇妙な男は退屈そうにリビングのソファーに寝転がりテレビリモコンを操作する。

今の時間は昼のバラエティー番組が一段落し始め報道部がニュースを発信していた。

若い女子アナウンサーが元気よく原稿を読む。

「人気アイドルの”みるるちゃん” こと峰崎晴海さんの楽曲が全米音楽チャートで3週連続1位となりました! これは日本人としては初で・・・」

若い女子アナウンサーが元気よく原稿を読んでいるのを見て男は思考を巡らす。 そして一つの結論にたどり着く。

「こんなニュースが毎日やってたらそりゃあいつか夢に出てくるよな・・・」

何故かわからないが何かに負けたような気がした男はテーブルの上に置いてあったシガレットケースから一本取りだして口に咥える。

流石にエアコンの真下でのタバコはマズイと思いキッチンに向かい換気扇の元で火をつけて一服した。

煙を吐きながら男はボーっと思考を巡らせる。

毎日見る奇っ怪な夢の原因やら一定の周期で来る最悪な体調の事やら・・・

思考が巡りすぎて男は余計な事まで考え始める。

この吐き出した煙のように自分という存在もすぐに消えてしまうのか。

いっそ消えてしまったほうがいいのか。

消えてしまって・・・それからどうなるのか。

男はニヒルの鎖が体を締め付けていく感覚を感じた。

鎖に強く縛られ、動けない。

鎖に強く縛られ、息ができない・・・

だがそんなニヒリズムの監禁部屋からは意外にも簡単に抜け出すことが出来た。

玄関から音がしたからだ。 
その音は一気にニヒリズムの空間から男を引きずり出す。

エセニヒリズム空間からの脱獄に成功した男はタバコを灰皿に押しつぶし、玄関に向かおうとするがそれより先にリビングのドアを開けて両手に買い物袋を携えた女性が入って来た。

「涼し~! やっぱり行く前にエアコン付けておいてよかった♪」

「ありがとうございます。 おかげで超すごしやすい空間になってます」

「そっかそっか。 良かった♪ というか・・・」

女性は少し意地悪な笑みを浮かべて男に言う。

「おはよう。 起きてたんだね」

「そりゃあ流石にこの時間は起きてますよ・・・」

そう言うが男はどこかバツが悪いような気がした。

「そっか。 まぁそりゃそうか」

女性は言いながら買ってきたものを片付け始める。

「買い物に行ってたんですか?」

「そう」

「言ってくれれば一緒に行ったんですけど」

「いやぁ・・・だって寝てたし。 起こすのもなぁ・・・って思って」

「まぁ今日だったら起こしてくれた方が・・・」

男は今日見た夢を思い出しボソッと言った。

「・・・その反応をするって事はまた変な夢見たの?」

「まぁ、はい。 いい夢ではなかったですね・・・ どうにかならないんですかね? コレ」

男は自分の体質に嫌気がさした。

「じゃあ私と一緒に寝る? そうすれば悪い夢見てそうだな~って思った瞬間に叩き起こせるよ?」

「・・・良い案ですけど叩き起こされるのは考え物なのでその案はいったん保留で」

女性は「そっか」と言って洗面台に向かった。

男はまたさっきのソファに寝転がった。

番組内のニュースが終わりまたバラエティーコーナーが始まったようだ。

司会のアナウンサーが元気よく喋る。

『読めますか!? 難読漢字のコーナー!!!!』

どうやらそのコーナーはパネルに書いていてある難読漢字をスタジオにいる芸能人たちが2チームに分かれて答えを考え、正解した数が多いチームが勝ちという企画の様だ。

『本日の難読漢字はコチラ!』とか何とかいってスタジオに運び込まれたパネルには確かに読みづらいような感じが並んでいた。

鳳梨 甘蕉 酪梨

蕃茄 芽花椰菜 竜髭菜

海馬 蝲蛄 栄螺

などなど。

男はソファーに寝転がったままテレビ画面に向かいパチパチと瞬きをする。

「え? 全然ワカンナイ・・・・」

リビングに戻って来た女性はテレビを見るや否や言う。

「ねぇ、アイン君は分かる? この漢字」

アインと呼ばれたソファーに寝転がった男は言う。

「全部は分からないですけど、知ってる奴はありましたよ」

「え? どれどれ? どれが何て読むの?」

女性はテレビにグイッと近づきながらアインに言う。

「あそこの左から、パイナップル、バナナ、アボカドで次がトマト、ブロッコリー、アスパラガスで、あそこの段がタツノオトシゴ、ザリガニ、サザエですね。 後は・・・ちょっとわからないですけど」

アインはすらっと答える。

「凄っ! さすが博識!」

褒められたアインはニコっと微笑む。

「・・・なんかワケのワカラナイ漢字観てたら頭が混乱してきた・・・」

そういって女性はテーブルの上のシガレットケースから一本取り出してキッチンの換気扇の方に向かった。

何気ない日々のやり取りだがアインにとっては本当に幸せで素敵な一日だ。

ソファーに寝転がりながらアインはそんな事を思ってまたニコリと笑った。



  

【  】

やぁ。 お疲れ様


さて、ここからが私の仕事なんだ。


というか自己紹介がまだだったね?

あぁ~・・・というかまだ自己紹介の必要は無いね。

まだその時期じゃないんだ。

その時を楽しみにしていてくれよ♪


・・・さて、ちょっと話をしよう。

上の話を聞いてどう思ったかな?

あぁ失礼。君たちにとっては「読んで」が正しいか。

上の話を読んでどう思ったかな?

何となく気が付いていると思うけど、私はただの恋人同士の日常を描いた作品を伝えたかったわけじゃないんだ。

アインはこの生活を手に入れるまでにとんでもない紆余曲折を経ているんだ!

何と説明すればいいんだろうか・・・

つまりこの話は、というかこの回は物語の「結末」なんだ。

ここから始まるんじゃない、ここに向かって物語が動いていくんだ!

・・・何となく伝わったかな?

つまり私はアインがここに至るまでの紆余曲折を、成り上がり劇を語っていこうとしているんだ!

この秘密の物語をね。


すまない、少し興奮してしまった・・・・


・・・さて、準備はいいかな?

それじゃあ始めようか。 

 と  と あなた が紡ぐ秘密の物語を。


どうぞ、ごゆっくり。


※この物語はフィクションなんかにさせてたまるか。

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