夫と私の転職論争。

夫が激務で疲労困憊だ。あまりの疲れ方で、見ていられないほど。妻として、どう振る舞えば夫の元気が出るのか、右往左往している割に事態が好転しない。

疲労の原因は、過労だけではなく、「これ、何の意味があるんだろう」と思う仕事の多さ。以前流行った、プルシットジョブとかいうやつ。それが凄まじく多いらしい。

頑張りの先には、何かしらの成果が出てほしい。でも、夫の頑張りは、「やりましたよ」と役員に見せるためのパフォーマンスにしかならないらしい。お客様のためでも何でもない。

「俺、何やってるんだろう」という思いが重なって、心が折れて、それに呼応して食欲が落ち、スマホ依存になり、慢性的な寝不足になり、今に至る。

転職を勧めてはいるものの、夫は資格を持っていない。大学を出て、正社員としてのキャリアを積んだけど、俺は何も持ってないんだよ、と、悲痛な声。



私は資格がある。資格に関するキャリアも積み始めた。いつ仕事を辞めても、いつでも復帰できると思う。私がこの家の稼ぎ頭になるから、仕事辞めても良いよ、と伝えた。


「今のことだけを考えるなら、俺だって迷わず辞めるよ。でも、辞めて、休んで、また正社員に戻れる保証なんかない。大学のときにどうでもいい企業からばっかり内定もらって、俺には何にもないんだと打ちひしがれた。転職活動でまたあんな思いをするぐらいなら、今の仕事を辞めないほうがマシだとさえ思う。」



私に資格はあっても、まだ二人分の稼ぎには遠く及ばない。私こそ転職したばかりだから、ここから積んでいかなければならない。

私たちには貯金がある。二人とも無収入でも、1年くらいは、なんとかなる程度だけれど。

私たちには、経験もある。私が今持っている資格の勉強をするために私が働いてなかったときも、一緒に暮らして、夫の一人暮らし分くらいの収入程度で、3年暮らしていた。


貯金も、お金がない経験もあっても、夫は10年後のことを考える。


「今の最善は、俺が仕事を辞めることだけど、10年後の最善は、二人とも正社員でいることだと思う。だから、何もない俺が、ここで正社員のキャリアを潰したら、もう正社員にはなれない。子供が欲しいなら、なおさら共働きじゃないと、子供の願いが叶えられない。俺はそれが一番嫌だ。

お金がない、というみじめさは、味わいたくない。」


その言葉に何も返せず。


でもあなたが今、ぶっ倒れたら、休職して無収入になる上に、医療費かさんで、ただの無職より辛い生活が待ってるんだから、とにかく仕事は辞めて、と、なけなしの言葉をかき集めて返した。


私が稼げるなら、夫には仕事を辞めてほしいと心から思う。夫が仕事を好きならしたらいいし、そもそも労働から解放されたいなら辞めてほしい。

家にいてくれる夫なんて理想だし、夫が誰からも理不尽なぶち当たりをかまされない生活が送れるなら、ぜひ叶えてあげたいと思う。


現実は私の力不足で、その生活を叶えられなかった。夫が働かないと立ち行かないとは思わないけど、少しばかり貯金のお世話になるかもなぁ、とも思う。

私が、後先を考えずにお金を使う性格なので、節制した生活に、私が耐えられないのでは、という懸念もあるらしい。強く否定できない。

夫に養ってもらっていたときは、引け目みたいなものがあってワガママは言わなかった。

でも、稼ぐ方になったら、自分で稼いだお金を思い通りに使えないストレスで、離婚を切り出してきそう、と言われた。

そうなったら俺は無職で放り出されることになって死ぬから、正社員でいることは、諦められない…まで言われても、「そんなことあるわけないよ」と言えなかった私は、結婚に向かない人間なのかもしれない。




夫の言う心配は、本当にその通りなのだけど、私は今のことをデカく、先のことを小さく見るタイプ、略してバカだから、「夫、辛そう、仕事辞めなよ」しか言えない。


夫を無職にしたら、収入が少ないから週末のお出掛けの回数が減る。夫に今の会社で働き続けてもらったら、平日は屍と屍が同居しているに過ぎなくなる。


私は月に20日間、死んだ顔の人間といるくらいなら、週末、少々出掛ける先が減る方がマシだ。笑顔が見たいから結婚したのに、独身のときより辛い思いをする時間が長いなら、速攻で離婚を取ってしまう。


そもそも、私も夫も自分で自分を喜ばせられる、ひとり上手。だからこそ、二人でいることが、一人の楽しさを超え続けるのには努力がいる。


この数年「俺も資格取っておけばよかった」と嘆いているけど、私は夫に持ってて欲しい資格は特にない。働いてほしいとも思ってないから。

資格は持ってなくてもいいから、笑顔になる努力をしてほしいと思う。幸せになろうとする努力だけは、止めないでほしいし、諦めないでほしい。


夫のこと、大好きだけど、夫が言うリスクは、確かに今の私では超えられない。夫に働いてほしくないという熱量が足りなかった。私は夫を働かせたくないし、夫も別に労働を絶対にしたいタイプでもないし、利害は一致している。でも、収入と支出のバランスを考えると、夫の収入なしでは生きられないらしい。

ままならねぇ〜。夫を笑顔にしたいだけなのに、それを叶えるのはそんなに難しいことなのかしらね〜。

不憫な旦那さんに全額寄付します。